沖縄観光情報:“シマクサラサー”で集落の厄払い。南城市に残る、幻の旧暦伝統行事。

“シマクサラサー”で集落の厄払い。南城市に残る、幻の旧暦伝統行事。

post : 2015.12.21 18:00


旧暦の11月6日にあたる師走の肌寒いこの日、南城市知念のとある集落では、今では幻となった“シマクサラサー”の伝統行事が行われました。

災いや厄が集落に入ってこないよう、集落の入り口に骨付き肉を藁の縄で結び、お供えをするなんともプリミティブ(原始的)な行事です。

昔は、本島から宮古・八重山諸島まで各地で行われていたようですが、現在では離島の一部や本島中南部などのわずかな地域で残るのみです。

 

 

神聖なるこの行事を執り行うのは区長さん。まずは、公民館で道具を準備。地元の精肉店で仕入れた上等の牛の骨付き肉5切れ、藁で編んだ縄を5本、それから、沖縄の祈願行事には欠かせない『瓶子(ビンシー)箱』。

 

 

この集落では、『神山原(かみやまばる)』『東南端の東原(あがりばる)』『北端の東原(あがりばる)』『下知念田原(しちゃちんたばる)』『上知念田原(いーちんたばる)』の5カ所を廻ります。そこには特に目印となるものがあるわけではありません。昔から口承文化で受け継がれてきた、あくまでシマ(集落)の入り口なのです。

お供えする場所に着くと、区長さんは手際よく素手で生肉を縄に結わえます。

 

 

縄で結んだ肉片は、近くにある適当な木の枝にしっかり結びます。

 

 

それからおもむろに、肉を吊るした木の近くにビンシー(瓶子箱)を置き開けます。中には、花米(ハナグミ)と呼ばれるお米、ガラス容器に入ったウンシャク(御神酒)の泡盛、ヒラウコー(平御香)と呼ばれる沖縄独特のお線香が入っています。

 

 

まずはヒラウコーを取り出し、盃に泡盛を注ぎ入れます。

 

 

そして、吊るしたお肉とビンシーのちょうど真ん中あたりにヒラウコーをそっと置きます。

 

 

これで、祈りの準備が整いました。

区長さんは、静かに手を合わせ、おもむろに何かを呟いています。

 

 

「ウサギーガチャービタンドー」

“お供え物を持って祈願に参りましたよ”と言っているのです。

それから、わずか1〜2分ほどの時間、沈黙の静寂が流れます。

あらためて区長さんは手を合わせ、

「ウサンディーサビラ」

“お供え物を引き揚げさせていただきます”と挨拶します。

 

 

お祈りの最後に、盃に入った泡盛をヒラウコーにこぼし掛け、火を消す所作をします。

本来は、火を点けるのでしょうが火の用心の意味もあり、現在はこの方法を用いているようです。

これでひと通りの“御願(ウガン)”=祈願が済みました。

これを、計5カ所の場所で丁寧に繰り返し行います。

 

 

次の場所へ行くと、木の枝には、去年お供えした時の縄がまだ残っていました。

牛の骨付き肉は、きっと神様がうさがって(召し上がって)くださったのでしょうね。

 

 

広い集落の端から端へ車を使って移動しながら、かれこれ1時間。

昔は歩いての移動でしたから、きっともっとたっぷり時間をかけて祈りを捧げたことでしょう。

 

地域に入り込んでくる悪いコトやモノ、疫病やマジムン(魔物)を跳ね返してくださいますように。

他所とさまざまなものが行き交う“境界”のシマ(集落)の入り口に、ある種の“結界”を張り巡らすことで、

人々の営みを守ってくれる“シマクサラサー”の祈り。

 

旧暦行事が色濃く残る沖縄ですが、様式が簡略化されたり、行事そのものが消えていくところも少なくありません。

沖縄に訪れたなら、ぜひ、カレンダー記されている旧暦行事を見つけてみてください。

地域色あふれる島の表情に出会えるチャンスかもしれません。

 

 

沖縄CLIPフォトライター 鶴田尚子

 


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