沖縄観光情報:「ヨナグニウマを絶滅の危機から救いたい・・」湘南から与那国島(よなぐにじま)へ35年前に移住した男性の物語。

「ヨナグニウマを絶滅の危機から救いたい・・」湘南から与那国島(よなぐにじま)へ35年前に移住した男性の物語。

post : 2015.12.30 00:00


 
仲睦まじく道路を歩く馬のカップル。灯台の近くで青い海をバックに草を食む馬の群れ。日本最西端の島の日常の風景。
 
与那国島(よなぐにじま)で「ヨナグニウマふれあい広場」を営む久野照雅(ひさの・てるまさ)さんがこの島に移住をしたのは今から35年前のこと。
 
『与那国馬絶滅の危機』
『島の過疎化』
 
当時、神奈川県の湘南で暮らしていた久野さんはある日、日本の最果ての島について書かれた新聞記事を偶然目にした。
 
それが移住のきっかけだった。


 
 「与那国馬の近くで暮らしたい。できれば絶滅の危機から救って次世代に残したい」。
 
移住を決意するのに長い時間はかからなかった。ロビンソン・クルーソーがヒーローだったし、子どものころから南の島に憧れがあった久野さんは、その時すでに自給自足的生活を実践しようとしていたし、動物と一緒に暮らす農的生活を望んでいたからだ。


 
 「金もコネも経験も、資格もないし体力もない。ないもの尽くしだったけど、唯一あったのが夢だけでした」と当時を振り返る久野さん。
 
島に渡ったのは夏も終わりに近づいている10月のこと。一週間後に家賃3,000円の家が見つかっり、冬に入るとサトウキビの収穫の仕事にありついて生活費を稼いだ。
 
三ヶ月後には家賃5,000円の家に引っ越すことができ、サトウキビの収穫シーズンが終わった頃には赤瓦の上等な家を島の人が紹介してくれた。
 
「体力はなかったけど、がむしゃらに働きましたからね。それを見てくれていて人がいて、家を紹介してくれたり、仕事を紹介してくれたんです」。
 
まもなく泡盛の酒造で働かないかと誘いを受けた。誘ってくれた社長がある晩、一升瓶を持って家に来た。「何をしに与那国に来た?」と問われ、夢を語った。
 
「その夢は私がかなえてやろう」。山の中腹にある自分の土地を貸してくれた。雑木林を開墾しながら徐々に牧場を整えていった。
 
「人間関係を上手につくれるタイプじゃないんですけど、ちゃんと仕事をしていたら人は認めてくれるんですよ」。ポイントポイントで助けてくれる人が現れたのは久野さんの人となりのおかげだろう。
 
その後は土木の仕事に就いたり、沖縄でたぶん初めての古民家カフェをオープンさせるなど、現金収入を得る努力をしながら馬を増やしていった。
 
これだけを聞くと、とんとん拍子で夢に近づけたように思えるが、外から移住してきた人間が小さな島で牧場を開くのは生易しいことではなかった。実際のところ、ここには書けないようなどんでん返しを何回も乗り越えなくてはならなかったし、無我夢中の連続だったという。
ひたむきな取り組みは口コミやマスコミの力もあってゆっくり世間に広まっていき、20年くらい経ってようやく軌道に乗り始めた。


 
そして今、久野さんの目の前には伸びやかに草を食む与那国馬と、きらめく海のように表情を輝かせている子どもたちがいる。さらには自分のことをいまだに「マー君」と呼んでくれる40代の元少年たちもいる。
 
「人が馬とかかわる時にね、大人と子どもとでは反応の仕方とか関わりとか違うんだけど、子ども同士でもね、違うんだよね、内地の子、沖縄本島の子、与那国の子では」。
 
関わりかたには動物についての知識、愛護、自然保護など頭で付き合う言語系と、馬との間に信頼関係を築いたりコミュニケーションを深めたりするボディ系の二つがあるという。


 
本土の子は言語系、与那国の子はボディ系、沖縄本島の子はそれぞれの中間という感じらしい。
 
この日、久野さんは東京から体験キャンプに来ていた小学生のグループに「与那国馬を絶滅から救うための方法を考えて欲しい」と呼びかけた。そしてすぐ、「質問があるんですけど、赤ちゃんを産んで増やせないの?」と手を挙げたのは小学校1年生の小さな子どもだった。典型的な言語系。

 
「考えることはもちろん大切だけど、ボディ系から入っていくのがベターですよね」。
 
人が馬と関わると情操が育まれるだけでなく、人間同士の関係性づくりにも改善されるのだそうだ。たとえば、他者とうまく関係性を築けない人でも、犬、猫、そして馬などの動物となら絆をつくりやすいし、動物との間に生まれた絆体験が対人関係にも活かされるのだという。
 
 
ヨナグニウマふれあい広場が提供している「スキンシップする→馬と会話する→馬を引く→馬に乗る→スキンシップする」という一連の体験サイクルは、動物に対する愛着を芽生えさせ、同じ生き物としてリスペクトする気持ちを育む。そういった体験は言葉や思考ではなく、体感で成り立つコミュニケーションが土台になっている。
 
 
 
「動物と一緒に過ごすことで、想像してなかった反応があったり、予期しない事態が起こったり。そういう計画できない体験を通じて、子どもの内面から自発的な感情だったり、気づきだったり、考えが生まれてくる」。
 
そしてそれは子どもだけでなく、大人の中に眠っている自由な魂を目覚めさせ、羽ばたかせるに違いない。
 
「学級崩壊のクラスのギャングチャイルドもここに来れば夢中にできるし、何かに集中させることもできる。子どもの心のどこを刺激すればどう動くか。操馬の先には人の教育があるんです」
 
 
 
 
35年前に自然や生き物が大好きで、ヨナグニウマとこの島で出会い馬を絶滅から救おうと、活動を始めた久野さん。いまでは馬だけでなく、ある意味人間をも救っているように見える。
 
「湘南の海もいとおしいけれど、圧倒的な太陽の光と静けさは、この島ならではなんですよ。観光に来たら、馬の背に揺られて与那国の太陽と風を感じてみてほしいですね。そして、草原で草を食む馬たちのいる風景をぜひ楽しんでいってください」。
 
馬と一緒に夕陽に染まる海を眺めながらのビールを飲むのがいちばん好きな時間だという久野さんからみなさんへのメッセージ。
 
 
最後に「これからの夢や目標は?」と尋ねてみた。
 
「夢は次の世代がつくっていくものじゃないですか?目標は次世代を担う後継者を育てることですね。35年前と比べ、やっぱり過疎化が進んでいる島だからこそ、逆に面白い。自分が30歳だったらもう一度、移住し直したいくらいですよ」。
 
笑顔と一緒に返ってきたのはそういう答。
 
沖縄への移住を考えているみなさん、ぜひ一度与那国へ。可能性にあふれる島をまずは五感で感じてみてください。
 
ヨナグニウマふれあい広場
住所/沖縄県八重山郡与那国町字与那国4022
電話/0980-87-2911(予約は090-1941-4758へ。受付は8:00~20:00)
定休日/不定休
 
 
沖縄CLIPフォトライター 福田展也
 
 
 
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Information

沖縄県八重山郡与那国町字与那国4022-315