沖縄観光情報:小浜島の結願祭

小浜島の結願祭

post : 2015.12.31 15:00

八重山の「てんぶす(へそ)」といわれる小浜島(こはまじま)。2007年、国の重要無形民俗文化財に指定された小浜島の結願祭(キチィガン)は、今年一年の豊作と健康、祈願成就に感謝し、一年の願解きと、来年の五穀豊穣と無病息災を祈願する祭事です。結願祭のメインは2日目のショウニツ(正日)。嘉保根御嶽(カフニワン)のザー(神庭)において、20数演目のさまざまな芸能が奉納されます。

嘉保根御嶽の鳥居のもとに立つミーラク一行。ここからザーマーリィがはじまります
 
旧暦で奉行される結願祭。2015年は11月20日がショウニツ。ふだんは容易に立ち入れない御嶽(うたき)も今日ばかりは、これからはじまる奉納芸能を楽しみにソワソワ、わくわくする島の人、観光客、取材班、多くの人々でザワザワと賑わっています。ざわめきから、波紋のように静けさが広がったかと思うと、白い鳥居のもとに黄金色の着物姿のミーラク(弥勒)が現れました。ミーラクを先頭に、芸能出演者一同によるザーマーリィ(座廻り)がはじまるのです。鳥居の奥の方から、かすかに、三線の音が聞こえてきます。袖持ちの愛らしい女の子、旗持ちの男の子、美しく着飾った島人たちを引き連れて、一歩一歩ゆっくりとザーへ歩き始めたミーラク。一行が歩みを進めるに連れて、「弥勒節(みるくぶし)」の唄声と三線の音色は次第に大きくなってゆきます。

客席ギリギリを演者たちが歩くザーマーリィ。KBG84のおばぁちゃまたちも大喜び
 
「小浜の結願祭は、地謡(じかた)も演者もいっさいマイクや音響を使いません。全員がすべて地声で通すのが特徴のひとつです」と聞いた通りでした。昨今ではどこも音響を入れることが当たり前となっていることを思えば、とても珍しいことです。小さな唄声と三線の音色は、近づくに連れ次第に大きくなり、そしてまた、少しずつ遠のいていく。神様一行とともに音にも遠近がある。目の前で繰り広げられる祭りは何百年も前から続いているはずなのに、この唄と三線の素朴さは、かえって新鮮に感じました。

二頭獅子舞によるザーマーリィ。これほど間近で獅子舞を拝める機会はそうそうありません。迫力に心臓がバクバク
 
小浜島は、北と南のふたつの集落で構成されている双分制となっており、北集落と南集落がそれぞれに伝承する芸能を交互に奉納していきます。北の守護神ミーラク(弥勒)一行と二頭獅子舞によるザーマーリィを終えると、南の守護神フクルクジュ(福禄寿)と芸能出演者一同によるザーマーリィです。

フクルクジュ一行によるザーマーリィ。ザーには天幕が張り巡らされ、日除けと雨避けの役目を果たしています
 
ザーマーリィに続き、棒術が奉納されると、ザーに舞台が作られ始めました。テキパキと段取り良く男性たちが動きまわり、40分ほどで立派な舞台が完成。拝所に向けた舞台が完成すると、客席も移動。観客が座り直したのちに、島の言葉の合図で、会場の人びと全員が御嶽の神様の方へ向いてご挨拶。ツカサ(神女)だけでなく、全員がこうして神様の方へ向いてご挨拶するのがなんとも琉球弧の島らしい。

ザーに手際よく作られた舞台で次々と芸能が奉納されます。舞台を囲む島の男性は全員クンズン(紺染の着物)を着けています。これらはお母様や奥様が自らの手でつくられた着物です
 
子どもたちの愛らしい踊り、リズミカルな舞踊、男性たちによる狂言、切ない女心を表現するような舞踊もあれば、ユーモラスな踊りもあります。ときには、舞台上で長らくひざまずき(正座)をしていたせいで立ち上がるとまともに歩けず、退場の際にヨタヨタと歩く姿に笑いが湧き起こったり。ハプニングも楽しめてしまえる村祭りらしい和やかな雰囲気です。

門外不出と聞く、小浜島だけに伝わる若衆踊り「ハピラ」。艶やかな朱色の衣装が印象的です
 
小浜島が本家本元の「小浜節」、小浜島だけに伝わる「ハピラ」をはじめ、八重山はもちろん、沖縄本島の芸能も多く取り入れられ、息をつく間もないほど、次々と狂言や舞踊が奉納されていきます。

八重山で著名な「鷲の鳥節(バシィヌトゥリィブシィ)」。親鷲が子鷲2羽を産み育て、飛び方を教え、2羽が無事巣立っていく様子を表現しています。優雅な舞と格調高い唄三線が会場を沸かせます
 
「毎年、御嶽の蝉がものすごく鳴くんですよ。だから、地謡の私たちも負けじと声を張り上げる。すると、不思議と蝉たちもコレでもかって、ますます大きな声で鳴く。まるで蝉と地謡の歌合戦みたいですよ。そして、録画されたものには必ず蝉の鳴き声が入っています。だから、蝉の声が入っていない映像は、“これは小浜の結願祭じゃない! ニセモノなんじゃないか!?”なんて言われるほどです(笑)」と教えてくださったのは在沖郷友会第58代目会長で、南集落の地謡を努める真栄里悟さん。どれほど蝉がかしましいのかと少々心づもりをしていたのですが、不思議と、ウンともスンともニャアとも鳴きません。いったいどうしたことか、今年はまったく蝉の声が聞こえてきませんでした。こんなこともあるのですね。

カンザクキョンギンの一幕。セリフはすべて小浜島の言葉なのでしょう。こうして言葉や文化・芸能が受け継がれていくのですね
 
カンザクキョンギン(鍛冶狂言)の締め括りに、打って鍛えてつくった鋤(すき)を牛に引かせる場面がはじまりました。ふたりの若者が牛を歩かせながら唄いはじめると、会場の全員がその唄に応えて囃子を入れます。そのときの囃子が会場を揺るがすほどの声で、何が起こったのかと一瞬ビックリ。もちろん、打合せなんてないでしょう。長年受け継がれている芸能であり、島の人だけがわかることなのです。初めて聴く唄は「ウーロンツゥヌジラーマ(若夏の労働歌)」というそう。小浜の言葉なのでしょうか、内容はさっぱりわからないのですが、声を張り上げて唄う若者と、エールを送るかのように客席から響く囃子が交互に続きました。“いまの農耕はほとんどが機械だから、機械音がうるさくて唄えないだろうけれど、牛や馬で耕していた昔は静かで、のんびりと唄えたのかも。もしかしたら、牛を励ましているウタなのかなぁ”と想像。天幕が張り巡らされているためか、人びとの声は空へ吸い込まれていくことなく、会場がひとつの生き物のようにものすごい一体感をもつ様にゾクゾク。“これぞ長年続いている祭りなんだなぁ”、と感慨深く結願祭の空気を味わっていました。

踊り子さんの眼差しと丁寧な所作に釘付け。みなさまにもぜひ、その目で、耳で、肌で結願祭を堪能していただきたいです
 
舞台の上で繰り広げられる芸能、幕の後ろから響き渡る唄三線。美しい衣装に身を包み舞い踊る島人たち。無事に踊り終えて、ほっと肩をなでおろし頬が緩む舞手さん。客席に目を向ければ、満足気な表情の長老方、友人や先輩方の演舞を真剣な眼差しで見つめる少女たちの姿。ザーマーリィでは、目の前に神様が立ち現われたときの島の人々の表情はなんとも言えません。ミーラクにも、フクルクジュにも、恍惚とした表情で神様を見つめるおばぁちゃまたち。なかにはうっすら涙を浮かべているおばぁちゃまも。
 
舞台も客席もどこを見渡しても、限りなく古(いにしえ)に近いカタチで継承されている小浜島の結願祭。ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?
 
 
沖縄CLIPフォトライター 安積美加

 
 
 
 
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