琉球王朝の時代から受け継がれてきた伝統菓子【謝花きっぱん店】

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初回投稿日:2016.09.26
 最終更新日:2024.04.12

琉球王朝の時代から受け継がれてきた伝統菓子【謝花きっぱん店】

冬瓜漬の作業
画像提供:謝花きっぱん店
 
開店前の朝早くにドアを開けると、あまーい香りお店の中に漂っていた。ちょうど、煮上がって清明鍋(しんめいなべ)から取り出されたばかりの冬瓜が蜂蜜のように黄金色に輝きながら並べられていた。
 
できたての冬瓜漬
 
「ちょうどできたてがありますので召し上がってみますか?」
 
お言葉に甘えて口に入れると、できたての冬瓜漬は濃縮されたような味わいととれたてジューシーさが両立していて、ドライフルーツとフレッシュフルーツのいいところを兼ね備えたようなおいしさがした。
 
「冬瓜漬沖縄県産シークヮサー」と「冬瓜漬沖縄伊江島産ラム酒」
画像提供:謝花きっぱん店
 
「この味わいをなんとかお客さんにも味わってほしくて作ったのがこの商品なんですよ」と「冬瓜漬沖縄県産シークヮサー」と「冬瓜漬沖縄伊江島産ラム酒」(ともに¥350)を見せてくれた。何十年も継ぎ足しで使い続けている煮汁で冬瓜をじっくり煮たあとに、砂糖をまぶして仕上げるのが伝統的な冬瓜漬の製法で、こちらは砂糖をまぶす前のできたてのおいしさを味わってもらおうと新たに考え出された方法で作られている。
 
冬瓜漬
画像提供:謝花きっぱん店
 
伝統菓子が冬瓜漬
画像提供:謝花きっぱん店
 
300年以上受け継がれてきた伝統を忠実に守る一方で、今という時代のエッセンスもできるだけ取り入れて、昔と変わらないやり方で、手間ひまを惜しまずじっくりとつくられている伝統菓子が冬瓜漬。
 
「きっぱん」
画像提供:謝花きっぱん店
 
そして、琉球王朝時代に中国や日本から沖縄にやってくる使者をもてなすために冬瓜漬と同じように供されていたのが「きっぱん」だ。このきっぱんは、熟成させたドライフルーツのような、あるいは、干し柿を長い間寝かせたような、時間を重ねることでゆっくり醸し出されるなんとも言えない味わいが印象的。やんばるで収穫される在来種に近い5種類の柑橘と砂糖という極めてシンプルな材料でこれほどのおいしさが作りだされると聞いて驚いた。
 
「きっぱん」作り
 
「きっぱん」作り
 
「きっぱん」作り
 
「きっぱん」作り
 
「火加減はもちろん、気温と湿度の違いで仕上がりが大きく変わるので手作業でしか作れないんですよ」と謝花さん。作り始めてからできあがるまで、どの工程も気を抜くことはできないけれど、なかでも難しいのは団子状に形を整えたあとの乾燥と砂糖を上塗りするときだという。上塗りの工程を見学させてもらったが、道具を使うことなく、てのひらだけで液状に解いた砂糖を手早く塗っていく様子は手技と呼ぶのにふさわしいものだった。
 
きっぱん、冬瓜漬、冬瓜漬生ハムまき、チーズ
画像提供:謝花きっぱん店
 
「きっぱんも冬瓜漬も生ハムとチーズと相性がいいのよね。ハムとチーズの塩味をフルーツ感と甘さがやさしく包みこんでくれるから」
 
そう語る謝花さんは、おばあちゃんから父を経由してこの仕事を受け継いで7年目を迎える。大阪の大学で知り合ったイギリス人の男性と卒業後に結婚してロンドンに暮らし、メディアファイナンスの大手、ブルームバーグに勤務していた過去を持つ。その後家族で帰郷して家業を継ぐことに決めたという。
 
謝花きっぱん店
 
「親からはお店を継いでほしいと言われたことは一度もなかったけど、この店のお菓子が子どもの頃から好きだったし、きっぱんを作る店はもうここだけだったし」とかなりあっさりと過去を振り返りながらも、女手でがんばってきたおばあちゃんや、おばあちゃんの代わりに仕事を早期退職して中継ぎをしてくれたお父さんの姿が謝花さんを動かしたのだと、しばらくしてからぽつりと語ってくれた。
 
謝花さん一家
 
今では、お母さんなどと一緒にお店を切り盛りしているそうだが、おばあちゃんもお店の様子が気になるらしく、毎日お店に来ては商品の配置を直してくれるのだそう。
 
家族から家族へと時代を経ても受け継がれている沖縄の伝統の味。きっぱんと冬瓜漬はちょっと特別な違いのわかる人へのお土産に特におすすめしたい贅沢なお菓子だ。
 

謝花きっぱん店

住所 /
沖縄県那覇市松尾1-5-14
電話 /
098-867-3687
営業時間 /
9:30~18:00
定休日 /
日曜日
サイト /
http://www.jahanakippan.com
Instagram /
https://www.instagram.com/jahanakippan/

沖縄CLIP編集部

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