美味なるものを味わいつつ、沖縄発祥の聖地を巡る。【食の巡礼 あがり美味ーい!】

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歴史文化

初回投稿日:2017.01.23
 最終更新日:2024.04.12

美味なるものを味わいつつ、沖縄発祥の聖地を巡る。【食の巡礼 あがり美味ーい!】

琉球を創造した神様が、初めて地上に降り立った場所だと言い伝えられている南城市(なんじょうし)。久高島(くだかじま)のクボー御嶽、知念(ちねん)の斎場御嶽(せーふぁーうたき)、玉城(たまぐすく)の浜川御嶽、佐敷の馬天御嶽(ばてんうたき)、大里のカニマン御嶽など、市内各所に聖なる場所が点在するだけでなく、聖地に象徴される祈りの文化が地元の人の手で大切に、時代を超えて受け継がれています。

『食の巡礼 あがり美味ーい!』のガイドブック

そのような沖縄的な精神文化と、地域食をドッキングさせた今までにないイベントが、南城市で開催されています。『食の巡礼 あがり美味ーい!』と銘打たれたこのイベントは、カフェやレストランを舞台にした、2017年2月5日までの限定企画。この地域にゆかりのある祈りの文化や歴史をキーワードに、特別に開発されたプレミアムメニューには、南城市のご当地食材が使われています。

“海と陸の七草で幸せをひき寄せる”「ひき寄せ豆腐」や太陽神が降臨したという伝説があるテダ御川へのオマージュを込めた、クレソン農家の「御川コース」など、メニューはどれもユニークなものばかり。ここでは参加店13店舗のうち、6店舗のメニューを紹介します。

「cafeやぶさち」の『古代米プレート』



まずはこちら。「cafeやぶさち」の『古代米プレート』(サラダ&ドリンクバー付/2,000円)です。稲作伝来の神話が残る受水走水(うきんじゅはいんじゅ)がお店の近くにあることから、南城市で栽培されている古代米にスポットを当てたのだとか。生産量が限られた貴重な黒米と赤米を白米にブレンドし、お隣の与那原町(よなばるちょう)の特産ひじきなど、沖縄の食材と混ぜて合わせて炊き込んだジューシー(沖縄の炊き込みご飯)のほか、琉球王朝時代の宮廷料理ラフテー(豚三枚肉の沖縄風角煮)、県産野菜のゼリー寄せなど、沖縄ならではの味わいをお楽しみいただけます。

テイクアウト専用の『東御廻りエコ弁当』

『東御廻りエコ弁当』を持つスタッフ

続いては、テイクアウト専用の『東御廻りエコ弁当』(1,000円~)。宿とレストランを兼ねたオーベルジュ「安座真ムーンライト・テラス」の自慢のメニューです。実は今回の「あがり美味ーい!」というネーミングは、沖縄の祖、アマミキヨが辿った足跡を訪ね歩く「東御廻り」(あがりうまーい)をもじったもの。おかずはその日によって変わることがありますが、ハーブを使ったチキンソテー、獲れたての魚をシンプルに料理した焼き魚、子孫繁栄を象徴するおめでたい食材「田芋」(ターンム)の砂糖醤油和えなど、沖縄の家庭の味を堪能できるお料理が、月桃の葉に包まれています。地元で水揚げされた海の幸や、ミネラル豊富な畑の恵みに感謝しながら、おいしくいただきたいものです。



「うちのやまち」のスタッフ

“3番目に紹介するのは、「うちのやまち」の『須久名ブリトー』(620円)。タコスで評判の店、うちのやまちからは知念半島にそびえる霊山、須久名山(すくなやま)が望めます。古事記に登場するスクナヒコという医薬の神様と名前が似ていることから、スクナヒコが妙薬を求めてこの山を訪ねた、という伝説もあるのだそう。その逸話にちなんで、沖縄の薬草であるハンダマーを生地に練り込み、具材に使ったのがこのメニュー。商品化にあたっては、長命草などいくつかの“島ハーブ”を試したようですが、色と味の面でブリトーと相性がいいハンダマーに落ち着いたということです。

『神の島・五穀ぜんざい』

スペシャルティコーヒーの店「douce cafe nanjo」のスタッフ

お食事メニューが続きましたので、今度はデザートをご紹介しましょう。海を照らす月をイメージしたというパンプキンソースが印象的な『神の島・五穀ぜんざい』(500円)は、知念地区に昨年4月にオープンしたスペシャルティコーヒーの店「douce cafe nanjo」がお届けする珠玉のひと品。シンプルで眺めのいい店内からは青い海の向こうに久高島を望むことができるとあって、「神の島」久高島を迷うことなくコンセプトにしたそうです。五穀伝来の神話が残る久高島で育てられた小豆と、同じく久高島で作られた塩。身体に優しい食材が使われたぜんざいで、ひと口ごとに身体が内側から浄化されていくような気がします。

『セーファ黄金ラテ』

「南国フルーツパーラー JyoGoo」

残る二つはドリンクメニュー。まずは、斎場御嶽の参道にある「南国フルーツパーラー JyoGoo」から。斎場御嶽は、世界遺産にも登録されている沖縄を代表する聖地の一つ。ここから発掘された金の勾玉にあやかって、JyoGooさんは、黄金をキーワードにメニューを考えたそうです。金色の特産品といえばうっちん(ターメリック)ということで、はじめは自家焙煎のコーヒーに合わせてみようとチャレンジしましたが、独特の風味はむしろ豆乳にこそマッチすると判明。豆乳とうっちんを、生姜、シナモン、そして自家製のマンゴーはちみつをブレンドした『セーファ黄金ラテ』(300円)が誕生したのです。
『Rainbow Tea ヲナリブレンド』

「garden Kuu cafe 」スタッフ

最後にご紹介するのは、無農薬有機栽培の畑で野菜作りのワークショップを開催している「garden Kuu cafe 」からの『Rainbow Tea ヲナリブレンド』(300円)。琉球国王の姉妹が国家のまつりごとを霊的な力で支えるなど、女性の力を神聖なものとして崇める「ヲナリ神信仰」という宗教的な精神風土が、沖縄には古くからあります。

国王を支える最高位の神女、聞得大君(きこえおおきみ)が新たに就任する際に、斎場御嶽で行われていた儀式を再現した「お新下り」を南城市は、4年に1度開催しています。そのこともあって、このお店からは、聞得大君にインスピレーションを受けたブレンドティーが生まれたのだそうです。女性に嬉しい成分が含まれるとされる蝶豆(バラフライビー)から抽出した成分をブレンドしたドリンクは、シークヮーサーブレンドとハイビスカスブレンドの2種類を用意。ともに鮮やかな色のグラデーションを楽しめます。

「お新下り」のワンシーン
「お新下り」のワンシーン(画像提供:株式会社ストリズム)

さて、この『食の巡礼 あがり美味ーい!』というユニークなイベントを企画したのは「ビタミンN連携体」という南城市に拠点を構える5つの組織の連合体(南城市商工会、南城市企画部観光商工課、南城市観光協会、イーストホームタウン沖縄株式会社、株式会社ストリズム)。「市内に点在する魅力的な飲食店を線でつないで面にして、南城市のおいしいものを味わいながら、同時に深い精神文化にも触れていただきたい」という思いから生まれたそうです。

垣花樋川で戯れる子どもたち
垣花樋川で戯れる子どもたち(画像提供:株式会社ストリズム)

「南城市はとにかく聖地の密度が高い地域なんですよ。訪れてほしい祈りのスポットが豊富なんです」。そう語るのは、企画に関わっているストリズムの金城良治さん。「南城市の魅力は、この地域の子どもたちの目の輝きに現れていると思うんです。近所ですれ違う子どもは、向こうから自然に挨拶してくるし、魚の天ぷらで知られる観光スポット奥武島(おうじま)では、ワイワイと賑やかな少年たちが、橋の上から海に飛ぶという懐かしい場面に、普通に出くわせるんです。なぜだろうと考えると、それは、大人に対して警戒心がないから、コミュニティにちゃんと居場所を見つけられているから、ではないかと…。そしてそれは、地域全体で子育てをしている結果ではないかと思うんです」。

津波古集落のミルク様
津波古集落のミルク様(画像提供:株式会社ストリズム)

そのような南城市の魅力を、誰もが気軽に参加できる「あがり美味ーい!」を通じて、丸ごと味わってみてはいかがでしょうか。期間中はスタンプラリーも行っています。13店舗のうち3店舗を“巡礼”すると「ビタミンN」オリジナルのマカロンセットを先着でもらえるので、ぜひ遊びに行ってみてくださいね。
 

南城市観光協会

沖縄CLIP編集部

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