沖縄観光情報:サバニが生まれるまで<第3回>ンニタミーンワジャ(前編)

サバニが生まれるまで <第3回> ンニタミーンワジャ(前編)

post : 2017.07.02 15:00

 
<当コラムについて>
糸満(いとまん)のサバニ大工・大城清さんと高良和昭さんが、2017年7月2日開催予定の「第18回サバニ帆漕レース」に出艇されるご自分たちのチームのサバニを制作されていく様子を連載でお届けしております。詳しくは前回までのコラムをご覧ください。
 
 
2017年梅雨の5月21日、ひさびさにサバニ工房を訪れました。前回訪れた4月23日から約1ヶ月、ハラケーギ(側面の板)の墨入れ、彫り込みを終え、作業は次なる工程へと進んでいました。伝統的な技を用いながら、いくつもの工程を経て完成されるサバニ。なかでも気になるのは、ハラケーギを曲げる作業、「ンニタミーンワジャ(舟を曲げる技)」です。今回、重要な工程のほとんどを取材できずに来てしまいましたが、私が所属する阿嘉島(あかじま)のサバニ・チームの練習が悪天候のため中止となったこの日、奇しくも曲げの作業を拝見することが叶いました。
 
 
厚さ50ミリのまっすぐな木の板をいったいどうやって曲げていくのか。これからはじまる初めて目の当たりにする工程に内心ワクワク。はやる気持ちを抑えながら作業を見守ります。夕方4時半過ぎ、大城清さんと高良和昭さんの手によって、これまで横たわっていたハラケーギが立体的に起こされました。ハの字になるように起こされたサバニは、スクジー(底地)が乗る船底が天を仰ぐように立てられています。
 
 
まず、サバニの船首の先端部分「ヒーザキ」を合わせるところからはじまりました。「全長8メートルのサバニにとって、ここでの1ミリ、2ミリの誤差は、後方に行くと大きな狂いとなります」と大城さん。「アーシバ」と呼ばれる面の合わせどころの附着具合を確認しながら、「アーシバノコ」と呼ばれる一番歯が細かなすり合わせ用の鋸で、慎重に左舷と右舷の先端を削りながら合わせていきました。
 
 
ヒーザキをきっちりと合わせると、今度は左右のハラケーギ側面に角材が水平に取り付けられました。そこに垂直方向に長い棒を片側ずつ当てると、2本の棒の上部と下部をロープで括りました。
 
 
鳥居のような形をしたものは「ヒカーサー」というそう。いったいなんだろう? 初めて目にするので何をするのか想像がつかず、首を傾げて眺めていました。すると、「これからどんなふうに曲がるか、まぁ、見ていてください」と大城さんが笑みを浮かべました。
 
 
高良さんがバックヤードで次々とお湯を沸かし、ハラケーギにお湯をかけていきます。たっぷりとお湯を注がれたハラケーギからモクモクと白い湯気が上がります。何度も何度もお湯をかける高良さん。その様子を見守りつつ、頃合いを見計らって、大城さんが両手を使ってヒカーサー上部のロープを慎重に巻き締め、2本の棒の上部がハの字型になるよう間隔を狭めていきます。すると、ほんの少しずつ左右のハラケーギの幅が縮まってきました。なるほど! テコの原理を利用して少しずつ木を曲げていくんだ! こんなに大きくて厚い木の板を曲げる方法を考えた先人の知恵はすごいですね。
 
 
湯を沸かしお湯をかけ、湯を沸かしお湯をかけ、ヒカーサーのロープを少しずつ巻き締め、徐々に曲げていく。この作業がずっと繰り返されます。急いで曲げると割れてしまうこともあるので、作業はたっぷりと時間をかけて、注意深く進められていきます。
 
 
カンカン、トントン、カンカン、トントン。
 
ときおり、大城さんがハンマーで内側の添え木を叩いています。この音はサバニの曲げ具合を微調整するための音。鉋(かんな)を掛けるときは、何度も目で見て、何度も手で触れて、その塩梅を確認されていました。今度は、音で状態を聴き分けられているようです。「音はよく覚えているんですよ」と大城さん。17歳から2代目としてサバニ大工をはじめた大城さんは、半世紀もの間、サバニ大工として腕をふるってきています。目で見る、手で触れる、耳で聴く。大城さんの所作から、「職人の技というものは、感覚として体得されている」ということが、改めてわかった気がしました。
 
 
連日遅くまで作業をされている大城さんたち。ときには時計が深夜12時を指していることもあるのだとか。この日は夜10時頃まで曲げの作業が続けられました。サバニ工房の周辺はすっかり真っ暗になっていました。
 
 
「ここまで来れば上出来です。明日もやりがいがありますよ」と言う大城さんの声で、作業は明日へと持ち越されることになりました。明日は、船尾の先端部分「トゥムザキ」が、いよいよくっつきます。(つづく)
 
沖縄CLIPフォトライター 安積美加
 
 
 
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