沖縄観光情報:サバニが生まれるまで<第4回>ンニタミーンワジャ(後編)

サバニが生まれるまで <第4回> ンニタミーンワジャ(後編)

post : 2017.07.03 12:00

 
 
<当コラムについて>
糸満(いとまん)のサバニ大工・大城清さんと高良和昭さんが、2017年7月2日開催予定の「第18回サバニ帆漕レース」に出艇されるご自分たちのチームのサバニを制作されていく様子を連載でお届けしております。詳しくは前回までのコラムをご覧ください。
 
 
2017年5月22日。昨夜の曲げ作業から一夜明けた午前10時、再びサバニ工房を訪れました。工房では、昨夜と同じ作業が再現されていました。何度も何度もお湯をかける高良和昭さん。トントン、カンカン、と金槌で曲げ具合を微調整する大城清さん。素人の私には同じ作業の繰り返しに見えても、なにかが違うのでしょう。私はと言うと、これからいよいよトゥムザキ(船尾の先端部分)がくっつき、サバニらしい形ができるのだと思うと、昨日よりもドキドキしていました。
 
 
またお湯をかけ、ヒカーサーを少し巻き締め、お湯をかけ、ヒカーサーを少し巻き締める。いったい昨日からどれだけこの作業が繰り返されてきたのだろう。少し気になり、「サバニを曲げるためにはどのくらいのお湯が必要なんですか?」と高良さんに伺ってみました。「そうですね。サバニ全体を曲げ終えるには、約200リットルのお湯を使いますね」と高良さん。まるでサバニの湯浴みのような作業をずっと見つめていました。
 
 
前方ヒーザキ(船首の先端部分)の近くにつけていたヒカーサー(テコの原理を応用してサバニの側面の板を曲げる仕掛け)を今度は後方トゥムザキの近くへ移されました。
 
 
お湯をかけヒカーサーを巻き締めて、あと1.5センチ。お湯をかけヒカーサーを巻き締めて、あと1.2センチ。もどかしくも思えるほど慎重に、慎重に、少しずつ、少しずつ、トゥムザキは狭められていきました。
 
 
やがて、トゥムザキ部分の左右のハラケーギがくっついてくると、その接面を合わせるために、切り落とす部分を測ります。鋸は、切る場所によって歯の形状が違い、種類がいくつもあるそう。ここではヒーサギと同じように、もっとも歯の細かなアーシバノコで切り落とします。
 
ゴシゴシゴシゴシ。
 
「木には硬い部分とやわらかい部分があって、何度も何度も鋸(のこぎり)をひくと木が寄って曲がってくるので、長引きもあまりよくないんですよ」と言いつつ、大城さんはていねいに鋸を引きました。
 
 
午後2時半過ぎ、ようやくトゥムザキがぴたりとくっつきました。
 
 
2日間にわたり12時間近くの時間をかけ、長さ8メートル、厚さ50ミリの2つのまっすぐな飫肥杉の板が見事に曲げられ、ついに、サバニだとわかる形が現れました。弧を描く木目から、樹がもつ粘りと強さがにじみ出ています。
 
 
昨日までは無機質なただの板でしかなかったものが、いまや、まるで息を吹き込まれたかのように芸術品としてのオーラを放っています。工房に横たわるその形状は、大海原を自在に泳ぎ回る巨大な魚のようにも見えます。美しい流線形のこのサバニが、波を切って紺碧の海上を疾風のごとく駆けて行く様子を思い描くと気持ちが昂ぶりました。「速そうなサバニですね。まるで大きな魚みたいですね」。「そうですね。大きなクロマグロみたいですよね。このサバニでレースに出られるかと思うと、ワクワクします」と笑顔の高良さん。大城さんはというと、とても嬉しそうで、瞳が少年のように輝いていました。
 
 
このあと、サバニの中心線から水平に寸分違わず左右対象になるよう微調整を行っていくそう。今度はいつ伺えるかな。次に工房に来たときは、ここからどんなふうに変化しているのだろう。そう思いながら、幸運にも「ンニタミーンワジャ」を拝見できたことに感謝しつつ、工房をあとにしました。(つづく)
 
 
沖縄CLIPフォトライター 安積美加
 
 
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