沖縄観光情報:カルチャーがクロスオーバーするコザのサブカルアート発信拠点StockRoomGalleryKoza[沖縄市]

カルチャーがクロスオーバーするコザのサブカルアート発信拠点Stock Room Gallery Koza[沖縄市]

post : 2018.01.23 09:00



90年代の華々しい全盛期を迎えてから、一時はシャッター通り寸前にまで行き着きかけた街が、再びオキナワカルチャーの新しい震源地になりつつある。沖縄でもっとも異文化がクロスオーバーする沖縄市「コザ」のパークアベニュー界隈だ。2016年の3月にオープンした「Stock Room Gallery Koza」は、コザに誕生した震源の一つ。20代前後のアートラバーが集うクリエイティブなギャラリーショップは、エキサイティングな空間に育っている。




陽射しが心地良い日にのんびり腰を落ち着けたくなるウッドデッキのテラスを抜けてギャラリーに足を踏みいれると、コザという街の空気感にしっくり馴染んだサブカルチャーアートの空間が広がっている。オーナー自ら時間を惜しむことなくリノベーションしたスペースには、ソリッドで理性的な直線とフリーハンドで描かれた情緒的でワイルドなタッチが組み合わさった抽象的なドローイングや、洒落っ気の効いたアイロニーが光る作品が存在感を放っている。




別の壁面には、オーナーと交流のある県内の若手アーティストの作品が展示されている。異なる個性がぶつかりあいつつも、ある種のハーモニーを醸し出しているあたりが、コザらしい。




Stock Room Gallery Kozaにはアート作品だけが展示されたり販売されているわけではない。沖縄だと1年のうち10カ月近くはお世話になるTシャツ(沖縄にいるアメリカ人や観光客は真冬でもTシャツ姿の人が少なくないので人によってはオールシーズンの必須アイテム)は、もちろんオリジナルのデザイン。キッズ用から大人用まで個性的なデザインが充実している。その他、原画よりもはるかに手軽に購入できるポスターや、日々の暮らしの中でいつも身近に置いておけるステーショナリー、お気に入りの場所や車にペタッと貼れるステッカーなど、買いやすいアイテムもしっかり押さえられている(人とかぶらないお土産にもピッタリかも)。




Stock Room Gallery Kozaのコンセプトは”Art your daily life”。「日常をアートしよう!」とでも訳せるだろうか。「”art”という英語に動詞はないですから、造語なんですけどね。アートって作品を購入しようとしたら一般的には大金が必要だと思われがちですよね。純粋に美的な欲求というよりもステイタスのためにお金持ちが所有するようなものみたいなイメージがあったりもする…。でも実は、アートはおしゃれ心いっぱいの遊びの一つだし、誰もが楽しめるもののはずなんですよね。絵を描くことは特別なことではまったくないし、理屈とか常識に縛られない自由な状態に自分を解き放つことができる手段だとも思うんです。成長途中の少年少女って、いつの時代も何かに自分をあわせようと一生懸命で、窮屈そうじゃないですか。だから、僕よりもさらに若い世代にも、アートの魅力を広げていきたいんです」。そう語るのはDENPAというアーティストネームで作品を描き続けているオーナーの安里亮祐(あさと・りょうすけ)さん。今年35歳を迎える二児の父親だ。

物心ついた頃から時間さえあれば絵を描いていた安里さんが、本格的に作品としてのアートに取り組み始めたのは18歳前後。琉球大学の教育学部に進学したものの、ファッション関係の仕事をしたいと東京の服飾専門学校に進学。その後沖縄にUターンして2010年に米軍基地内にオーダーメイドのTシャツショップを開業した。事業的にも順調に推移したおかげで、再びアーティストとしての欲求が日増しに強くなり、Stock Room Gallery Kozaをオープンすることにしたという。




さて、パークアベニューに若者が再び集まりだしたのは2017年頃からで、ギャラリーがオープンした2016年には、まだ今のような活気を取り戻してはいなかった。なぜこの場所を選んだのだろう。「通りの雰囲気が好きなんです。北谷(ちゃたん)とか那覇のほうが人通りもあるし、お客さんにも恵まれるでしょうけど、僕はお客さんを『消費』したくないんです。ちゃんと招いておもてなしをして、ゆっくりとアートを楽しんでもらいたいんです。今日初めて会ったのにバイバーイみたいな、一回限りの関係じゃなくて、友達のように長くおつきあいができる関係を築ける空間が必要だったんです」。Stock Room Gallery Kozaをスタートさせたら、実際20代を中心にお客さんがついてきたそうだ。




常連客の中には中学生や高校生もいるという。「最近まではコーヒーも販売していたんです。若い子たちは300円払って、コーヒーを飲みながら、思い思いに時間を楽しんでくれるんです。中には2時間もかけて悩みを打ち明けたり、将来のことを話したりする子もいます」。安里さん自身、今までの人生で世間の常識や社会のルールと折り合いをつけることにずいぶん苦労してきたようだ。30代になった今でも変わらない。髪形をシェイブドヘッドにしていると、大人から「みっともない」と言われることがあるのだそう。中学生から高校生までは、爽やかさや若者らしさのアイコンで、賞賛の対象だったはずの丸坊主なのに、大人になった自分がすると「ヤクザみたい!」という反応が返ってくるという。これは一例で、他にも色々な“衝突”があるそうだ。




「常識とか正義のような論理や言語の世界に僕らは生きてるわけですが、直感だったり、言葉にならない思いだったり、そういう感覚的な世界にも僕らは生きてるわけじゃないですか。アートは言葉がいらない世界に自分を開放してくれるものなんです。アートの時間の流れに身を置いていると素の自分でいられるんですよ」。そういうアートの価値や“効用”を広めようと、日々楽しく悩んでいる安里さんは、レイアウトやディスプレイを結構頻繁にいじるそうだ。「模様替えが趣味みたいなもんなんですよ」と言い訳をするが、この場所を訪ねてきてくれる人が、今日という日常をいつでも楽しんでもらえるように、という思いがそこにはあるのだろう。




「インスタのように瞬間を切り取るのも面白いですよね。でも、いい意味でも悪い意味でも消費される文化にスポットが当たっている今だからこそ、瞬間的でないアートの重要性が出てくると思うんです」。安里さんにとってアートは絵画や写真のようなビジュアル表現だけにとどまらない。「言葉は遊び心のあるアートになれる」と、個人で出版する小さな冊子であるZINEの企画展を不定期で開催している。瞬間的なアートが広がることで、誰もがアーティストになれたという点で、Instagramの功績は大きい。瞬間は瞬間だからこそ魅力的でもある。その一方で、時間の経過をゆっくり楽しむポエムや散文は、瞬間的ではないからこそ魅力的なのだろう。




アートを楽しんでもらうための工夫や心配りはそれだけではない。ファストファッションブランドをリメイクしてた上で販売し、売上の一部を不公正な労働条件に苦しむ縫製業者に返還する、というアパレルプロジェクト「Scalper by DENPA」を手がけたり、そのプロジェクトを手掛かりに、大学生とフェアトレードについて考える公開ゼミを琉球大学の教授と共催したり、社会的課題との接点も模索しているのだ。

「物が簡単に売れる時代ではないということからもわかるように、居場所とか過す時間そのものに価値が置かれるようになってきています。そういう意味でもエネルギッシュでフレキシブルな若い人にはより多くのインスピレーションを与えたいし、それができる場にしていきたいです」。安里さんにとっては生き方も哲学もアートもボーダーレス。人と人がひとつの場所で出会い、持ってるものを交換すことで、みんなの人生が豊かになると考えているようだ。最近は、ものに値段をつけて売るやり方の向こうにある新しい売り買いのありかたを考えはじめているという。




「明日から29歳以下に限定したグループ展をやるんです。タイトルは“BUDS”。蕾という意味です。未熟だといわれている世代、迷っている世代に、先輩として何かをしたいと…。2年近くギャラリーをやってみてわかったんですが、沖縄は表現者の宝庫なんですよ。太陽が眩しいせいなのか、緑が濃いせいかはわかりませんけど、人の感性を刺激する何かがきっとあるんでしょうね。『素敵な表現をしているね、君はアーティスだね』って、自分では気づいていない若い人に、アーティストであるという自覚を与えたいんです。これからも毎年1回はこのグループ展を続けていきますよ」。そう語る安里さんはまだ30代だけれども、すでに沖縄の面倒見のいいシージャー(先輩)の風格が備わっているように見える。

Stock Room Gallery Koza
住所/沖縄県沖縄市中央2-7-40 1F
電話/098-927-2432
営業時間/11:00~20:00
定休日/火曜日、水曜日
Webサイト/http://denpaeater.com


沖縄CLIPフォトライター 福田展也

《コザのおすすめ》
・職人技と遊び心と地元愛。本格的なドイツ製法のハム・ソーセージを味わえる『TESIO』
・「世界に一番近い街」コザにある小さな小さなカフェシアター『THEATER DONUT』
・沖縄を代表するクリエイティブユニットが、ユニークなデザイン雑貨ショップをプロデュース!『アトロンSHOP』


まだまだ知られていないあなただけが知る沖縄の魅力を是非教えてください。沖縄の旅行情報のご投稿はこちらから。

~もっと、沖縄が好きになる。沖縄CLIP~
 

Information

沖縄県沖縄市中央2-7-40