沖縄観光情報:街を変えつつある沖縄のサブカルチャー《PIN-UPGALLERYOKINAWA(宜野湾市)》

街を変えつつある沖縄のサブカルチャー《 PIN-UP GALLERY OKINAWA(宜野湾市)》

post : 2018.03.22 09:00



沖縄がアメリカの統治下にあった時代から、海外の文化に影響を受け続けてきた沖縄では、本土とは質感や温度が違うサブカルチャーが音楽やファッションなどのフィールドで育ってきた。そして、本土復帰から40年以上経った今もなお、本島南部とは違う時間が流れている中部では特に、異文化がミックスされたサブカルチャーの火が、消えることなく息づいている。

今回ご紹介するPIN-UP GALLERY OKINAWAは、独自に発展してきた沖縄のサブカルチャーを、アートイベントなどを通じて世界に発信しているギャラリーの一つだ。2017年5月の誕生以来、このギャラリーはこれまで11の展示会を開催してきた。






オープン第一弾として、沖縄では名が知られたお笑いユニット「山猫ブラザーズ」による作品展が開催された。その『山猫展 I~新しい町から~』は、雄大なマングローブと絶滅の危機にあるイリオモテヤマネコで世界的に知られる西表島(いりおもてじま)出身の兄弟ユニットによるもので、彼らが描く独特の世界観が展開された。モノクロムとレインボーカラー、素朴さとシュッとしたタッチ、強弱のアクセントなど、コントラストが印象的。お笑いの舞台のほか、アート、音楽、パフォーマンス、ラジオパーソナリティなどマルチプルに活躍している、ある意味沖縄らしいアーティストだからこその一風変わったエキシビションだったようだ。





 
その後は、女性の乳房をテーマにした、リキ山猫さんの『おっぱい展』や、ブラジルで活躍中の沖縄系3世の染織家、パトリシア・サユリ・ホカマ・フォガサさんの『raiz tronco afeto(根・幹・希望)』、SNSでモデルを募集して、他人から知人友人へと関係性が変化するプロセスを撮影した、brazil3さんの『君について知っている1.2の事柄 或いは、愛と幻想のポートレート』など、ユニークな展示会が開催されてきた。






今回取材した時に開催されていたのは、沖縄出身の網宇途際(あみう・とぎわ)さんの『TOGIWA展-JOINT BIRTH-』。点描画の手法によって描かれた私的な世界や、魚拓ならぬ「人拓」作品など、型にはまらない自由奔放な世界が繰り広げられていた。

PIN-UP GALLERY OKINAWAで開催されるイベントは、アート領域だけにとどまらない。お正月には、沖縄では知る人ぞ知る音楽アーティストのナオキ屋を招いて、テンポラリーな神社を開設したり、ボードゲームや人狼のイベントを開催したりと、カテゴリーを飛び越えて、人と人が交差して、新たに出会えるような場づくりの動きが興味深い。




「アートに触れながらコーヒーやお酒を楽しめる空間にしたかった」というオーナーの許田盛哉(きょだ・もりや)さんは、ギャラリー内にコーヒーやお酒を楽しめるバーカウンターを設置した。事前予約が必要だが、1人から10人の範囲で、バーとしての営業(19時~24時)もしてくれる。5時間以内であれば1人1000円(要ドリーンクオーダー)で貸切も可能。気の合う友人同士で、他では味わえないアートと触れ合う沖縄ステイを楽しんでみるのもいいかもしれない。




一見、シャイで言葉数が少ないように見えるあたりが典型的な沖縄の男性らしい許田さんは、おじいさんがアメリカ人。基地の中で日本では上映されていない映画を観たり、おじいさんを通じて、アメリカのライフスタイルや価値観に小さい頃から触れてきたそうだ。思春期を過ぎてからは地元のキャスティング事務所に所属して、モデルとして活躍する傍ら、友人とパフォーマンスユニットを組んで小学校のイベントやクラブイベントに参加したりと社交的な一面も覗かせる。好きなアーティストはバンクシー、フォトグラファーだとテリー・リチャードソンがお気に入りの一人。自身もVJ(ビデオジョッキー)として、学祭やクラブで活躍したこともある。そういうバックボーンがあるから、ギャラリーから発信されるコンテンツが独特なのだろう。




「ギャラリーって、敷居が高いところがありますよね。でも、僕は普段の自分でアートを楽しめる場所をつくりたかったんです。完成されたアーティストも魅力的ですが、売れる手前の人、これから面白くなりそうな人、信念を持って自分の世界を表現している人に、ここを活用してもらえたら嬉しいです。若い人でも成熟した人でも構いません。絵がうまいのも大切ですが、ユニークな個性がキラリと光っている人もいいですよね」。そう語る許田さんは自分の眼鏡にかなうアーティストに会うと、積極的に声かけを行なっているそうだ。もちろんそれだけではなく、アーティストの方からのコンタクトも少しずつ増えてきているという。最近では、沖縄旅行に合わせて、学生の作品展を開催できないか、という問い合わせを韓国の美術大学から受けていると、嬉しそうに教えてくれた。




さて、PIN-UP GALLERY OKINAWAがユニークであるのは、アーティストのセレクトやイベントのコンセプト、そして、オーナーのユニークさだけではない。ギャラリーを構えた場所は、いろいろな意味で興味深いエリアなのだ。通称、新町として全国的に知られてきた宜野湾市真栄原(ぎのわんしまえはら)二丁目は、かつて、米軍相手の売春エリアとして街が形成され、その後日本人相手にターゲットを変えながらも、つい最近の2011年頃まではイリーガルな風俗街として栄えていた場所だ。小学生の頃、近所に住んでいた許田さんにとって、この街は馴染み深い場所だった。なぜなら通学路だったからだ。




子供の頃からどんな場所か知っていたし、車の免許をとってからは、多くの沖縄の若者がやるように、ドライブコースとしてこの街を走り抜けたこともある。そういう地域だったからこそ、「浄化」以降ゴーストタウンと化した新町を、複雑な気持ちで眺めていたのだろう。「好きなようにリノベーションできて、しかも家賃は安く、立地も悪くない。そういった現実的な条件はもちろん最初から魅力的でしたが、自分の小さなアクションが引き金になって、独特の歴史を持つのこのエリアが、新しい町に生まれ変わったらそれはとっても面白いことなのではないかという気持ちもありました」と許田さんは言う。サブカルチャーの力で生まれ変わろうとしているこの街での、小さな試みは、何百年も前からいろいろなものに翻弄されてきたにもかかわらず、強くたくましく、時代を乗り越えてきた沖縄の遺伝子をしっかり受け継いでいるようにみえるし、この試みそのものが、「本土とは質感や温度が違うサブカルチャー」なのかもしれない。

PIN-UP GALLERY OKINAWA
住所/沖縄県宜野湾市真栄原2-19-1
メール/info@pinup.website
営業時間/不定期
定休日/不定休
Webサイト/https://www.pinup.website

沖縄CLIPフォトライター 福田展也

《沖縄でアートを楽しんでみる》

・カルチャーがクロスオーバーするコザのサブカルアート発信拠点Stock Room Gallery Koza[沖縄市]
・沖縄を代表するクリエイティブユニットが、ユニークなデザイン雑貨ショップをプロデュース!【アトロンSHOP(沖縄市)】


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Information

沖縄県宜野湾市真栄原2-19-1