沖縄観光情報:健康になりたいという欲求と知的好奇心とを両方満たしてくれるカフェ〈運天食堂(名護市)〉

健康になりたいという欲求と知的好奇心とを両方満たしてくれるカフェ〈運天食堂 (名護市)〉

post : 2018.06.11 15:00



産婦人科医院に併設されたユニークなカフェが本島北部にある。その名は「運天食堂」。食欲と健康を求める気持ちと知的好奇心とをいっぺんに満たしてくれるはずのそのカフェには、大きな特色がふたつと小さな特徴がひとつある。大きな特徴の一つは産婦人科医院の給食チームがキッチンを担っていること。ふたつ目は、様々なジャンルの標本がディスプレイされた空間が小さな自然史博物館みたいだということ。小さな特徴は、産婦人科という言葉から思い浮かべるイメージを、いい意味で裏切るユニセックスな佇まいにある。




オープンにあたってオーナーの運天慎吾さんさんが店づくりの中心にすえたのは、産婦人科医院に入院している女性のために料理を提供してきたキッチンの存在だった。「嘘がつけないのが料理。真面目にやったか手を抜いたか。そのまま伝わる」。母親がこだわりを持って育ててきたキッチンはでき合いのものをできるだけ使わず、手間暇を惜しまないのが信条だった。「出産のために入院することが多い産婦人科の給食は、一般食に近いんです。だから、豊富な種類の食材を使って、栄養的なバランスが取れているだけでなく、身体も心も元気になれて、さらには、『おいしい!』って思ってもらえるものでなくてはいけないんです。入院はだいたい4泊5日なので、メニューはもちろん日替わりです」。病院の給食をほぼそのままカフェで出そうと運天さんは考えた。それが看板メニューの「日替わりランチ」(950円)だ。




この日の料理は牛の三枚肉の柔らか煮、季節野菜のとろーりあんかけ、シャキシャキ大根の和風サラダ、きんぴら風マヨネーズ和え、味噌汁に枝豆御飯、そして薬味と漬物。メイン料理にサラダと和えもの、付け合わせで構成されるランチに使用さてる食材は、日によって変わるけれど、おおよそ30種類だとのこと。




食事メニューは日替わりランチだけではない。カレー、タコライス、シシリアンライスの3種類が用意されている。「10人いるとしたら、7~8人が『食べたい!』と思うに違いないはずの料理を二種類選びました。国民食のカレーと、県民色のタコライスです。もちろん、独自性は出してますけどね。地元のお客さんが多いので、もうひとつは沖縄以外のローカルフードをやりたくて、色々試してみたんです。悩みましたが、わかりやすい美味しさが印象的だった佐賀のシシリアンライスに決めました」。




シシリアンライスは牛肉と野菜を盛り付けてイタリアンドレッシングとマヨネーズをかけたもの。運天食堂では、沖縄らしくアレンジして、甘辛く仕上げた豚肉を使用している。たっぷりの野菜にレーズンとピーナッツ、塩レモンをトッピング。さっぱり爽やかな味わいのメニューは予想通り人気メニューのひとつになった。




ちなみにカレーは炙り軟骨を使った「軟骨ソーキのカレーライス」(880円)。納得のいくものを作りたいと、運天産婦人科医院で長い間人気を誇ってきた欧風タイプカレーのレシピをいったん捨てて、パートナーのさや子さんと一緒に一から作り直し、自宅で試作を繰り返した自信作だ。タコライスは、県民食のローストチキンがトッピングされた「チキンタコライス」(880円)。一般的なタコライスとはひと味もふた味も違う。「将来的には沖縄を代表するローカルフードのヤギを使った料理をメニュー化したいです」と、運天さんが意気込みを語りながら持って来たのは、オーブンで10分ほど焼き上げたフォンダンショコラ。熱々なうちに食べると絶品。他にはバナナケーキやスフレケーキが評判なようで、こちらも病院の給食で人気のメニューだそうだ。

ドリンクはイノーコーヒー、琉球紅茶、シークヮーサーサイダーなどのほか、カフェインレスコーヒーもしっかりおさえられている。




「調理に手間ひまを惜しまないことと同じくらい気を使っているのが素材です。できる限りいいものを使いたいじゃないですか」。野菜や果物などの農産物は顔が見える関係を重視している。半年前に知り合ったという森義貴(もり・よしたか)さんもそのひとりだ。




「知り合いのカフェでたまたま食べたサンドイッチの野菜がすごく美味しかったので、誰が作っているか教えてもらいました。それが森さんだったんです。静岡から4年前に移住してきて、農薬と化学肥料を使わないだけでなく、自然がもともと持っている力を大切にする半自然農法で育てているんです」。他の食材についてもこだわったものを積極的に探しているという。「仕事ぶりとか生き方とか、自分が心からリスペクトできる生産者のものを使いたいというのが自分のポリシーで…。森さんは自分なりの美学を持っているです。そしてその美学を他人に語れるんですよね。語れるということは自信があるということの現れだとも思うんです」。




こだわりは他にもある。例えばドリンクメニューのひとつのシークヮーサーソーダ。キッチンでグラスにシークヮーサーを注ぎ、ペットボトル入りの業務用のソーダで割ってテーブルに運ぶのが一般的だが、この店では200mlの瓶入りソーダ、シークヮーサージュースを別々に持ってきてくれる。「コストや手間はかかりますが、少しでもお客さんに楽しんでほしいから」。そんな思いが土台になっているのが独特の空間作りだ。メニューの表紙にも、「この場所をまずは愛娘へ。そして、まだ大人になりきれないあなたとぼくに」と書かれている。「子どもがドキドキできるもの、ワクワクするもの。子どもに面白いと思ってもらえるのが一番嬉しい」と運天さんは語るが、誰よりもワクワクしているのは当のご本人かもしれない。






「博物学への興味が芽生えたのは小学生の頃ですね。3歳違いの兄が昆虫大好き少年で、その影響もあって、いつのまにか昆虫採集や魚釣りに熱中しはじめたんです。成長するにつれてしばらくは熱が冷めていったんですが、10年くらい前から自然の造形美に再び興味が蘇ってきて…。ディテールの凄さ、デザイン的な完成度の高さがたまらなくて…。植物への興味も新たに加わって、見て面白いもの、美しいものを趣味的に集めるようになったんです。それで、お店を始めるときに、子どもはもちろんですが、アート作品と同じように大人も楽しめる世界をコンセプトにしようと考えるようになりました」。






運天さんにオススメを尋ねてみた。ナンバーワンは鹿の頭骨。「『飲食店にふさわしくないんじゃないか』という気持ちも正直あるんですが、生と死を感じさせる頭骨はいい加減な意味じゃなくて、本当に美しいんです」。ナンバーツーはサキシマガジュマル。一般的なガジュマルに比べて葉っぱが小さい子のガジュマルは、運天さんのおばあさんが30年近く可愛がってきたもので、お兄さんの家にあったのを頼み込んで譲り受けという。こう言っては失礼かもしれないが、運天さんはやっぱりユニークな人だ。



 
「子どもの頃から人と違うって言われて育ってきたんですが、違うことがそのうち自分にとって普通になってきたんです。実は高校も行ってないんです。勉強が嫌いだったわけではないんですけど…。そのうちに人と違う自分を肯定的に受け止めるようになってきました。こだわりが平均と違う人は面白い、そういう人がつくりだすものも面白いと。でも自分が面白いと思う世界であっても、お客さんに受け入れられなければ成り立たないわけで…。自分が面白がるものを人が面白がってくれるか正直不安でしたよ。だから、店づくりはスタッフや妻の意見を取り入れるようにしています。そうすることでバランスをとってるわけです。自分の意見だけでは危険ですから(笑)。スタッフに『やめたほうがいい』と言われるものはなるべく置かないようにしています」。

「自分は直感的で感覚的。あとで理屈をくっつけるタイプだと思ってます。このお店も、はっきりしたビジョンとかプランがあって始めたわけではないんです」と自己評価している運天さん。「月並みかもしれませんが、おいしくて、楽しくて、面白い場所になってほしいです。小さな幸せを感じてもらえたら最高です」。最後にどんなお店にしていきたいかを尋ねたら、こんな答が返ってきた。


運天食堂
住所/沖縄県名護市大中3-1-5
電話/0980-53-0131
営業時間/11:00~15:00
定休日/木曜、日曜
Webサイト/https://www.instagram.com/untensyokudou/

※料金は2018年5月時点です。

沖縄CLIPフォトライター 福田展也


《関連記事/個性がキラリと光る人とお店》
・コーヒーの栽培から、精製、焙煎、抽出まで。「コーヒーを0からつくるおもしろさ」を追求しているDONABE-COFFEE
・「沖縄の自然を活かして人が集まる仕事をしたい」両親が生まれ育った沖縄へUターン【IBISCOの安室優さん】
・今のところガイドブックに載っていないおすすめの店。タコスが絶品、ローカル率がほぼ100%の「うちのやまち」

まだまだ知られていないあなただけが知る沖縄の魅力を是非教えてください。沖縄の旅行情報のご投稿はこちらから。

~もっと、沖縄が好きになる。沖縄CLIP~
 

Information

沖縄県名護市大中3-1-5