沖縄観光情報:ガラスの魔法使いが作り出すフリースタイルなガラス作品〈houhou(本部町)〉

ガラスの魔法使いが作り出すフリースタイルなガラス作品〈houhou(本部町)〉

post : 2018.07.19 15:00




美ら海水族館や寒緋桜で知られる本部町(もとぶちょう)に、沖縄では珍しいボロシリケイトガラスのアトリエショップがある。パリ、ニューヨーク、富山、ハワイ、ドイツ、沖永良部(おきのえらぶ)を渡り歩いて、ガラス工芸の技術を磨いてきた津田亮(つだ・りょう)さんが2014年から営んでいる『houhou』だ。自分のことをガラスの魔法使いと呼び、自らが作り出すガラス製品にフリースタイル・オキナワン・ボロシリケイトグラスと命名した津田さんは、職人というよりも芸術家に近い。そして、伝統や様式よりも個人の感性や想像力を大切にしてものづくりをしている。




ボロシリケイトガラスは、壊れにくく細かな加工を施しやすい耐熱ガラスで、空き瓶をリサイクルして宙吹きという技法で作られる琉球ガラスとはひと味違った魅力を持っている。主な材料はガラス管やガラス棒、ガラス板。できあがる製品は熱や衝撃に強い。






津田さんがバーナーを操って作り出すのは、ペンダントトップやピアスなどのアクセサリー、マグカップやゴブレットなどの器、オーナメント、オブジェと幅広い。2500℃くらいの炎でガラスをあぶって伸ばしたり、膨らませたり、温度変化による収縮を利用してカットしたり、純銀を気化させて吹き付けることでオパールのような色彩を施したり、彫り込みで模様を描いたり。素材から作品へと仕上げていく姿はさながら炎の魔術師のようだ。

「ドイツにいた時、ストリートでまるで魔法使いのようにガラスから鳥を作る人に出会ったんです。世話になったマイスターにも『工房にこもらないで人前に出ろ。ロックスターや芸人のようにならなきゃダメだ』とことあるごとに言われてました」。そういったバックグラウンドがあって、今の津田さんがいるということだ。



 


日本に帰ってきてから、津田さんはペンダントトップを作り始めた。アメリカのオレゴン州で学んだ技法がベースになっていて、サイケデリックなテイストが印象的な作品に仕上がっている。独特の模様や色使いは1960年代後半から70年代前半にアメリカを中心に盛り上がったヒッピームーブメントの流れを汲むもので、ヒッピーたちがガラスパイプを作る際に花開かせていったアート性が独特の世界観を生み出している。ガラス板に金、銀、チタンなどの金属を付着させたダイクロガラスを使って表現されるキラキラと妖しくきらめく雰囲気は小さな宇宙のようだ。




エッジの効いた尖がり系のアクセサリーのほか、なごみ系のほっこりした作品も店頭に並べられている。海ぶどうやクワズイモの箸置きや、「の」の字が赤く描かれた首里名物の「のまんじゅう」をあしらったヘアゴム、ジーマミー(ピーナッツ)のピアス。どこかオモチャっぽい沖縄モチーフの作品を眺めているほのぼのした気持ちになる。




オモチャといえば、こちらのロケットが個人的にはおすすめなのだそう。「翼とか噴射口とか炎とかパーツを付け足していって、これでも結構改良を加えているんですよ」と、顔をほころばせながら語る様子は、少年がお気に入りのキャラクターについて嬉々として説明する時の純粋さに似ている。




隣のガラスケースに目を移すと、ゴルフに使うティーのような形をした不思議なものが存在感を放っていた。「ああ、これはキノコのスティックです。いいでしょ」とニコリ。プランターに挿してもいいし、仕事場の机の上に置いて時々眺めて癒されるのにもよさそうだ。はまる人にしかはまらないように思える刻まれた美意識やユーモアのセンスが、実は多くの人に受け入れられているのは、物事を素直に面白がる津田さんの飾り気のなさのおかげなのだろう。




 天井からは惑星やロケット、UFO、稲妻、水滴の形をしたオーナメントが吊り下げられている。きらきらした光を部屋の中にいながらにして楽しんでもらいたいと、作り続けているシリーズだ。「このオーナメントは土星をモチーフにしてはいるんですが、土星だとお客さんにはすぐにわからない方が僕は嬉しいんですね。見てくれる人に『これは何だろう』って想像してもらいたいからなんです」。新たなモチーフとして最近興味が出てきたというプランクトンも、プランクトンそのものをリアルに再現するという方向ではなく、プランクトンが持っている雰囲気や色を自分流に表現しようとアイデアを膨らませているという。




「とにかく自分がワクワクするものを作り続けたいんです。仕事に追われている自分に最近気づいたんですよ。作ることがルーティンワークになっていたなあって。これからは食べていける程度の仕事量にして、自分がやりたい世界をもっともっと表現していきたいです。たとえそれが他人から見たらどうしようもないものだとしてもね」。



 
最近のめり込んでいるのは、泡盛の古酒をちびりちびりと舐めるように味わうための酒器だそうだ。泡盛コンシェルジュの比嘉康二さんとどんな形だと美味しく味わえるか一緒になって検討しながら、遊び心のある器を作り始めている。一般的なおちょこに比べて格段に小振りな酒器はいくつか既に形になっていて、今はカラカラに挑戦中だ。




「琉球ガラスの世界観を僕が真似ても仕方がないと思うんですよ。それがどんなに素晴らしく思えても、自分にはその道を歩くことは求められていないはずです。僕は海外と日本と沖縄をボロシリケイトガラスでつないでいきたい。そして、自分にはカチッとしたものより遊び心のあるものが合ってるんです。これからは、自分の中に眠っている感性やアイデアをどんどん掘り起こして、作品に活かせるようになれたらいいなと思ってます」。








津田さんが最後に見せてくれたのはタコのような足をした手作り感溢れるワイングラスだった。「生きてるものっぽいのを作りたくなるんです」という言葉の通り、生きものというより生きものっぽい感じがポップで楽しくもある。どことなくコミックの世界観に通じるものがある。そんなフリースタイルなガラス作品は間違いなく津田さんのオリジナルではあるけれど、沖縄のおおらかさとしなやかさによって育まれたもしれない。


hou hou(ホウホウ)
住所/沖縄県本部町字伊豆味 534-2
メール/izumiglasshutte@gmail .com
営業時間/10:00~18:00
定休日/水曜日、木曜日
Webサイト/http://glassblowing.ti-da.net

沖縄CLIPフォトライター 福田展也

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沖縄県本部町字伊豆味 534-2