沖縄観光情報:那覇〈謝花きっぱん店〉琉球王朝時代の菓子とチョコレートの出会い

那覇〈謝花きっぱん店〉琉球王朝時代の菓子とチョコレートの出会い

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初回投稿日:2021年01月19日
 最終更新日:2023年12月14日

那覇〈謝花きっぱん店〉琉球王朝時代の菓子とチョコレートの出会い

きっぱんのチョコレートがけ

やんばるのスパイスとフランス料理、宜野座村(ぎのざそん)の黒糖とチョコレート、読谷村(よみたんそん)のいちごとリキュール。畑違いの生産者同士のコラボレーションが盛んな沖縄に、またひとつ、新たな味のマリアージュが誕生しました。謝花きっぱん店の「きっぱんのチョコレートがけ」。琉球王朝時代から作られてきた伝統菓子が、21世紀生まれの沖縄産チョコレートと出会うことで生まれた新しいスイーツです。

“きっぱん”(橘餅)

“きっぱん”(橘餅)は今から数百年も前に、琉球王朝の王族が食べていたとされる伝統菓子のひとつです。材料は沖縄で栽培されてきた柑橘類と砂糖だけというシンプルなものですが、柑橘の芳ばしい香りとキリッとした苦味が特徴の気品ある菓子で、中国や日本から訪れる使者をもてなす際に供されていたと伝えられています。ですが、時が流れるうちにこのお菓子を作るお店は減り続け、今では謝花きっぱん店だけでしか作られていない、とても貴重なお菓子でもあるのです。


謝花きっぱん店
写真提供:謝花きっぱん店

さて、謝花きっぱん店は、きっぱんのほか、沖縄特産の冬瓜(とうがん)で作る伝統菓子「冬瓜漬」を300年以上作り続けてきた老舗ですが、最近では、沖縄産のラム酒を冬瓜漬けを組み合わせたり、冬瓜漬け入りのシューレンを商品化したり、沖縄の伝統菓子「ちいるんこう」を再現したりと、沖縄の食文化の世界で、伝統の継承と革新の両方にチャレンジしています。


冬瓜漬写真提供:謝花きっぱん店

ちなみに、冬瓜漬は、「珈琲 和菓子アワード 2017」で九州・四国ブロック金賞を受賞しました。また、2019年に文化庁から日本遺産として認定された「琉球王国時代から連綿と続く沖縄の伝統的な『琉球料理』と『泡盛』、そして『芸能』」というストーリーの中には、きっぱんが含まれています。

冬瓜漬
日本遺産とは文化庁が認定するもので、国内各地域の歴史的魅力や特色を、日本の文化・伝統を語るストーリーとして国内外に発信することで、歴史文化面から地域の振興を図ろうという目的を持っています。認定されたストーリーは、礼節を重んじてきた「守礼の邦」琉球王国が、中国から派遣された冊封使節団などをもてなすために振る舞った琉球料理や泡盛、琉球舞踊を支えるおもてなしの精神とおもてなしの文化がベースになっています。


カカオビーンズ

このような歴史と未来をつなぐ取り組みの延長にある「きっぱんのチョコレートがけ」。もうひとつの主役である沖縄産チョコレートは、沖縄で初めてのとなる“ Bean to Bar” スタイルのチョコレート専門店として誕生したTIMELESS CHOCOLATEから届けられています。このチョコレートは、沖縄で直焙煎しているカカオビーンズと沖縄産の黒砂糖だけで作られています。ガーナ、コロンビア、ベトナム、インドネシアなど産地ごとに異なる特性に応じてローストすることで、ベストな香りと味わいを引き出せるのです。きっぱんのチョコレートがけに使用しているのはガーナ産のカカオ豆からできたチョコレート。力強いカカオ感とココナッツのようなフルーツ感が持ち味で、きっぱんの柑橘の爽やかさとの相性が抜群です。

冬瓜漬チョコレートテリーヌ

「TIMELESS CHOCOLATEさんが私たちの冬瓜漬を使って『冬瓜漬チョコレートテリーヌ』を商品化したんですが、きっぱんをチョコレートと組み合わせたいと、ずっと思っていたんです。きっぱんはうちの看板菓子ですし、何百年の伝統を受け継いできた大事なものなので、組み合わせるものにもこだわりたかったんです」。謝花きっぱん店の店主、謝花久乃さんはきっぱんのチョコレートがけのアイデアを思いついてから、沖縄で作られているチョコレートしかないと、心に決めてきたそうです。そして出会ったのが、TIMELESS CHOCOLATEでした。

きっぱんの1口サイズ

きっぱんも、TIMELESS CHOCOLATEのチョコレートも、どちらも手間暇惜しまずに、文字通り手仕事によって生み出されるもの。チョコレートとの相性を最大限高めるために、乾燥の具合は、砂糖がけのきっぱんとは違うのだそう。伝統的なきっぱんは3日程度寝かせてから砂糖がけを行うのに対して、チョコレートがけの場合、1日程度。ワインやウイスキーと合わせやすいように、大きさもひと口サイズにアレンジされています。

冬瓜漬チョコレートテリーヌ
湯煎をして適度に柔らかくしたチョコレートを、冷めないうちに、きっぱんに絡めて、手のひらで転がして仕上げるあたりは、伝統的なきっぱんの作り方と同じです。手の動き、指先の力加減は職人技の世界。そうしてできあがったきっぱんのチョコレートがけは、ていねいに作られたお酒にもよく合います。
 

謝花きっぱん店

住所 /
沖縄県那覇市松尾1-5-14
電話 /
098-867-3687
営業時間 /
9:30~17:00
定休日 /
日曜日
サイト /
http://www.jahanakippan.com

福田展也 / フォトライター

沖縄CLIP編集部

~ もっと、沖縄が好きになる。沖縄CLIP ~