「音楽はみんなのもの」。垣根なく精一杯のうとぅいむち(おもてなし)で迎えてくれる那覇市栄町の「遊処 永楽(あしびどぅくる えいらく)」はあたたかな人たちが集う民謡居酒屋

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あそぶ

初回投稿日:2021.03.11
 最終更新日:2024.04.08

「音楽はみんなのもの」。垣根なく精一杯のうとぅいむち(おもてなし)で迎えてくれる那覇市栄町の「遊処 永楽(あしびどぅくる えいらく)」はあたたかな人たちが集う民謡居酒屋

那覇で飲み歩くとなると、必ずと言ってよいほど候補のひとつに上がる「栄町(さかえまち)」。ゆいレール「安里(あさと)」駅の東側にある栄町市場を中心に、周辺には個性的な飲食店が連なります。


栄町社交街

栄町ロータリー(と言う名の十字路)から東へ歩いて数十歩。赤ちょうちんと黄色い暖簾が目印の「遊処 永楽(あしびどぅくる えいらく)」は、生の三線(さんしん)と唄者の息遣いを間近で体感することができる、とても沖縄らしい居酒屋さんです。


「ぬーし(主)」または「大将」と呼ばれるオーナーの石原朝泰(いしはら・ちょうたい)さんは、6歳から三線に慣れ親しまれてきた宮古民謡と沖縄民謡の先生。「第5回なりやまあやぐまつり」で「インギャー賞」を受賞されているほどの実力の持ち主です。

※「なりやまあやぐまつり」… 2006年から宮古島で毎年開催されている民謡大会(芸能文化イベント)。伝統文化の継承と地域活性化を目的に、宮古島を代表する民謡「なりやまあやぐ」発祥の地・友利(ともり)で開催されています。

「いろんなつながりが発展していく場、人と人がつながる拠点になってほしい。こんな広い世の中で、ピンポイントで人と人が出会う縁を大切にしたいです」と「永楽」を切り盛りされています。

ご縁をとても大切にされていることがよくわかるエピソードのひとつとして、「これまで本土のカップルがここでプロポーズされて、5組がゴールインするまでに至っているんですよ」と顔をほころばせました。

「トーフチャンプルー」と「ソーメンチャンプルー」

オープン1年後から厨房に入られたキミさんがお料理を担当、お料理以外はぬーしが担当と、二人三脚で切り盛りされる「永楽」。

料理学校出身のキミさんが腕を振るうお料理でとくに人気なのが「トーフチャンプルー」と「ソーメンチャンプルー」。家庭的なやさしい味がほっとさせてくれます。

「沖縄料理は、ウチナーンチュの友人から習いました」と千葉県出身のキミさん。「ソーメンチャンプルーは、素麺を絡めるくらい素早く炒めることがコツかなぁ」とはにかみながら答えてくださいました。

「よく出る泡盛は多良川、久米島(くめじま)の久米仙などですが、何でもあります。なにせすぐそばに酒屋さんがありますから(笑) 何々が飲みたいと言ってくれればすぐ買いに行きますよ!」とぬーし。サキヌマー(酒飲み、酒好き)には頼もしい限りです。

「ひとりでいらしたお客様には積極的に話しかけます」。

それは、“この空間はひとりじゃないよ。色んな人とお話して友だちをつくってください”との想いからだそう。

「お客様は地元が6割、本土の方が4割くらい。リピーターさんが多いですね。那覇にこれだけ飲食店があるなかから選んで、足を運んで頂いたお客様へ、精一杯お応えしたい。ゆっくりリラックスして頂けるようにもてなすことを心掛けています」と、ぬーし流の“うとぅいむち(おもてなし)”の真髄を語られました。

三線

店内の壁に掲げられた10丁あまりの三線。

「あの三線は竹富島から」、「赤い紐のは鳥取県から」、「ピンクのは秋田県から」と、三線一丁一丁の“ここにある所以”、それぞれの三線ストーリーを語るぬーし。なかには、「ここにいれば毎晩ならしてくれるから」と送られてきた“形見の三線”も。
お店の三線、お弟子さんの三線に加え、全国から送られてきた三線が仲良く隣り合っている様は、「三線は生き物、三線には魂が入っているんですよ。大事にしないとね」とやさしく諭すぬーしと「遊処 永楽」らしさを静かに語っているのでした。

三線

「演奏は必ず入りますが時間は決まっていません。雰囲気、もしくはリクエストがあれば始めます。唄三線はあくまでサービス。料金は飲んだだけ食べた分だけです。ステージはありませんから、肩肘張らず、リラックスして楽しんでください」。

ぬーしが三線を手に取ると、居合わせた方たちが三線や太鼓を手に取り、ぬーしを中心に演奏がはじまりました。

「世界各国、音楽の素晴らしさは同じですが、小さな沖縄にも唄と三線があり、三線は沖縄のひとつの文化です。三線の音の持つ力を同時に感じて欲しい」。

ステージではない、マイクを介さない唄声と三線の響きはとても心地よく、近所の仲間が集まったような“沖縄の暮らし”がそのまま店内に現れました。

とにかくぬーしも常連さんもフレンドリーであたたかい。ぬーしの“ひとりじゃないよ”という想いを体現するかのように、お店側とお客様側、常連さんも初めての方も、とにかく、“垣根がないなぁ”と感じました。

「永楽」の心地よさは、“心地よい空間を醸し出せれば”と心掛けるぬーしのうとぅいむち(おもてなし)のこころが、三線の音色にのせて、常連さんはじめ店内のすべてに共鳴しているからかもしれません。

三線

最後に、音楽を少しかじっている者として、ぬーしが語ることばのひとつひとつが、とても胸に響きました。

民謡は民の声、民のウタ。
選ばれた人だけのものではない。
音楽はみんなのもの。
音楽はみんなのためにある。


「みんな手拍子という楽器をもっているから、みんなが気軽に参加して、みんなで楽しみたい。
笑顔でみんなで楽しいひとときを過ごせるのは音楽の力です。ピアノでもギターでも何でも、音楽をやってる人、やってた人は絶対にやめないでよ」

三線の先生らしいことばが、身にしみました。

「沖縄には、暮らしの延長線上に唄と三線がある」。
そのことを実感できる栄町の「永楽」、ぜひ足を運んでみてください
 

遊処 永楽(あしびどぅくる えいらく)

住所 /
沖縄県那覇市字大道172 銘苅ビル 1F
営業時間 /
18:00~0:00
電話 /
098-887-0234
定休日 /
不定休

沖縄CLIP編集部

安積 美加(あさか みか)

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