連載/島の恵み、島の味 その10 ゴーヤー

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初回投稿日:2014.07.02
 最終更新日:2024.04.09

連載/島の恵み、島の味 その10 ゴーヤー

ハーリー

 

「ハーリー(旧暦5月4日に行われる爬竜船競漕(はりゅうせんきょうそう))の

鐘が鳴ると梅雨が明ける」

 

沖縄に越してきて間もない頃、島の人に伺ったはなしを思い出します。

 

沖縄もそろそろ夏時間。

 

照りつける太陽に負けない身体作りをしながら

厳しい夏の暑さと仲良くつきあいたいものです。

 

「島の恵み、島の味」も10回目。

今回は沖縄野菜の王様ともいえる

「ゴーヤー」を紹介したいと思います。

 

今では全国的にどこでも手に入りやすい食材として親しまれているゴーヤー。

濃い緑色のごつごつとした風貌の野菜。子どもたちに見せたら、

「きゃ~!にが~い」といって逃げ出しそう。


 

古くからゴーヤーの棚の下で涼むと夏バテに良いとされ、

ゴーヤーを育てている家庭もよく見かけます。

本土でも厳しい夏の暑さにベランダなどでゴーヤーを育てて

「ゴーヤーカーテン」として涼をとる光景もめずらしくありません。

 

沖縄では夏バテ解消や胃腸を整える薬草として利用されています。

中国の薬草事典「本草綱目(ほんぞうこうもく)によると、

「邪熱を除き、労乏を解し、心を清し、目を明にする」と記され、

万能の薬草として紹介されています。

沖縄や中国など「食べるものがヌチグスイ(命の薬)」という考え方を元に

食材の性質を調べてみると、毎回「なるほど~」とうなってしまいます。

 

熱に弱いとされているビタミンCですが、ゴーヤーだけは熱を加えても損なわずに摂取できるそうです。

酢の物やおかか醤油といった簡単な和え物から、油との相性も抜群で炒め物や天ぷらなど、

アレンジ自在なスグレモノ。暑い夏の日が続くなら、ゴーヤーを毎日いただいても良いそうです。


 

今回は、ご家庭でも作りやすい「ゴーヤーチャンプルー」を

ゴーヤーチャンプルーを食べるならここ!

というお店のご紹介と共に、

美味しく作る秘密のエッセンスも伝授したいと思います。


 

うるま市石川にある「榮料理店(さかえりょうりてん)」は、

県産の食材を中心に旬な沖縄料理が食べられるお店。

「無農薬野菜」「やんばる和牛」「紅豚あぐー」と

入り口に掲げられた看板に素材へのこだわりが伝わってきます。

 

来沖する友人や家族に、「オススメの場所は?」と聞かれると

迷わず真っ先に答えるのが、このお店。

 

いつか榮料理店さんにご協力頂きたいと密かに願って

ようやくこの日を迎えることが出来ました。


 

「チャンプルーは家庭それぞれの味があるんです。

うちは本当に卵も使わないシンプルな味付けなんですよ」

と語るオーナーシェフの小渡(おど)さん。

 

確かに、家でも普通に作って食べたり定食やさんでもいただけるポピュラーな品なのに、

どうして榮さんのゴーヤーチャンプルーは記憶に残るのだろうかと思いながら、いざ厨房へ。


 

誰もがするように、フライパンに一口大に切った豆腐を並べ、

両面を良く焼き、豚バラ肉を入れます。

そして、さっと湯通ししたゴーヤーとたまねぎを投入して、豪快に鍋を振る。

 

味付けも、みたところ、鰹出汁、塩、醤油、砂糖といったところでしょうか?

他とちょっと違うと言えば、塩麹を入れているところ。

 

「ふむふむ、それも美味しいそう」

だけど、そこじゃないなにかがあるはず・・・と思って見続けていると・・・


 

ついに見つけました、

最後に豆腐をひとつかみ

手で崩しながら入れています!

 

 

その後また、豪快に全体が馴染むように鍋を振り、

手際よくお皿に盛りつけていきました。


 

「全ての食材をそのまま炒めただけだと、一体感が生まれないんです。

仕上げに少量の豆腐を細かくつぶして入れると、その細かい豆腐に味が染みる。

ゴーヤーを食べても、肉を食べても小さな豆腐と

一緒に味わえるから味に一体感が生まれるんですよ」

 

照れながら話す小渡さんの話を伺いながら、自分はレシピを教えてもらおう!

と意気込んでいましたが、伝えたいところは、

仕上げの魔法「調和」の部分だったんだと気づくことが出来ました。

 

確かに一口味わうと、鰹の風味や調味料、油の味がバランス良く口の中に広がるのです。

どれをとっても突出していないというか、お互いの良い部分を繋げているような。

 

食べていて、

 

「あぁ、この食材たちは本当に仲が良いんだな」

 

ほっこりとしてしまう

不思議な印象をあたえてくれます。

 

良い食材、良い調味料、良い職人、良い器、

 

全てが揃っていれば美味しくなる、記憶に残る品になるとは限りません。

それぞれを繋ぐ「思いやり」があって

はじめて「おいしい」につながることを

教えてくれるゴーヤーチャンプル-。

 

是非一度食べてみてくださいね。

 

次回も引き続き

榮料理店さんの夏の定番野菜の美味しい品をご紹介いたします。

どうぞお楽しみに。

榮料理店

住所 /
沖縄県うるま市石川伊波1553-463
電話 /
098-964-7733
営業時間 /
17時00分~22時00分
定休日 /
日曜日
サイト /
http://niraicuisine.com/

monobox(河野哲昌・こずえ)

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