沖縄の長い夜、竜宮通り山羊料理店「さかえ」かっこつけてるところがひとつもない居心地のよさを堪能

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初回投稿日:2014.12.13
 最終更新日:2024.03.27

沖縄の長い夜、竜宮通り山羊料理店「さかえ」かっこつけてるところがひとつもない居心地のよさを堪能

夏の昼間が暑過ぎるからか、遺伝的にお酒に強い人が多いからか、

はたまた、人つながりの輪に欠かせないのがお酒だからなのか、

沖縄の夜は長く、酒場から人びとの嬌声が絶えることはありません。

主役は、店を守り、切り盛りする店主たち。

個性的な彼ら、彼女らに尊敬のマナザシを注ぎながら、

五臓六腑にしみわたる旨い酒と肴の数々を、

流しの酒飲みフォトライター(笑)浅倉彩が、飲んで食べる(気が向いたら撮る)日記です。

 

沖縄旅行の際にはみなさま、長い夜をどうぞ、

心ゆくまでお愉しみくださいね。

 

12月某日。

仕事を終えて、21時に予約した山羊料理店「さかえ」へ。

 

牧志交番を目印に国際通りに背を向けると、「竜宮通り」のゲートが迎えてくれます。

ゲートをくぐった瞬間、天気に関係なくなぜか濡れ始める空気。

その空気を胸いっぱい吸い込めば、浮き世の細事がはやくも流れ去って行きます。

 

「さかえ」は同じく名店の「小桜」のひとつ奥。

たまらなくミシミシいう扉をくぐると、、、今日も混んでます。

そして、満席の雑踏をものともせず響くのは、

店主なおみねーねー(桃井かおり似)のハスキーボイス。


山羊料理店「さかえ」 店主

店主 なおみねーねー近影&さかえの予約管理システム。「8月なんて(予約)こんなに!見て、すごいでしょ!」

いろんな意味で、すごいです

 

ちなみに今回は当日予約で入れましたが、常連さんに聞くと「それはラッキー」とのこと。

予約したけどカウンターが空いていないときは黙って待ち合い席へ。

そして、しのごの言わずにすばやく山羊を注文し、

山羊が出てくるまで、カウンターが空くまで、

気長にのんびりビールを飲みながら待つのです。

 

1人でビールと連れ合いを待っていると、

「そこ詰めて、(カウンターに)入れてあげて、さびしいから」とねーねー。

「もうすぐもう1人来るからだいじょうぶですよ~」とか言いながら、

いきなり溢れ出る人情のカウンターパンチをくらって温かい気持ちになりました。


 

「●●さーん!これ持ってって!」ねーねーが奥座敷の常連さんを呼ぶ光景を

微笑ましく眺めながら、待つ。

 

狭いカウンターで片寄せ合ってグラスを傾け、山羊をつまむ紳士たちの背中を

ぼんやりと見つめながら、待つ。

 

そこへ、2階からおもむろにお母さんが登場したら

「今からソーメンチャンプルーをふるまう」のサインです。

ソーメンチャンプルーを自宅でつくると、

2回に1回は「ソーメンだんご」になることを知っているわたしは、

どうすればモチモチなのにつるつるパラパラのソーメンチャンプルーが

つくれるのか興味津々。

麺を上げるタイミング、油の量、油に麺を入れるタイミング。

全力で技を盗んでやろうと

カウンターから乗り出しておばあの一挙手一投足をガン見していたら、

「恥ずかしいから見るんじゃないよ」と怒られた。

※おばあの眼光がやけに鋭かったので、写真は自粛しますネ。


白く輝くソーメンチャンプルー

 

山羊が出てくるまで、たゆみなくふるまいは続き、

県外からのお客さんのお土産という人形焼きやら、

ねーねーのお姉さんが空港付近で営む沖縄そば屋さんから差し入れてくれたジューシーやらが、

山羊を待つお腹を優しく満たしていきます。

 

そして、待ちに待った山羊登場のタイミングは、、、もう酔ってたので覚えてません。

 

なお、私はくせのある食べものが大好き(昆虫除く)なので、

色々なお店の山羊をおいしくいただいてきましたが、

さかえの山羊はかなりくさみが少ないほうで、山羊初心者にもオススメです。


山羊いため

 

「山羊いため」は沖縄でここでしか食べられません。(なおみねーねー調べ)

山羊と同量ほど、たっぷり炒め合わせられているフーチバーが効いてます。

油・塩・香る肉&ハーブの最強カルテットは、

ビールが進み過ぎて、進み過ぎて、進み過ぎて、、、困る。


山羊刺し

 

「山羊刺し」は、ピンクに輝く厚切り肉が歯ごたえプリプリで、

噛むごとにぎゅんぎゅんと味がしみ出し、ひとつ、またひとつと

後をひくお味・・・。

生姜醤油と呼ぶべきか、醤油生姜と呼ぶべきか迷うタレにつけていただきます。

特においしいのは、ピンクのお肉におまけのようにひっついている皮の部分。

ここのゼラチン質がコリコリしていて、実に美味!


山羊汁

 

と、ぺろりと平らげ、〆は山羊汁。

濃厚な旨味とコク。あとから追いかけてくる、少しクセのあるかほり。

沖縄という場所がそのまま溶け出したような、ぐっと来る一杯でございます。


お会計は、自己申告制です。

 

「(カウンターの)そことそこに座ってた人同士がここで出会って結婚したんだよ」とか、

「翁長さん(注 : 前那覇市長・現沖縄県知事)も昔はよく来てたよ。いい人よ。うふふ♡」とかいう

ねーねーの人間交差点トークに沖縄のコミュニティの濃厚さを実感しながら、

再びミシミシ言う扉をくぐり、見送ってくれるねーねーに手をふりながらさかえを後にすると、

国際通りにも夜のしじまが訪れていました。


 

師走のてっぺん間近でも、薄手のコート一枚で

酔い覚ましのお散歩ができるのは南国沖縄ならでは。

たっぷり摂取した山羊パワーを消費するべく、

ゆいレール2駅分ぐらいの家路をてくてく歩いて帰ったのでした。

  

歩きながら、酔いのまわった頭で

「なんて居心地のいい店なんだろう。なんでだろう?」と考えて、

頭に浮かんだは「素になれる」という言葉。

 

エプロン姿で常にしゃべりながら立ち働くねーねーにも、

山羊、レバニラ、ちゃんぷるー、イカスミ飯、以上。というシンプルなメニューにも、

かっこつけてるところがひとつもないから、

お客さんもみんなリラックスできるんだと思いました。

 

山羊さん、ねーねー、今夜もごちそうさまでした。

次こそは、幻の「玉ちゃん(山羊さんの睾丸)」があるといいな。

山羊料理さかえ

住所 /
沖縄県那覇市牧志3-12-20
電話 /
098-866-6401
営業時間 /
17時00分~21時00分
定休日 /
日曜日

沖縄CLIP編集部

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