南城市『うみ学校・やま学校~沖縄で自然とともに生きる人~』

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歴史文化

初回投稿日:2015.05.18
 最終更新日:2024.04.08

南城市『うみ学校・やま学校~沖縄で自然とともに生きる人~』

麺が入っていないチャンポン、ヤンバルクイナ・・・。「内地にはなくて沖縄にあるもの」は数えだしたらきりがありませんね。このコラムのタイトルに使われている“山学校”もその一つかもしれません。
 
沖縄に移住してすぐの頃、近所の先輩がたとお酒を飲んでゆんたく(おしゃべり)する機会が時々ありましたが、そういうときにしばしば話題にのぼったのが山学校でした。
 
校舎は川・山・野原。学校をさぼって通っていた「もう一つの学校」ということらしいです。先生は自然そのもの。昆虫や魚などの生き物と花や果物などとの関わりや、友人との水平な人間関係から、いろんなことを学んだそうです。
 
身の回りにあるものから遊び道具を作ったり、食べものを採取するコツを体得したり、雲の動きを読んで天気を予測したり・・・。沖縄の一定年齢以上の世代に共通したそうした体験は、暮らしの知恵という形で、県外から来る観光客や移住者を驚かせたり魅了したりしています。
 
木登りして大好物の桑のみを食べる子ども
木登りして大好物の桑のみを食べる子ども
 
コラム『うみ学校・やま学校~沖縄で自然とともに生きる人~』では、仕事や趣味や日常の色々を通じて、自然との共に生きている人にスポットを当てながら、沖縄の魅力をお伝えできればと思っています。
 
第一回目の今回、登場していただくのはハートのまち南城市に住む、I家のみなさんです。お父さん、お母さんにお子さん3人の5人家族。お父さんは地域おこしの分野で人と人をつないだり、しくみをデザインする仕事をしています。お母さんは現在、子育てに専念中。長女は地元の小学校に、大きい方の男の子は自然との触れ合いを大切にしている市内の保育園に通っています。
 
沖縄に移住する前は 首都圏で都会的な生活をしていたというご一家が、現在暮らしているのは沖縄本島南部の自然豊かな南城市。アオサやもずくが採れる自然海岸が歩いて行ける場所にあったり、家の隣の共有地にはミツバチが蜜を吸いに飛んでくる花や、子どもたちの大好物の果物がたわわに実る桑の木や、バナナの木が植わっていたりしています。
 
散歩コースには牛舎やヤギ小屋があって、動物たちと触れ合うことができるし、自然に芽を出したミニトマトを好きなだけ食べられる空き地もある。子どもにとっても嬉しい限りの環境ですよね。
 
眺めてるところも家族それぞれ。自然体な家族
 
I家のみなさんはそんな理想的な集落内にある民家を、隣り町の大工さんと一緒にリフォームした家に住んでいます。無垢材でできた大きめの縁側と、壁を取り払ってつくりだしたワンルームが特徴のこの家を、ひと言で表せば“風通しの良い家”。「家族みんなが言いたいことを自由に言いあって、お互いの意見を尊重しあおうよ」というI家のモットーがそのまま形になったような感じです。
 
 
「地面に近い暮らしがいいんですよ」。三人の子どもを育てるお母さんに住み心地を尋ねるとそう答えてくれました。「夜、窓を開けて寝ていると、床の位置が低いからすぐ耳元で虫の音が優しく鳴り響くんです」。沖縄は大地とつながっている暮らし方を始めやすい場所なのかもしれません。
 
去年の梅干しと今年シロップ漬け
 
うりずん(初夏)になれば、山に出かけて家族で梅狩りを思う存分楽しんで、家に帰ればシロップ漬けや梅酒にする。アオサやスク(アイゴの稚魚)の季節になれば浜に降りて恵みをもらう。庭先に育つハンダマ(スイゼンジナ)やフーチバー(よもぎ)やハーブが食卓に彩りを添える。季節折々の自然の息吹を上手に取り入れた暮らし方。
 
近所の空き地で食料採取する子どもたち
 
子どもたちも負けてはいません。5歳のお兄ちゃんは「おやつを食べながら仮面ライダードライブを観ること」が一番好きな時間の過ごし方だといういまどきの子どもです。でも、もう一つの顔は文字通りの自然児。お腹が空けば、桑の木によじ登って桑の実を、畑に分け入ってミニトマトを好きなだけ頬張るのが彼にとっての日常なのです。
 
 
2歳の末っ子もお姉ちゃんやお兄ちゃんの後を追いかけるだけではありません。裸足であちこち走り回り、裸になりたくなったら衣服を脱ぎ捨て、生まれたばかりの姿に戻る。のびのびとすこやかに生きているようです。
 
 
8歳になるお姉ちゃんは女の子だからか、いくぶんスマート。身近な素材でお菓子を作ったり、近所の仔ヤギたちに好物の草を食べさせたりと日々の暮らしを楽しんでいるようです。
 
那覇から車で30分足らずの自然豊かな南城市。そんな環境でのびのび暮らしている家族の風景を眺めていると、「ああ、やっぱり沖縄っていい場所だなー」って思います。
 
黒牛も自然の一部
 
自然だけではありません。「親切にしてもらったことは数え切れない」とお母さんは笑顔で語ってくれました。「子どもに対する眼差しがとってもあたたかい」という言葉通り、沖縄では保育園児からお爺ちゃんお婆ちゃんまでほとんど全員子ども好き。
 
ある日、郵便局に子連れで行ったときのこと。送り状を書き始めたら職員がカウンターから出てきてくれて、子どもを抱っこしてあやしてくれたそうです。自分の子どもでも他人の子どもでも、区別なくとにかく優しい。それが沖縄のスタンダード。そういう子どもに対する優しさも、自然とか気候といった沖縄の風土が育んできたものかもしれませんね。
 
浜辺で集めた素材で子どもたちが手作りしたキャンドル
 
そんな沖縄の魅力を、自然に寄り添う暮らし方や生き方を通じてこれからも紹介していきたいと思っています。このコラムでまたお会いしましょう!
 

沖縄CLIP編集部

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