沖縄観光情報:国境の島の歩き方、与那国でビーチコーミング

国境の島の歩き方、与那国でビーチコーミング

post : 2015.09.04 12:00

※この記事でご紹介している店舗は閉店いたしました。店舗情報の正確性については、沖縄CLIPが保証できるものではありません。


 
サーッ、ザブーン、シャワー…。
 
寄せては返す白い波。大人になった今となっては可愛く思える小さな波も、幼かったあの頃は、自分よりも大きく見えたあの夏の日。

 
夏休みの一番の楽しみは家族そろっての海水浴。砂浜に落ちている貝殻を拾っては耳に当て、「海の音」に聞きほれた経験は誰にでもあるでしょう。 どこから流れ着いたのかわからないヤシの実や、ふちが欠けてしまった空き瓶とか、漂流物を見つけては遊んでいたあの夏の日。多くの人にとって海の向こうは果てしなく遠い、想像を超えた夢の世界だったのではないでしょうか。

 
さて、大人にとっても遠い場所、日本最西端にある国境の島、与那国島。黒潮がぶつかる海の孤島というだけあって、パワフルで激烈な海流に洗われ続けたその結果、この島の周囲は文字通りの断崖絶壁。沖縄のほかの島とは明らかに違うその外観とは裏腹に、実際に訪れてみると、沖縄のほかの島と同様に、穏やかで心優しい人が住む島だということが明らかになりました。

 
そんな優しい島人(しまんちゅ)の一人が「ユキさんち」というカフェを営む素敵な女性。横浜で生まれ育った都会っ子の幸子(さちこ)さん。「住んでみたい街ベスト10」があるとしたら、たぶん入選するだろう湘南の街、葉山に住んでいた彼女。歩いて1分ほどのところには穏やかな浜辺があり、毎日のように愛犬を連れて行っては潮騒に耳を傾けて悦にいるという、羨ましい毎日を送っていたといいます。

 
縁あって与那国島に移り住んだ彼女はひょんなことから日本最西端の島の一番西にある久部良(くぶら)という集落で、おいしいカレーを出すカフェを営むことに。やがて、カフェの「ユキさん」という表の顔とは別の、もう一つの顔を持つことになるのです。




 
店の奥に所狭しと並べられた種、貝、浮き球。そしてプラスチックの人形たち。黒潮の島に流れ着く漂着物に出会ううちに、遠方から来た物言わぬ友にいつの間にか心惹かれるようになったという幸子さん。「日本漂着物学会」という興味をそそる学会の、会員になるのに時間はそれほどかからなかったのだとか。

 
陶芸、機織、人形や洋服づくり。手を動かしてものをつくるのが好きだったという彼女の周りには、移住前にはすでにたくさんのものがあふれていたそうです。心機一転だったのか、それはよくはわかりませんが、そんなユキさんが島に移り住んだとき、手にしていたのはバッグ一つだけだったといいます。

 
「家の中に飾るものがあったらいいなぁ」
 
漂着物を集め始めたきっかけは実にシンプル。それ以来、島のあちこちの海岸で漂着物を拾い集めるビーチコーミングを楽しむようになったのだとか。ビーチコーミングとは浜辺で貝殻やガラスの破片や流木など、気に入った漂着物を拾い集めること。普通に散歩するより楽しいですし、自然観察にもなったりします。拾ったものをそのままオブジェとして自宅に飾ったり、フォトフレームやオブジェをつくったり。コーミングの最中はもちろん、終わったあとも楽しめるせいか、日本でもビーチコーマーが増えているようです。

 
「おすすめのビーチはナーマ浜。季節的には台風の後か北風が強い冬場ですね」
 
陶磁器の破片や台湾では有名な「将軍牛乳」の空き瓶、アンパンマンのフィギアやコカコーラのノベルティ。波の荒い日が続いたあとに、この島に打ち上げられるいろんなものたちが見せる表情は実に様々。
 
「年によって漂着してくるものたちの顔ぶれが変わるんですよ」
 
ある年にはオリンピック関連のキャラクターグッズが大陸の方から多く流れてきたそうです。
 
「キューピー人形って国によって顔が微妙に違うんですよ」
 
なるほど、海はどの大陸ともつながっています。文化人類学をフィールドワークするには絶好の場所かもしれないですね。

 
漂着物が増えすぎてお店が手狭になったからと、これまでの収穫物を少しずつ本土に送っているそうで、すべての漂着物を見るという願いはあいにく叶いませんでしたが、「漂着物を眺めていると、世界のありさまがわかってくる」という真理にも似た言葉に出会えて、なんだか心がウキウキしてきました。

 
海底遺跡の探検に与那国馬の乗馬体験エトセトラ。与那国島の楽しみ方は数え切れないほどありますが、浜辺を歩いて漂着物を拾い集めるビーチコーミングを、「与那国島の歩き方」に加えてみたくなりました。

 
 
 
◎「ユキさんち」では日替わりカレーのほか、地元の旬の素材を使った生ジュースを楽しめます。夏のおすすめは地元の久部良集落で採れたスイカを使った「スイカ水」。スイカのナチュラルな甘さが、そよ風のように心地よい大人のフローズンでした。与那国にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
 
 
 
 
 
ユキさんち
住所/沖縄県八重山郡与那国町字与那国4022-315
電話/0980-87-3667
営業時間/11:00~(カレーがなくなり次第終了)
定休日/木曜・金曜
 
 
沖縄CLIPフォトライター 福田展也
 
 
 
 
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Information

沖縄県八重山郡与那国町字与那国4022-315