たおやかなもてなしと、島の風と、心地よい宿 【またたびや】

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初回投稿日:2017.04.23
 最終更新日:2024.04.12

たおやかなもてなしと、島の風と、心地よい宿 【またたびや】

 

 
宿 「またたびや」の客室
 
沖縄旅行の楽しみ方は人ぞれぞれ。旅先でどんなふうに時間を過ごすかは人によって様々だろう。ダイビング、集落散歩、文化体験、戦跡巡り、エトセトラ。どんな旅にしようかと、考えるだけでもワクワクしてくるから、旅はやめられない。
 
旅立ちの日まで、いや、飛行機が空港に到着するまで高ぶった気持ちは持続する。そして、旅が始まり、見ることやること新鮮で、日常を遠く彼方に置きざりにして、気持ちはただただ目の前の、リアルな沖縄に釘付けになる。
 
そのように甘美で初々しい旅の満足度に少なからぬ影響を与えるのが宿の良し悪し。多くの人にとって、食事と並んで滞在先は旅の満足を左右する重要な構成要素だろう。
 
宿 「またたびや」の客室
 
ダイニングバー
 
ダイニングバーの酒
 
もし、あなたが思い描いている旅が、できれば人から逃れたい、あるいは、日々のせわしなさからなるべく遠く離れたい、という気持ちを叶えるものだとしたら、そして、旅先が宮古島周辺だとしたら、とっておきの宿が一つある。
 
宮古島のほぼ中央部。「ツンフグ」という名の童話に出てきそうな小さな小さな集落の、サトウキビ畑に囲まれた小高い丘の上。2016年11月にオープンしたばかりの、ピカピカの宿だ。東京から移り住んだ渡辺隆之(たかゆき)さんと美幸(みゆき)さんが二人で切り盛りしている『またたびや』。白くて四角いシンプルな外観の二階建で、4つの部屋と居心地のいいダイニングバーがある。
 
宿 「またたびや」の客室
 
宿 「またたびや」の客室
 
宿 「またたびや」の客室のシャワー室
 
ゲストルームはツインルームが3室に、ダブルルームが1室。ツインは赤青黄、ダブルは緑とテーマカラーで内装が統一されている。木目がくっきり鮮やかな、浮造り加工が施された無垢材が、床に敷かれているので素足に心地よく、モザイクタイルが味わい深いバスルームからは、のどかなサトウキビ畑を見渡せる。
 
テーマカラーに合わせた125色の色鉛筆
 
「またたび」というキーワードでセレクトされた何冊かの本
 
ハンモックのある屋上
 
部屋の中には、「またたび」というキーワードでセレクトされた何冊かの本が置かれていたり、テーマカラーに合わせた125色の色鉛筆がウォールラックの上の方にさりげなく置かれていたりする。色鉛筆の一本一本には「ベランダのセキセイインコ」とか、「朝露に濡れる牧場」とか、「神に捧げた青銅器」とか、極めて詩的な色の名前が名付けられているだけでなく、「この色を好む人はささやかな希望を秘め、それが実現すると次の希望を持ちつづけます。周囲からほのぼのとした存在感を評価されています」、というように色占いが添えられている。
 
部屋の中にはテレビはない。その代わりにBluetooth対応のCDプレイヤーが置かれている。車がほとんど通らない静かな場所に宿があるので、窓を開け放てば鳥や虫が奏でる心地よい音楽が聞こえてくるし、ハンモックのある屋上からは星の瞬きに時間を忘れることができる。
 
近海で獲れたシビマグロのカルパッチョ、自家製鶏ハム、パスタなど
 
ハム&チーズのフレンチトースト、サラダ、スープにヨーグルートと季節のフルーツ
 
島の時間に身体と心をなじませるように、ゆったりとした旅がお好みの、そんなあなたぴったりな『またたびや』。もう一つのこの宿ならではの価値は、渡辺さん夫婦との会話と、美幸さんの手料理だ。
 
美幸さんが使うのは、できる限り島の素材。春を目の前に控えた季節には、近海で獲れたシビマグロのカルパッチョ、島で育った『みやこっこ牧場』の鶏を使った自家製鶏ハムを、自家菜園ハーブ添えで楽しめる。5月から6月にかけては、ドラゴンフルーツの蕾にありつけたりもするそうだ。前菜の次は島の野菜がふんだんの焼きたてのキッシュ、そして、メインはスペアリブ。それにパスタが続く。
 
連泊の場合、メニューは洋食と和食が日替わりで提供される。朝食は洋食だと、ハム&チーズのフレンチトースト、サラダ、スープにヨーグルートと季節のフルーツ。和食だと、ミヤコゼンマイが添えられた近海魚のソテー、島野菜のナムル、モズク、島どうふのサラダに宮古味噌のおみおつけなど。晩ごはんも朝ごはんも島の美味しいものを、おなかいっぱい味わえる。
 
ガジュマル
 
渡辺隆之(たかゆき)さんと美幸(みゆき)さん
 
「開業前に3年間宮古島に住んで、島のことをゆっくりと知って、いよいよ開業しようということで、探し始めて3ヶ月。ようやくこの場所に出会えたんです」。そう語るお二人に、ここに決めた理由を聞いてみた。
 
「集落からも離れているし、鳥が一日中さえずっているし、サトウキビ畑の中にポツンとある。何よりここなら、乱開発されることもないだろうから、今ある風景が、ずっと残るんじゃないかと思ったんです。それに、大きなガジュマルの木が決め手でした」。海が目の前に見えるわけではないけれど、車を使えば与那覇前浜ビーチへもわずか10数分で行ける。
 
ソムリエの資格を持つ隆之さんは、音楽の趣味もいいし、カーテンやウッドデッキや内装を手際よくこなす、頼り甲斐のある男性。こだわりがちょっと強くて、いい趣味をもっているのだけれど、それを人に押し付けるところがない。笑顔が素敵な美幸さんは、ポジティブで、朗らかで、会話を上手にコントロールしてくれる。
 
おふたりともバーテンダーの経験があるので、お酒に詳しいだけでなく、ゲストの要望に合わせて気の利いたカクテルを作ってくれる。もちろん、ノンアルコールのカクテルも。たとえば夕食の前に、屋上でハンモックに身を預け、グラス片手に夕陽を眺めてみるのもいいかもしれない。
 
そんな二人がもてなしてくれる『またたびや』は、文字通り、また旅に来たくなる宿だ。
 

またたびや

住所 /
沖縄県宮古島市川満800-37
電話 /
0980-76-4161
定休日 /
無休
サイト /
http://matatabi-ya.com

沖縄CLIP編集部

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