沖縄観光情報:光に惹かれてガラスの世界へ。オリジナルな色使いが印象的な屋我平尋さんの器たち【GlassStudio尋(沖縄市)】

光に惹かれてガラスの世界へ。オリジナルな色使いが印象的な屋我平尋さんの器たち【Glass Studio 尋(沖縄市)】

post : 2017.11.12 12:00


沖縄CLIPマルシェ

屋我平尋(やが・へいじん)さんが作るガラスの器
 
印象派のアーティストが好んで使った淡くて柔らかな色使い。空、海、森。大自然を思わせる、ゆらぎ感のある独特のタッチ。屋我平尋(やが・へいじん)さんが作るガラスの器は典型的な琉球ガラスのイメージとは少し違う。
 
屋我平尋(やが・へいじん)さんが作るガラスの器
 
「ビー玉を太陽にかざして、そこに映る世界の輝きに夢中になっていました」。屋我さんは少年だった頃から、光に惹かれてきたという。雨あがりのキラキラした風景、窓ガラスを透過したり、水たまりに反射する太陽光線。植物も大好きで、水やりをする度に葉っぱの上で丸まっている水滴が光を受けて輝くのを見て、今でもときめいたりする。「光と一番遊べるのがガラスだから」。自分が心を動かされる瞬間や世界が時々見せる美しさを、自分なりに表現できるのがガラス工芸なのだという。
 
屋我平尋(やが・へいじん)さんが作るガラスの器
 
光るものへの愛着からステンドグラスへの興味が芽生えたという屋我さんは、高校を卒業した後、グラフィックデザインを学びに東京の専門学校に進学した。アルバイトで舞台美術のデザインを始めるが、できあがってくる実物がデザインと大きくかけ離れていることに満足できず、自分でつくるようになったというほど、オリジナリティへのこだわりが強かった。

卒業後、しばらく舞台美術の仕事を続けた屋我さんに、ある時転機が訪れた。バイト仲間の家で目にしたティファニーのステンドグラスのランプが、ガラス工芸の世界への扉になったのだ。
 
ガラス器の制作中
 
「埃をかぶっていたせいもあって、なんだかなあと最初は思ったんですが、スイッチを入れてみたらびっくりでした。ガラスを通して現れた光の世界に圧倒されたんです」。それから、間もなく沖縄にUターンして、沖縄で琉球ガラスを見てまわった。

「海外で大量生産されて琉球ガラスとして売られていたものは、どれも原色が強すぎてね…。強烈な色は苦手なんです」。創られた沖縄らしさと自分の世界観との隔たりを実感した屋我さんは、いったんステンドグラスの会社に就職した。

その後、稲嶺盛吉さんとの出会いもあり、琉球ガラスの世界でやっていくことを決意。稲嶺さんの宙吹きガラス工房虹で9年間働いた後、独立をした。
 
ガラス工芸の原料
 
光に次いで屋我さんが大切にしているのは使いやすさ。「どれも見た感じがとてもいいし、ほしいんだけど、握りにくいからねぇ」。個展を訪れた年配の女性のひと言が忘れられず、直線的なシルエットから、緩やかな凹凸のある形に変更をした。

「仕上げはやっぱり難しくなったんですよ。『型を作ったら』と勧める人もいるんですが、工業製品みたいに同じ形になってしまうのは面白くないですからね」。一点一点微妙に違うという手仕事ならではの不均質さを、効率よりも大切にしているようだ。
 
屋我さんのガラス器
 
屋我さんのガラス器のもう一つの特徴は色へのこだわり。ガラス工芸の原料としてよく使われる色付きのカレットをそのまま使うのではなく、自分で作り出したオリジナルの色にこだわっている。

例えば、琉球王朝の三司官(行政の最高責任者)が身につけていた色をイメージした「スミレ」、飛行機から見おろす沖縄の海の色を表現した「ピーコックグリーン」、沖縄の森の基本色の一つで鮮やかな色を引き立てるシックな「褐返(かちかえし)」など、どれも重層的で奥行きのある趣が感じられる。

このような色や質感の独創的なセンスは、水彩画家など異業種の人たちとのコラボレーションを通じて培われたそうだ。
 
屋我さんのガラス器
 
こだわりと独自の視点から生み出される器たち。そこには、絵画や染織、陶芸などの細やかな色使いが求められる世界と通じる何かがある。

どちらかといえば夏の器という印象が強いガラスを、年間通じて使えるものにしたいと考えた屋我さんが、試行錯誤して完成させたのが雲シリーズだ。雲からインスピレーションを受けたという白がアクセントになっている。

「白が加わることで温かみが出てくるし、不透明感が陶器のような質感を引き出すのです」という屋我さんの言葉通り、クリア系のガラス器とは違った味わいが感じられる。
 
屋我さんのガラス器
 
2002年には、青のグラデーションと白が風に流れる雲を表現した「流れ雲」を、2004年には「雷雲」を、2006年には岩手を訪れた時、高い山から見おろした雲に着想を得た「雲海」を発表。2010年には、赤、橙、黄、緑などの鮮やかな色が印象的な「虹のかけら」がレパートリーに加わった。雲にかかる虹がちりばめられた色彩で表現されている。
 
ガラス器の制作中
 
「ガラスは動いている。ガラスは生きているんです。難しいのは同じ状態を再現することですね」。偶然できた色をどうやったら再現できるか。色だけではない。熱くなったり冷めたりとガラスの温度は一瞬で変化するので気が抜けない。「迷ったらだめ。後戻りはできませんから。ガラスの状態を見て即断しないといけないのです」。
 
屋我さんと直(なお)さん
 
以前は一人で何から何までやっていた屋我さんに、5年前に心強い後継者ができた。「前からガラスの世界に憧れはあったんですが、生活していくのが大変そうだから、半分諦めていたんです」。縁あってお嬢さんと結婚した直(なお)さんはそう振り返る。「実際に働いてみて、父に対してすごいという尊敬の気持ちを持つと同時に、不安感もいっぱいです。父には自分にはないものがたくさんあるし、その一つ一つは、超えるには大きすぎるんですよ」。代替わりをして常連さんに「変わったね」と言われないように、毎日精進しているという直さんの横で、「後何年かしたら継いでもらいます。そして、100年続く工房にしていきたいです」と、表情を崩しながらそう語った屋我さんは、とても幸せそうだった。
 
 
Glass Studio 尋
住所/沖縄県沖縄市知花5-24-20
電話/098-937-3445
営業時間/9:00~17:00(訪問希望の方は必ず事前に問い合わせしてください)
定休日/土曜日、日曜日、祝日
Webサイト/https://www.facebook.com/GlassStudioHiro/
 
沖縄CLIPフォトライター 福田展也

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Information

沖縄県沖縄市知花5-24-20