日帰りでは行かない、海と太陽と星の美しい島 ~多良間島~

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初回投稿日:2018.01.12
 最終更新日:2024.04.08

日帰りでは行かない、海と太陽と星の美しい島 ~多良間島~

宮古島(みやこじま)と石垣島(いしがきじま)のほぼ中間に位置する多良間島(たらまじま)。面積19.39k㎡のほぼ平らな楕円形の島に、約1,200人の島人が暮らしています。那覇(なは)から多良間島へのアクセスは、まず宮古島へ飛び宮古空港で飛行機を乗り継いで約20分。または、宮古島からフェリーで約2時間かけて渡ります。これまで取材で何度か訪れたことがありますが、アクセスがよいとは言い難い多良間島へ日帰りで訪れる観光客の方はごくごく稀です。そんな多良間島へ、2017年の夏、はじめてプライベートで2泊3日訪れました。

多良間島(たらまじま)へのフェリー

取材の際は飛行機で、飛んだら降りるという短い空旅。でも、今回はのんびりと船旅を選びました。宮古島と伊良部島(いらぶじま)を結ぶ伊良部大橋の下を通過するのははじめてだったので、どんなふうに見えるのかな、とちょっとドキドキ。ねずみ色の巨大な建造物の下をフェリーは意外とあっと言う間に通過。でも、大橋からフェリーを見ている人たちの姿はけっこうよく見え、表情までもわかりそうでした。

多良間島の海岸

ゆんたく(おしゃべり)に花を咲かせていると多良間島に入港。ソーダ色の海に思わず歓声が上がります。多良間には「トゥブリ」と呼ばれる海への出入口が約40ヶ所もあります。どのトゥブリで泳ごうか、夕陽はどこで眺めようか、朝陽はどこで拝もうか、なんて考えるのも楽しい悩みです。

集落の入口に動物の骨を挟んだ左縄

琉球弧には、「シマクサラシ」と呼ばれる集落レベルの悪疫払いの行事があります。地域差はありますが、疫病や悪霊などの災厄が集落へ侵入するを防ぐことが目的で、集落の入口に動物の骨を挟んだ左縄が結界をつくるように張り渡されます。シマクサラシという存在は知ってはいても、那覇や町中で見ることはありません。シマクサラシの実物を見たのは、10年ほど前に訪れた多良間だったと記憶しています。今回もシマクサラシを見掛けたので、「あぁ、ここは変わらないな」と、目まぐるしく世相が変わる現在も、変わらず伝統が受け継がれている島のようすに安堵しました。

豊年祭の芸能が奉納場所

多良間島といえば、「八月踊り」、「スツウプナカ」、「多良間シュンカニ」が思い浮かびます。「八月踊り」は国の重要無形民俗文化財に指定されている豊年祭で、一年でもっとも多くの方が来島する多良間を代表する祭事です。旧暦8月8日から3日間かけて朝から晩までさまざまな芸能が奉納されるのですが、島らしいアットホームな雰囲気も魅力です。

「スツウプナカ」は「節祭り」のことで、豊作に感謝し来年の実りを祈願する伝統祭祀。「ヤッカヤッカ」という囃子とともに神酒を回し飲みする様子がTVのニュースで流れます。こちらはまだ拝見したことがないので、ぜひ伺ってみたいのが今後の目標。「多良間シュンカニ」は前泊港(まえどまりこう)の近くに歌碑がある、多良間島を代表する悲哀の別れ唄。「『多良間シュンカニ』が一番好き」と言ってはオトーリでいつも「多良間シュンカニ」を唄う宮古人もいるほど。島外からも人気の高い素晴らしいシマウタです。

海の眺め

取材で訪れると、対象となる取材だけで手一杯で終わることがほとんどです。何度か訪れてはいても、多良間島で泳いだこともなければ、海に沈む夕陽を眺めたこともありません。今回のプライベートな旅は、多良間の海で泳ぐこと、水平線に落ちる夕陽を眺めることが最大の目的。でも、せっかくだからと、多良間島村役場が発行している『多良間村ガイドマップ』や『多良間島の名木 史跡をめぐる旅』という小さな冊子を改めて再読。すると、史跡を含めて真剣に廻るとなると、今回だけではすべては廻れないことが発覚。小さな島だけれど、意外とたくさん史跡があるんだ、と驚きました。

陸から近いところにサンゴ

欲張らずに初志貫徹。海と夕陽をメインに多良間を楽しむことにして、2日とも違うトゥブリでシュノーケリングを楽しみました。沖縄県内はどこもかしこも、白化現象でサンゴがかなりのダメージを受けており、とくに今年はそれが顕著に感じられます。それでも、「陸から近いところにこんなにサンゴが?!」と驚くポイントもありました。

薄紫色で細長くて、龍みたいにも見える小さな生き物

海が大好きで、サバニはもちろん、シュノーケリングもけっこう潜っている方だと自負しています。それでも、今回も初めて目にする生き物に出逢いました。薄紫色で細長くて、龍みたいにも見える小さな生き物の名前はいまでもわかりません。海のなかはいつも未知との遭遇です。

水平線に沈む夕陽

以前、八重山(やえやま)のある島人が、「島が海に囲まれているからと言っても、海から昇る朝陽を見たこともないし、水平線に沈む夕陽も見たことはないよ。朝陽は石垣の山から昇るし、夕陽は西表の山に沈むのだから」と言っていました。「海に囲まれていても島の立地によって全然違うんだな」と考えさせられたことが印象に残っています。それからというもの、「この島はどこから朝陽が昇って、夕陽はどこに沈むのだろう」なんてことを思うようになりました。多良間島は、間違いなく水平線に夕陽が沈み、海から朝陽が昇るだろうと確信。そして、今回は素晴らしい夕景が眺められてとてもラッキーでした。これほど感動的な夕陽をみたのは数年振りでした。

夕陽

3軒の居酒屋さんがある多良間島の夜。一日目は、居酒屋さんがお休みだったり満席だったりしてお店には入れませんでした。スーパーがギリギリ営業している時間帯でしたので、食材を買い込んで宿で自炊。危うく夕食抜きになりそうでした。二日目の夜は、以前取材でお世話になった方たちとオトーリで乾杯。「多良間島は海と太陽の島ですね」と件の話をすると、「それと、星の島ですよ」と島人。それも間違いないかも。次回は星をじっくり眺めてみよう。静かな島の漆黒の夜に、唄と三線の音色が溶けていきました。

水平線から昇る朝陽

早起きして、水平線から昇る朝陽を拝みに出掛けました。途中、真っ暗な道路を歩くヤシガニに遭遇。ヤシガニは見た目はバルタン星人みたいですが、食すると美味なことで知られています。多良間島はまだまだ手付かずで、豊かな自然に恵まれている一面のあらわれでした。

日帰り観光客の方は皆無に等しい多良間島。8月夏まっさかりの滞在3日間のうち、滞在されているであろう観光客の方たちは数えられるほどしか見掛けませんでした。プライベートで訪れた多良間島は、海と太陽と星の美しい島、喧騒とは無縁の離島らしい、本当にのんびりとした素朴な島だなぁと改めて島の魅力を知り得ました。また静かな島でのんびりしたくなったら多良間島へ行こう。静かな離島らしい島を訪れたい方は、ぜひどうぞ多良間島へ。

沖縄CLIP編集部

安積 美加(あさか みか)

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