沖縄観光情報:沖縄民謡界の至宝・大城美佐子さんの唄声に酔いしれる民謡クラブ「島思い(しまうむい)」(那覇)

沖縄民謡界の至宝・大城美佐子さんの唄声に酔いしれる民謡クラブ「島思い(しまうむい)」(那覇)

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post : 2019.12.25 18:00

着物姿の彼女がおもむろにステージに立つと、店内は水を打ったように静まり返りました。客席にわずかな緊張感と大きな期待感が漂うなか、本紫の縦縞と麻の葉文様の着物をつけた彼女は、三線(さんしん)のチンダミ(調弦)をはじめました。皆が彼女を待ちわび、「どんなライブがはじまるのだろう」とステージに耳目が集まります。


大城美佐子(おおしろ・みさこ)

凛とした彼女が三線をテンとつま弾いて唄いはじめると、その場の空気が一変。語りかけるような唄声に誰もが惹きつけられ、彼女を中心に心地よい沖縄民謡の世界が静かに広がりはじめました。

彼女の名は、大城美佐子(おおしろ・みさこ)。沖縄民謡界のレジェンド、女王、重鎮、さまざまな形容詞で称賛される芸歴50年を超える沖縄民謡界至宝の唄者(うたしゃ)です。


大城美佐子(おおしろ・みさこ)

那覇市東町(ひがしまち)、国道58号線から一本入ったビルの地下1階にある「島思い(しまうむい)」は、民謡歌手・大城美佐子さんが営む、那覇でもっとも長く続く老舗の民謡クラブです。沖縄県内はもとより全国各地、海外からも老若男女が集う「島思い」、来店客の100%は美佐子さん目当てと言っても過言ではありません。

三線一本で全国各地を渡り歩いてきた性分はいまも変わらず、鳥のように自由に飛びまわり唄い続ける美佐子さんは1936年生まれ、現在83歳。店外ライブで不在の場合を除いては夜毎お店に立ち、自ら三線を弾いて唄う唄者としては、おそらく最高齢でしょう。


大城美佐子(おおしろ・みさこ)

今年23年目を迎える店全体に、「価格もなるべく高くせず、安心してくつろげるお店でありたいですね」と言って気を配られる美佐子さん。足跡をたどると、「島思い」の前身である「片思い(かたうむい)」はさらに長く営まれていました。


大城美佐子(おおしろ・みさこ)

沖縄民謡界に多大な功績を残された故・知名定繁(ちな・ていはん)氏に弟子入りした美佐子さんは1962年、定繁氏が手掛けた「片思い」でデビュー。伸びやかな高音は「イーチュグイ(絹糸の声)」と称され大評判となりました。デビュー後すぐに民謡クラブ「片思い」を始められると、転々と場所を変えつつ「片思い」を切り盛りされてきました。30年あまり続けられた「片思い」から、「島思い」へと屋号を変えられたのは1996年、ここ東町に移ってからのことでした。


大城美佐子(おおしろ・みさこ)

「定繁先生が最後につくられた『島想い』(島想い節)を、これはあんたのウタだよ、と言ってくださったんです。先生が亡くなったこともあって、ここを最後のお店にしようと思って屋号を『島思い』にしたんですよ」と美佐子さん。ぽつりぽつりと静かに語られる言葉の端々に、人知れぬ恩師への深い想いと、経営者としての決意が秘められているように感じました。


美佐子さんのステージ

美佐子さんのステージがはじまると、写真や動画を撮られるお客様がたくさんいらっしゃいます。そのなかでも、目を閉じ指で拍子を取りながら耳を傾ける初老の男性や、恍惚とした表情で聴き入る女性の姿が印象的でした。


「島思い(しまうむい)」の店内

各々の愉しみ方でどっぷりと美佐子さんの唄三線、沖縄民謡の世界に酔いしれることができるのは、「島思い」の醍醐味でしょう。


「島思い(しまうむい)」

ときには、飛び入りのお客様同士で面白可笑しい替え歌合戦が始まりどっと笑いが起きるなど、聴くだけではなく、お客様もステージに立って三線を弾いて唄って愉しむ姿があるのも民謡クラブならではです。


美佐子さんのステージ

しっとりした聴かせるウタから、三線のリズムが変わり、アップテンポの明るいカチャーシーがはじまりました。すると、すぐさま立ち上がった男性が「沖縄に来たら踊らないと!」と言って、次々と座っているお客様の手を取って「いっしょに踊ろう」と誘い出します。


「島思い(しまうむい)」の店内

「お客様が踊ってくれたら嬉しいですよ」と話されていた美佐子さんは、お客様が次々と引っ張り出されて踊るようすを笑顔でやさしく見守ります。


「島思い(しまうむい)」の店内

地元の常連さんパワーで店内は一気にヒートアップ、民謡クラブ「島思い」は最高潮へと盛り上がっていきました。


美佐子さん

「美佐子さんにとってウタとは何でしょうか?」と尋ねてみると、「そうねぇ。結局、一生をウタにかけました。ウタしかないんだから。わたしには」と愛らしい笑みを浮かべました。

「沖縄の仮名遣いを生きている間に教えないと、そう思って研究所を開いて教えています。いまのうちに仮名遣いを直しておけば、この人たちが次に繋げてくれるでしょうから」と、次世代との架け橋としての役割を果たすべく、お弟子さんたちのお稽古にも余念がありません。

真摯にウタに向き合うことに人生を費やしてきた美佐子さんだから、屈託のない少女のように微笑むことができるのかもしれません。


「島思い(しまうむい)」の店内

「ウタはこころ」、「ウタは語り」という美佐子さんのウタを聴き、ともに飲み語らっていると、沖縄のおおきな魂のひとつに触れたような気持ちになります。

多くの民謡ファンを魅了してやまない美佐子さん、計り知れない魅力はどこからくるのか。百聞は一見にしかず。「島思い」で美佐子さんにお会いしてみれば、きっとその魅力を感じ取っていただけるはずです。それが、唄者・大城美佐子なのだから。


大城美佐子の店 島思い
住所/沖縄県那覇市東町4-6 東壱番館B1F
営業時間/20:00~2:00
電話/080-8376-4348
定休日/火、水
HP/https://www.shimaumui.net/


沖縄CLIPフォトライター 安積美加 


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Information

沖縄県那覇市東町4-6 東壱番館B1F