令和の木曳式 <後編> 600人で御材木を首里城へ奉納「木遣行列」【PR】
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post : 2022.11.18 20:00
2022年10月29日に幕を開けた一大イベント「令和首里城復興イベント いざ首里城 令和の木曳式(こびきしき)」。
11月3日までの6日間に渡りさまざまな関連イベントが開催されました。平成元年(1989年)から33年振りの開催となる木曳式のようすを<前編・後編>でお届けしております。
<後編>は、11月3日に開催されました木曳式のメイン・イベント「木遣(きやり)行列」のようすを沖縄県内外の【みなさんの声】とともにお届けいたします。
在りし日の首里城【撮影】2017年2月27日
令和の「木遣行列」 ~ 総勢600人が綾門大道をパレード
「木遣行列」は、御材木(おざいもく)を首里城内へ運び奉納し、首里城正殿復元工事の安全を祈願する祭事です。
スタートは2022年11月3日(木・祝)午前9時。那覇市首里の綾門大道(あやじょううふみち)の旧中山門跡を出発し、首里城へ向かって約350メートルの距離を総勢約600名が練り歩きます。
「奉祝パレード」「木遣行列」「旗頭行列」の3部構成となっており、行列には地元首里地域、各協力団体、首里城復興応援事業者、協賛企業、そして沖縄県内外からの一般参加者約50名が加わります。
※「木遣」とは … 「木を運ぶ(=遣り渡す)」の意。神社造営時の御神木など建築用木材を大勢で運ぶときに使われる言葉。木遣歌を略して指すこともあります。
一大イベントスタート前の待機場は緊張と期待が充満!
沖縄本島南部はメイン・イベントの前日まで、御材木の屋外展示会が中止になるほどの大雨に見舞われました。
日付が変わりイベント当日、那覇の日の出は午前6時39分、白い雲が多いものの空が明るい朝を迎えました。
参加者は午前6時30分に那覇市首里にある首里高校に集合。朝早くから体育館で着付け、髪結い、お化粧と、琉球王国時代へタイムスリップのご準備です。
午前7時20分、首里高校へ行ってみると、体育館から準備が整った方々が参加者待機場所へ移動されているところでした。
待機場には色とりどりの衣装を身に纏った人たちが続々と現れました。頭上に赤や青のハチマキを被った男性、ウチナーカラジ(琉球独特の女性の髪型)を結った女性、待機場は琉球王国が舞台の時代劇さながらです。
待機場を走り回るスタッフ、踊りの確認に余念がない舞手さん、スタッフの説明に真剣に耳を傾ける人たち、声合わせをされる女性、緊張が手にとるようにわかる方、リラックして歓談を楽しむ人、髪を直してもらう女性・・・。
待機場は、これからはじまる令和の一大イベントへの緊張と期待が入り混じり、自然とこちらも気持ちが高まります。
それでは、スタートを待たれている【みなさんのお気持ち】をどうぞ!
【首里地域/総監督役】宮良吉雄さん(沖縄県那覇市首里在住)
「ワクワクしています。ちむどんどん!」
国頭村から首里城へ御材木を運ばれた琉球通運株式会社のみなさん
【首里城復興応援事業者/舵取役と鳶口役】琉球通運株式会社のみなさん
「ヤンバルから御材木を運んできました! 今日は木遣行列に参加できてとても光栄です。嬉しいです!」
京都府から一般参加の東浩一さん・智子さんご夫妻
【一般参加/曳手役】東(ひがし)浩一さん・智子さんご夫妻(京都府在住)
「内地とぜんぜん違う文化に魅了されて年2回ほど沖縄に来ています。沖縄の文化に触れてみたい、歴史に残る瞬間に立ち会いたいと思い応募しました。一生に一度の経験です。めちゃくちゃ緊張しています」
フォーモスト ブルーシール株式会社 会長・荒木定明さん
【首里城復興応援事業者】フォーモスト ブルーシール株式会社 会長・荒木定明さん
「ブルーシールは沖縄に育てていただいた企業です。沖縄の象徴である首里城復興のために皆さんが頑張っておられるので、少しでもお役に立てたら、との想いから首里城復興の応援事業に手をあげました。
日頃から沖縄の歴史・文化に関する本を読んでいますので、琉球王国を彷彿させる衣装を見ているだけでも楽しいですね。琉装されている方がちょっと羨ましいです(笑)。
雨でブルーシール牧港本店での御材木展示会が中止になったことは残念ですが、今日はお天気に恵まれ、とにかく嬉しいです。みなさんと一緒に楽しめたら、と思います」
第一部「奉祝パレード」~ 首里のミルク様と獅子が世果報を招く華やかなパレード
午前9時、令和首里城復興イベント実行委員会委員長・玉城デニー沖縄県知事が打ち鳴らす銅鑼を合図に木遣行列が出発しました。
綾門大道の旧中山門跡から首里城を目指して、横断幕を先頭に一行がゆっくりと歩き始めます。
青空が広がりはじめ、秋の太陽が日向と木陰をつくる沿道には、スマホやカメラを手にした老若男女が一行を見守ります。
首里高等学校吹奏楽部のみなさんが行進していると、「首里高がんばってよー!」と大きな声援を送る男性が。地元愛が素敵です。
沖縄県内各地の祭祀でお会いするミルク(弥勒)様は、豊穣の世、満ち足りた理想郷とされる弥勒世果報(ミルクユガフー)を招く神様です。
首里赤田町に300年以上前から伝わる「赤田のみるく」様は、路次楽(ろじがく)を率いてご登場。
路次楽は中国伝来の宮廷音楽で、首里城での儀式や国王の行列に必ず行進吹奏され、江戸上りの際にも吹奏されたていた道中楽です。赤田のみるく様が路次楽を連れているのは首里城下ならではなのかもしれません。
生後3ヶ月の采喜(とうき)くんが赤田のみるく様にカリーを付けていただきまた。嬉しいサプライズにお母さんもにっこり感激。
一行が目指す首里城前に位置する「首里城前」交差点にはスペースが設けられ、各隊の演舞が繰り広げられました。
赤田のみるく様に続いては、首里汀良(てら)町獅子舞保存会による首里汀良町の獅子が勇猛に舞います。空手の型に通じる荒々しく激しい舞が特徴。沖縄最古と称される獅子が大きく仁王立ちとなり睨みを効かせる姿には風格が漂っていました。
首里振興会婦人部によって、平成4年の首里城復元記念に創作された「首里城音頭」が披露されました。艶やかな紅型が青空によく映えます。「ふだん耳にする沖縄の曲調とは異なっていて、沖縄っぽくないところが新鮮で印象に残りました」とおっしゃるウチナーンチュもいらっしゃいました。
阿波連本流啓扇会(けいせんかい)による創作舞踊「国頭(くんじゃん)サバクイ」が披露されました。「国頭サバクイ」は沖縄の木遣歌の代表格。各所多様な振付がありますが、材木を運ぶ際の綱を曳く所作は必ずと言ってよいほど取り入れられています。「もう二度と火災があってはならいと思いながら綱を引っ張りました」と舞手の女性。首里城復興への想いを込めて快活に踊られました。
第二部「木遣行列」~ 140名の厳かな行列が御材木を首里城へ奉納
琉球王国を偲ばせる木遣行列の一行が見えはじめました。
一行は火矢、若衆、木遣幡、筑佐事など15の役割があり、それぞれの役割の衣装に身を包んだ約140名が御材木とともに首里城を目指してゆっくりと練り歩きます。
ここからは【木遣行列を終えた後のみなさんの声】を交えながらお届けいたします。
先頭の赤ハチマキに黒朝衣は「火矢」。後方の「若衆」は元服前の宮廷に仕える少年、華やかな衣装が眼を惹きます。
【一般参加/曳手役】浦添さとみさん(沖縄県うるま市在住)
「沖縄のシンボルである首里城正殿を造る大事な儀式に一般応募が出来る事をSNSで知り即申し込みしました。人生で二度と無い経験! 記憶と記録に残る名誉な事だと思います。天候が気になりましたがイベントが始まると見事に晴天! 県民の想いが届いた! と感じました」
旗を掲げる「木遣幡」は平成の木遣行列から取り入れられました。首里城が災害に遭わないよう祈りを込めて掲げています。後方には、警官・検察にあたる「筑佐事(ちくさじ)」が続きます。
【首里城復興応援事業者】株式会社スペース 沖縄事務所開発担当チーフ・西岡一期(かずき)さん
「沖縄の伝統的なパレードに参加できて光栄です。髭を生やされていたり髪を結ったり、本格的な出で立ちにみなさんの本気度が伝わってきました。御材木があれだけ大きく太いとは思いませんでした。完成が楽しみです。復興まで地域密着企業として首里城の復興応援もがんばっていきたいです」
御材木を曳く曳手を励ます法螺貝・太鼓・銅鑼は、声を揃え力をひとつに合わせる木遣の頼もしい応援団です。
【一般参加/曳手役】東(ひがし)浩一さん・智子さんご夫妻(京都府在住)
「民族衣装を着付けて頂き身が引き締まりました。列を崩さないように歩調を合わせて歩くことに緊張して、掛け声が小さくなってしまいました。記念に残る式に県外から参加させて頂き大変感謝しています」
御材木を曳く役割の「曳手人衆」は動きやすいよう沖縄の伝統的な着物「バサー」をまくりあげ、「ヨイシー! ヨイシー!」と掛け声をあげて行進。扮するは沖縄県内外からの一般参加のみなさんです。
【一般参加/曳手役】早海(はやみ)さん(沖縄県那覇市在住)
「想像していたよりもずっと厳かな行列でしたが、沿道の方々の暖かな手拍子もあり楽しく歩かせて頂きました。当時の人はあの重い御材木を曳き歩いたと思うと、国を挙げた一大イベントだったんだろうなと感慨深かったです。
終了後、装束を脱いだ時に一気に汗が噴き出しました。歩いている最中は汗は全く流れ落ちず、涼しさすら感じていたので驚きました。昔ながらの服装は気候や生活に合わせて理にかなっているのだと実感しました。先人の知恵から得た学びは、意識して後世に伝えていかないと消えてしまうのだ、儚くて尊いものなのだと気付かされました」
曳手人衆に続き、御材木の登場です。沿道からの拍手がひときわ大きくなります。興奮の熱気がワサワサと湧き上がりました。
令和の御材木は、国内外から寄せられた寄附金で準備されました。沖縄本島最北端の国頭(くにがみ)村で切り出された長さ9メートル、重さ4トン、樹齢98歳の御材木は、首里城正殿の国王が座る玉座「御差床(うさすか)」上部の小屋丸太梁に使用される予定です。
御材木が首里城に到着すると、首里クェーナ保存会により「納めの儀」が斎行されました。クェーナは沖縄の古謡のひとつで、祈りを込めて女性たちが謡います。
旧中山門跡で斎行された「出発の儀」では御材木を清め、首里城完成と災厄除けの祈りを捧げました。
「納めの儀」では祝福と慶びを謡います。女性たちが声を合わせ心を込めて謡うクェーナに、会場は静かに聴き入りました。
第三部「旗頭行列」~ 首里地区13旗頭が躍動するガーエー
締め括りは、首里地区青年会の13旗頭による奉祝演舞です。綾門大道の350メートルに13旗が立ち並び、一斉群舞ガーエー(我栄)がはじまりました。空高く、力いっぱい大きな旗頭を掲げて舞い踊らせます。先程までの厳かな雰囲気とは一転、旗持を応援する掛け声、太鼓に鉦子の音、活気あふれるガーエーが繰り広げられました。
【観客】小学5年生のSくん(沖縄県那覇市在住)
「御材木は大きい。デカかった! 旗頭がカッコよかった。新しい旗頭も見れて楽しかった」
【旗頭】男性(沖縄県那覇市首里在住)
「旗頭はみなさんに元気を与えていると思いますが、沿道の声援や応援をいただいて、僕たちもみなさんから元気をもらっています」
【観客】Kさん(沖縄県那覇市在住)
「木曳式を観るのは2度目です。平成はとても華やかでしたが、今回は厳かな雰囲気でしたね。思ったより大きな行列で、琉装が見れてよかったです。
人混みが苦手な夫はめったに祭りに行かないのですが、そんな夫が『これは見ないといけない』と言って来て、『来てよかった』と言っていました。
沖縄のひとはみんなお祭り好きです。おかげでいろんな人にひさびさに再会できました。お祭りは元気がもらえますね。来てよかったです!」
祈りと慶びが体現された「令和の木曳式」
国頭から那覇までの「木曳パレード」で、たくさんの人々と御材木「オキナワウラジロガシ」が触れ合うようすを見つめてきました。この日、「木遣行列」を経て、首里城に奉納された御材木。
ヤンバルの山中に聳(そび)えていた孤高のカシは、一本の材木から、首里城正殿を支える御材木へと、神々しさを纏い“真の御材木”へと昇華したように思えました。
それは、「木曳式」を通して人々の切なるねがい、想いが、御材木に宿った、と感じたからかもしれません。
華やかな「奉祝パレード」ではじまり、厳かな「木遣行列」が御材木を奉納し、締め括りは盛大な「旗頭行列」。
「令和の木曳式」は、静の“祈り”と動の“慶び”が見事に体現された祭事でした。
一生に一度あるかないかの一大イベントに集まった観客のみなさんは、琉球王国時代を彷彿させる行列に見惚れ、御材木の大きさに驚き、盛大なガーエーから元気をもらい、「来てよかった!」と笑顔で会場をあとにされました。
祭りはみんなを元気にする。
気持ちをひとつにする。
「令和の木曳式」は紛れもなく、参加者も観客も携わったみなさんの目に、こころに残る祭事のひとつとなりました。
6日間に渡る木曳式から起工式を経て2022年11月3日、首里城正殿が着工。2026年秋の完成を目指します。
沖縄CLIPフォトライター 安積美加
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