連載/島の恵み、島の味 その8麦①

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初回投稿日:2014.05.21
 最終更新日:2024.03.27

連載/島の恵み、島の味 その8麦①

沖縄県北部に位置する八重岳(やえだけ)。

常夏のイメージが強い沖縄。ここ八重岳は標高450メートル以上あり、

豊かな自然と冷涼な気候のおかげで、森の恵みがたくさん。

琉球薔薇いちごがかわいらしく出迎えてくれた先には、一面に広がる麦畑。


琉球薔薇いちご

 

一面に広がる麦畑

 

移住して間もない頃、沖縄で小麦が栽培されていることを知りました。

産地として耳にしたことがなかったので、驚いた記憶があります。

伊江島では沖縄の在来種「江島神力(えじまじんりき)」の

再生プロジェクトとして小麦を通じた島おこしが行われ、

恩納村やうるま市でも、小麦栽培を始める農家のお話を耳にするようになりました。

 

そんな小麦事情を追っていくうちに、山の上のパン屋さんと出会うことになり、

素敵な取り組みをうかがいました。

 

今日は、その山の上で2010年から始まったある小麦プロジェクトのおはなしです。

山の上にオープンする「八重岳ベーカリー」は1977年から続く老舗のパン屋。

 

八重岳ベーカリーの作るパン


八重岳ベーカリー

 

八重岳ベーカリーの作るパンは『一物全体』(いちぶつぜんたい:食材の丸ごと全てが、

一つのバランスを保っている)の考えから、精白した小麦ではなく、

小麦の全体(全粒粉とよばれる、ふすま、胚芽が含まれた小麦粉)を使ってパンを作っています。

 

『地産地消』という言葉のもとには、地元で採れた食材を食べることが

医食同源につながるという思想からきているとか。

 

心も体も健康的に過ごせるよう小麦全体を使って丁寧に作られたパンは「黒パン」と呼ばれ、

栄養豊かで深い味わいが特徴です。

 

黄金色の小麦畑

 

店主の小原さんが、旅先で出会った黄金色の小麦畑。

いつか自分たちの暮らす八重岳で見てみたい、という想いから

試行錯誤で小麦栽培のプロジェクトが始まりました。


小麦畑

 

毎年3月のなかごろから、美しい緑色の穂をつけ、

4月のおわりから5月にかけて黄金色に染めていきます。

 

黄金色の小麦

 

小麦もそれぞれ違った表情をみせています。

シュッとした澄まし顔、ぷっくりとしたかわいらしい顔など、

まるで、一粒一粒に魂があるのではないかと思わせます。

 

「みんな違った顔してとっても可愛いでしょう」

 

と微笑みながら小麦を見つめる小原さんの奥様祐子さん。

 

「小麦畑の敷地は約2000坪にまで広がりました。たくさんの小麦が元気に育っていますが、

収穫して粉にしてみると、ほんの僅かの量なんです。とうてい、

収穫した小麦だけで全てのパンを作ることはできません。でも、自分たちで栽培して、

脱穀や小麦づくりの工程をやることに意味があると思っています」

 

そう語る祐子さんの奥に広がる小麦畑を再び見ると、農家さんたちの並々ならぬ努力と、

小麦への想いがひしひしと伝わってきます。


緑色の小麦

 

八重岳の豊かな自然と、小麦力、そして栽培をする人たちの愛で育くまれた小麦を、

みんなで丁寧に刈り取っていきます。

 

小麦の刈り取り

 

刈り取った小麦は作業場へ運ばれ、手際よく脱穀していきます。

息の合った作業は粛々と進められていきます。

 

脱穀

 

脱穀した小麦は、ふすまや胚芽ごと製粉していきます。

小麦プロジェクトが始まってから、4年後、

ようやく栽培した麦でパンを作り出荷できるようになりました。

酵母は八重岳生まれのシークヮーサーで作った天然酵母。


天然酵母

 

さて、愛情込めて育てられた麦たちがどんなパンになっていくのかは、また次のおはなし。(続く)

 

八重岳ベーカリー

住所 /
沖縄県国頭郡本部町字伊豆味1254
営業時間 /
10:00〜17:00
定休日 /
土曜日
電話 /
0980-47-5642
HP /
http://yaedake.com
Facebook /
ページ/https://www.facebook.com/yaedakefarm

monobox(河野哲昌・こずえ)

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