八重山独特のお盆の行事、アンガマ

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歴史文化

初回投稿日:2014.08.19
 最終更新日:2024.03.27

八重山独特のお盆の行事、アンガマ

お盆の日の夕方、どこからともなく聞こえてくる、

太鼓、三線となにやら唄っている声、そして甲高い「ホーイホイ」という声…。

 

外に出てみると、深いしわのあるお面をつけたふたりを先頭に、

浴衣に身を包み、顔もしっかりと包み隠した集団が唄いながら歩いてきます。

 

八重山だけに伝わる旧盆の行事、アンガマのご一行です。

 

ついていってみると、民家に集団全員が上がりこんでいきます。

 

お面をつけたふたりは、ウシュマイとンミーという

あの世からお盆で帰ってきたおじいちゃんとおばあちゃん。

花笠をかぶった集団は、ファーマーと呼ばれるふたりの子や孫たちです。

 

お盆の日の夜、招待された家々をまわり、

仏壇の前で唄い踊り、賑やかに先祖供養をします。

 

旧暦の7月13日~15日の旧盆は、今年は8月8日~10日。

今年も各地で、毎晩賑やかにアンガマが繰り広げられました。


お供え物


 

仏壇に手を合わせた後は、ニンブジャー(念仏踊り)を唄い踊り、

ウシュマイとンミーが珍問答を繰り広げ、

ファーマーたちは八重山舞踊を踊ってみせます。



 

左がウシュマイ(おじいちゃん)、右がンミー(おばあちゃん)。

 

家の外から、「ウシュマーイ! おじいちゃーん!」と呼ぶ声が聞こえきます。

何度か呼ばれてやっと、「ノーリャ(なにか)?」とけだるそうに立ち上がるウシュマイ。


 

あの世のことや、様々なことを尋ねられます。

それにウシュマイとンミーは、

ひとひねりしたおもしろおかしい回答をしなくてはなりません。

 

「ふたりはどこでデートしていたの?」と子どもたちから質問がでると、

「恥ずかしい…。あやぱにモールから、真栄里のほう、

離島もいっぱい行ったよ!」と答えていました。

出会いは、「井戸で洗濯をしていたンミーに、

とてもかわいい女性だなと思って声をかけた」そうです。


 

ウシュマイに「ウクルピー(送り日)が終わったら一緒に帰ろう」

と言われた子どもは「やだ!!」と本気で拒んでいました(笑)。

 

ウシュマイとンミーは裏声で話し、会話は石垣方言。

でも、雰囲気で伝わってくるし、意味がわからなくてもやりとりがおもしろいのです。


 

最後はそのお家の人たちも一緒に

モーヤー(カチャーシー)をしておひらきです。

 

一行は、また次の家へ列をなして移動します。

 

アンガマを行っているのは、各地域の青年会のみなさん。

石垣島内では7つの青年会がそれぞれの地域内を中心に

お盆の3日間、1日あたり4~7軒ほどまわっています。

 

そして、それぞれの青年会によって特徴があっておもしろいのです。

見くらべてみるのもおすすめ。

 

石垣島以外でも、西表島や黒島でアンガマが行われています。


 

今回紹介したのは、石垣の登野城青年会のアンガマ。

 

方言をすらすらと操っていますが、

最近では、地元の人でも、方言がわかるのは年配の方々だけになってきています。

アンガマで面をつけられるのは、

高校生の頃から青年会に参加し、一生懸命方言を学んできた人たち。

 

ファーマーの中にはたくさんの高校生も参加しています。

仕事や学校の後、毎晩集まって、踊りの練習をしてきました。

 

アンガマは、観光の方でも、民家のお庭におじゃまして見学できます。

 

そのほかにもホテルの中庭や

飲食店の駐車場などで行われることもあります。

 

毎年タイムスケジュールが、お盆迎え日の八重山毎日新聞に一覧で掲載されます。

世帯主のお名前、そして住所までしっかりと書いてあるので、

初めてみたときはびっくりしました。

 

八重山では、アンガマのほかにも

夜通し家々を巡って唄って踊る小浜島や、

ムシャーマという島最大の行事を行う波照間島のように

地域によって違った、たくさんの先祖供養があります。

 

 

【波照間島 ムシャーマ】ミルク神を先頭にした行列、ミチサネ。

 

そして、お盆送りの日が終わった翌日の夜は、

邪気払いや地域住民の無病息災を願った、

獅子舞などを行うイタシキバラという行事が行われる地域もあります。

 

しっとりとしたお盆を過ごしてきた私は、

アンガマを初めてみた時は衝撃を受けましたが、

先祖をとても賑やかに迎え入れる島の伝統を、とてもうらやましく思いました。

 

2015年の旧盆は、8月26日~28日です。

ユニークな独特のお盆をぜひ見にきてくださいね!

 

笹本 真純

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