陶芸家・安里貴美枝さん【前編】

Reading Material

歴史文化

初回投稿日:2021.06.24
 最終更新日:2024.03.27

陶芸家・安里貴美枝さん【前編】

陶芸家・安里貴美枝さん

 

陶芸家の安里貴美枝(あさときみえ)さんに

初めてお会いしたとき、その温かさと気さくさ、

にこやかな笑顔で周りを包みこむ雰囲気に、

おひさまのような人だと思いました。

 

その手から生まれる器も、やっぱり大らかで美しくて。

県内外にファンをもつ、唐草(からくさ)模様の器に込める想いを聞いてきました。


陶芸家・安里貴美枝さん

眞正陶房のショップ風景

 

貴美枝さんのニーフェ・アラベスクシリーズの器に出合ったとき、

その美しさに魅せられて、手に取ったまま

じぃっと見入ってしまったことを覚えています。

もう20年近く作っている器だそうですが、

どのようにして生まれたものなのでしょうか。

 

これは、唐草摸様の器で

主人と結婚して眞正陶房(しんせいとうぼう)を

一緒にやっていくと決めたときに作り始めたものなんです。

 

今でこそ、ゆいまーる沖縄さんとコラボして

「ニーフェ・アラベスク」というブランドになっていますが、

当初は「コバルトブルー」というシリーズでした。

 

もともと、唐草摸様がお好きだったんですか。

 

沖縄県立芸術大学で陶芸を学んでいたときも、

卒業後に働いていたときにも、唐草摸様の器作りはしていたんです。

 

けれど、いいな、好きだなと思う一方で、

私にとっては無理なく楽にできちゃうものでもあって

他にもっと興味をひかれる技法があったんですよ。

 

だから、これだけを夢中で作ることはしていなかったの。

今思うと、まだまだ稚拙な唐草模様でしたけれどね。

 

では自分のスタイルを模索しつつ、

独立された時に、本腰を入れて作り始めた器なんですね。

 

そうですね。はじめはいろんな器を作っていたので

徐々に絞り込まれて、今、この器を中心に作っている感じです。

お客さまからのリクエストも多かったから。


陶芸家・安里貴美枝さん

ニーフェ・アラベスクシリーズ

 

ニーフェシリーズの青には、

沖縄の空や海の力強さを感じます。

 

青ってさまざまな色合いがありますよね。

私は鮮やかでさわやかな

沖縄の空気感をイメージさせる青にしたかったんです。

 

きりりとした白がまた青を引き立てています。

 

この辺りはコンクリート造りの白い建物が多いでしょう。

だから私の中の沖縄は、白の中に鮮やかな青がくっきり浮き立つイメージ。

その様子を青と白のコントラストで表現しているんです。

 

ちょっと冷たく涼しげな白にしたものも、

青を引き立てる色合いにしたかったから。


陶芸家・安里貴美枝さん

 

摸様も大らかですよね。

 

花にツルをからませた花唐草ですよ。

 

花なんですね。羽のように見えていました……

青く広い大空に南国の風がふぅっと吹き込んで

羽がふわりふわりと舞っているイメージ。

ちょんちょんというのは海の水しぶきのようにも思えて。

 

ちょんちょんはツルと実です。笑

でも、そんなイメージもいいですね。

 

ありがとうございます。

 

学生時代、よく首里の街を散歩していたんですが、

例えば末吉宮(すえよしぐう)の辺りとか、緑がすごく多いでしょう。

風が吹くと、さぁぁっという音がしてね。

 

葉がこすれる音ですね。

 

気持ちいいですよね、あの感じ。

ざわざわっとしたあとに、しぃんと静まりかえる感じ。

それで緑の中から空を見上げると、じりじりと太陽が照りつけるなか、

葉と葉の間から、くっきりと青空が見える。

 

音だったり色だったり、あちこちに潜む強いコントラストが

私の中の原風景なんですよ。

 

夏の浜辺にも青と白のコントラストがありますよね。

吸いこまれそうなほど青い空にまっ白な入道雲。

きらめく海と白い砂浜。


そうそう。青も緑も色濃くて、花も鮮やかでしょう。

健やかっていうのかな。儚いイメージがないんです、沖縄には。

たくましくて健康的で、大胆。

そういうのをひっくるめて、唐草摸様に表現しています。

 

それがダイナミックな絵付けにつながっているんですね。

 

よく見たらわかるんですけれど、菊唐草という伝統的な摸様なんです。

そこに私だったらこうするなと、アレンジを加えて。

太いところは太く、細いところは軽やかなタッチで。

これもコントラストなんですよ。

 

貴美枝さんらしい大らかさが表れていると思います。

余白が少なく、全体に青色が舞っているところも魅力的ですね。


陶芸家・安里貴美枝さん

 

今や人気ブランドとなったニーフェシリーズには、

貴美枝さんの心に残る沖縄の原風景が描かれていました。

 

後編では、同じ唐草模様でも落ち着いた雰囲気をもつ

ダーク・ブラウンシリーズをご紹介します!

 

陶芸家・安里貴美枝さん

ダーク・ブラウンシリーズ

 

 

つづきます

 

眞正陶房

住所 /
沖縄県那覇市真地260‐6
TEL /
098-996-5296
営業時間 /
10時00分~16時00分
定休日 /
祝日のみ
Webサイト /
https://sinsei-asato.net/
備考 /
急なお休みを頂く事がございますので、
確実にお会いしたい方は事前のご連絡をお願いします。

◇ニーフェ・アラベスクシリーズを買える店

RENEMIA(レネミア)

住所/沖縄県那覇市牧志2‐7‐15

電話/098‐866‐2501

時間/13時00分~17時30分

定休日/日曜日~水曜日

HP/http://www.renemia.com/

 

◇ニーフェ・アラベスクシリーズ*オンラインショップ

https://sinsei.shop/

初回投稿日:2014.12.23 最終更新日:2021.06.24

沖縄CLIP編集部

同じカテゴリーの記事