くぅーすの杜 忠孝蔵(ちゅうこうぐら)後編

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初回投稿日:2015.03.23
 最終更新日:2024.04.18

くぅーすの杜 忠孝蔵(ちゅうこうぐら)後編

 

(前編はこちら

泡盛酒蔵の見学へ行く!「くぅーすの杜 忠孝蔵」後編

 

泡盛に縁遠かった私が、沖縄に遊びに来たのんべえの先輩に連れられて、初めての酒蔵見学へ。

向かったのは1949年創業の「くぅーすの杜 忠孝蔵(ちゅうこうぐら)」。

窯を見て蔵を見て、ようやくお目当てのマンゴー酵母仕込みの泡盛とご対面。

酒蔵見学【後編】は、試飲するところからスタートです(【前編】はこちら)。

 

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さてさて待ってましたの試飲タイム。

忠孝蔵では約30種類もの銘柄を飲めるそうで、ずらり並ぶ泡盛を前に目が泳ぐ泳ぐ(笑)

けれど、ここは初志貫徹。

酒びんの陳列をくぐり抜けて向かうはマンゴー酵母仕込みの泡盛だ。


 

飲み慣れていないなら「まずは水割りで」と案内役の玉城さん。

前回も記したが、沖縄で泡盛を飲むなら水割りが定番。

理由は、食事中もその後もえんえんと飲み続けるからだという。

なにせ長丁場。アルコール30度の泡盛をロックやストレートで飲むと長時間はもたないし、食事に合う度数というのも、15~20度なのだそうだ。

 

忠孝蔵では、酵母や仕込み法、度数の違うおすすめの9銘柄を、味や香りが最もわかる20度の水割りで用意している。

同じ度数で飲んでこそ、味比べしやすいためだ。


 

早速すすめられたマンゴー酵母仕込みの泡盛、「三年古酒」をいただくことにした。

古酒(くーす)とは、泡盛を三年以上寝かせたもの。熟成させた酒である。

 

初めに43度という原酒のにおいをかいで驚いた。

細いびんの口からふわり漂うのは、甘やかなバニラの香り。

まるでケーキのようなのである。

 

「え、これが泡盛ですか?」

 

目をぱちくりさせる私に

「それこそがマンゴー酵母の特徴なんです」と玉城さん。

 

隣でのんべえの先輩は、したり顔だ。


 

そして、ひと口ふくんでまたまた驚いた。

舌にのせ、さらりと広がるやわらかな甘み。

飲んでなお余韻を残す、丸みのある香気とふくよかな旨み。

予想していたものとはまるで違う。

 

「お、おいしい。しかも飲みやすいっ」

 

沖縄移住前、泡盛といえばロックで飲み、のどがかーっと焼けていた。

それが水割りにしたとたん、こんなにも旨みを感じるなんて……

 

「これならくいくいっといける!」

 

かくして「泡盛=強くてクセのある酒」の方程式はガラガラと崩れさった。

強いのではなく、自分に合わない飲み方をしていただけだった。

年月を重ねた古酒ほど、クセがあるという思い込みも大間違い。

泡盛は熟成すればするほど甘くまろやかになっていくのだ。


 

マンゴー酵母には、古酒の特徴である甘い香り成分、「バニリン」のもととなる「4‐VG」が、

従来より10倍以上も含まれるという。

つまり、この酵母で仕込むと、甘く口当たりがやわらかくなるのが早いのだ。

 

だから、新酒と3年寝かせた古酒を飲み比べると味も香りもかなり違う。

たった3年でこれだけ変わるのが、マンゴー酵母の特徴なのだ。


 

泡盛に対する勝手な思い込みがどんどん崩れていく横で、先輩はニヤニヤしながら試飲をしていた。

それは10年前と変わらぬ笑顔と飲みっぷり。

言葉より態度でいつも大切なことを教えてくれた。

 

「まずは飲んでごらん。泡盛を飲まないなんて、もったいないよ」

 

心の声が聞こえたようだった。


 

そこからは負けじと試飲に参戦。

他の銘柄も飲み比べていくと、その味の違いに驚くばかり。

たいていどれも似たようなものだと思ったら大間違いなのだ。

 

「忠孝蔵では酵母、麹、度数、熟成期間が違う泡盛をたくさん置いているんです。

だから味の振り幅が広くて個性が出る。泡盛初心者の方、詳しい方、

誰もが好みの1本を見つけられるように味にバリエーションをもたせています」と玉城さん。


 

そして最後にいただいたのは、五年、十年、十五年の古酒を味わえるセット(有料)

 

熟成を重ねた古酒は水で割らず、小さなおちょこでなめるように味わう。

しかも空気に触れるうちに味がどんどん変わっていくという。

それがまた泡盛の楽しさ。奥深さ。

 

あぁ、なんだろう。この爽快感と幸福感は。

縁遠い酒だと思って、こちらからぴしゃりと閉めていたシャッターを

ガラリと開けてもらい、縁をつないでもらった心もち。

目の前が晴れやかだ。

 

百聞は一見、いや一献にしかず。

新たな扉を開いてくれた先輩に感謝である。


 

三年古酒はとろりとして、甘いお酒が好きな方には飲みやすいと思う。

寝かせるほどに、甘みや香りが変化するのも楽しみだ。

 

もし忠孝蔵まで行く時間がない方は、国際通りにあるHAPINAHA(ハピナハ)内の「忠孝マイブレンドショップ」もおすすめである。

 

5つの泡盛のテイスティングを行い、自分だけのオリジナルブレンドを作れるのだが、そのひとつがマンゴー酵母仕込みの五年古酒なのだ。

こちらで試飲しつつ、味比べをするのもお楽しみ。

 

泡盛ならではの奥深い世界を味わってほしい。

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くぅーすの杜 忠孝蔵(ちゅうこうぐら)

住所 /
沖縄県豊見城市名嘉地132
TEL /
098-851-8813
営業時間 /
9時~17時 *酒蔵見学は要予約
定休日 /
木曜日
Webサイト /
http://www.chukogura.com/

沖縄CLIP編集部

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