沖縄の素朴な暮らし方に触れてみる。名護市東海岸で民泊体験

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あそぶ

初回投稿日:2015.03.31
 最終更新日:2024.04.11

沖縄の素朴な暮らし方に触れてみる。名護市東海岸で民泊体験

どこまでも青く澄み渡る海。緑のしずくがしたたる山々。のんびりした時間が流れる集落。


那覇市から高速を使って1時間と少々。沖縄本島北部にある名護市東海岸の久志(くし)地域は海、山、湿地帯など多様な生態系に恵まれたやんばるへの玄関口だ。普天間(ふてんま)基地の移設先としてマスメディアにも登場する辺野古(へのこ)など13の集落からなるこのエリアは、昔ながらの暮らしと手つかずの自然とが今なお残る場所として知られている。
 

 

そんな久志地域では、観光業とは縁のなかった“普通の人たち”が、都会からの旅行者を受け入れる民泊の取り組みが活発になり始めている。今回はこの地域での民泊をリポートしようと、豊原集落の吉野さん宅にお邪魔してみた。


 

「おばあちゃん、沖縄で好きなのはどんなところなの?」

 

サトウキビ畑で、苗の植え付けを手伝う女子大生が一緒に農作業をしている人生の大先輩に素朴な質問を投げかけた。

 

埼玉から来た彼女は大のおばあちゃんっ子だという。高校まで暮らしていた福島でも、小さい頃から家族でおばあちゃんの家に遊びに行っていたそうだ。そんな彼女と、底抜けに明るい沖縄の“おばあ”との間で、久しぶりに再会した実のおばあちゃんと孫のようにほのぼのとした会話が始まった。

 

 

「海はきれいだし、人はあったかい。口は悪いけどね、みんな心の良い人ばかりだよー」

 

「『いちゃりばちょーでー』っていう言葉をね、こないだ教えてもらったんだけど。そんな感じですか?」

 

「そうかもねー。習えることはいっぱいあるからさー。たくさん勉強していったらいいさー」

 

テキパキとサトウキビから葉をはぎとりながら、二人の間で楽しげにやり取りされる会話はにこやかに続いた。

 

 

普通の観光では触れられない沖縄の暮らし。農作業を手伝ったり、文化体験をすることでわかる生活の知恵。晩御飯を食べたあと、三線を弾いて唄を歌って近づく距離感。

 

 

ゆっくり流れるシマ時間に身をゆだねてみると違った沖縄が見えてくるし、絆のありがたさを感じることができる。

 

民泊をはじめとする交流滞在型観光を久志地域で推進する協議会の事務局には実際にそういう声が寄せられているそうだ。

 

 

事務局の永井さんによれば、受け入れ側にも「いい変化」が生まれ始めているという。

 

例えば、民泊に来た家族と一緒にサーターアンダギー(沖縄の手作りドーナツ)を作ったというKさんの話。

 

高校生の孫が学校から帰ってくると、おいしそうなサーターアンダギーづくりの痕跡がキッチンのテーブルの上に残っていたそうだ。何をしていたのか孫が尋ねるからKさんはその日にあったことを説明したら、「私にも今度教えてよ」と言われたという。「そういえば、自分の子や孫に、一緒に作ろうよ! と誘ったことなんて、今までなかったな」とKさんはその時、思い当たったそうだ。

 

 

「当たり前のことすぎて、今まで見過ごしていた価値に民泊が気付かせてくれた」そういうふうに喜んでいるのはアンダギーのKさんだけではないようだ。

 

新しい沖縄旅行のあり方として注目されている民泊。土地の暮らしを体験できる旅行者だけでなく、地域の価値を再発見できるという点で、受け入れる地域の人にとっても大きな魅力のある旅のあり方なのだろう。


 

◎久志地域交流推進協議会では地域内の10数軒の受け入れ家庭を組織化し、この地域ならではの農村体験を提供しています。体験メニューには、農作業のほか、地域案内、沖縄料理作り、もの作りなどがあるそうです。詳しくは協議会にお問い合わせください。

 

久志地域交流推進協議会

住所 /
沖縄県名護市大浦465-7 わんさか大浦パーク内
電話 /
090-9785-7832(民泊担当直通)

沖縄CLIP編集部

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