毎日食べたい、ハード系の“やわらかい”パン「Boulangerie enne」(八重瀬町)

毎日食べたい、ハード系の“やわらかい”パン「Boulangerie enne」(八重瀬町)

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初回投稿日:2023.08.14
 最終更新日:2024.08.30

最終更新日:2024.08.30

毎日食べたい、ハード系の“やわらかい”パン「Boulangerie enne」(八重瀬町) クリップする

那覇空港から車で南に30分ほど。八重瀬町(やえせちょう)の住宅地の一角に、みどり色の扉と壁に描かれた大きなロゴが目を引くパン屋さんがあります。
お店の名前は「Boulangerie enne(ブーランジェリー エンネ)」(以下:enne)。

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縁を繋げる場所、

扉を開けて店内に入ると、パンの芳ばしい香りと店員さんの元気で気さくな笑顔が迎えてくれます。2023年2月にオープンしたばかりにも関わらず開店直後からひっきりなしにお客さんが訪れて、すでに地元の人気店となっている様子。

「Boulangerie enne(ブーランジェリー エンネ)」の店内

店名にあるBoulangerieとは、フランス語でパン屋のこと。職人自らが小麦を選び、生地をこね、発酵させて焼いたパンをその場で販売するお店を意味します。enneは、前から読んでも後ろから読んでも「エン(縁)」。そして、縁と縁が繋がってenne(エンネ)。

ショップカード

「人とひとのご縁を繋げられる場所になればと思って」と、オーナーで職人の金子久志さんが教えてくれました。

厳選した麦で作る“毎日食べられるハード系”

enneで使っている粉は、金子さんが福岡県の製粉所まで足を運んで選び抜いたものや北海道産、沖縄県産のオーガニック小麦「島麦かなさん」と、国産を中心に取り入れているそう。粒の状態で仕入れた麦は、風味を最大限に活かすため使う分だけを都度挽いて使っています。

オーナーで職人の金子久志さんがパン作りっている

 

店内には、毎日25種類ほどのパンと焼き菓子が並び、そのメインは「ハード系」と言われる、粉・水・塩・酵母のシンプルな素材で作られるパン。硬く、酸味が強いイメージのあるハード系のパンですが、砂糖やバターなどを使わない分、小麦の風味やあじわいがダイレクトに感じられるが特徴でもあります。

「自分が理想としているパンを作っているお店が沖縄になくて、だったら自分でやりたいなと思って」と話す金子さんが目指すのは、“毎日食べられるハード系”。それは、毎日食べても食べ疲れしない、シンプルな素材で作るハード系のやわらかいパン。

ハード系のやわらかいパン
 

食パン

ハード系なのにやわらかいというとちょっと不思議な気もしますが、例えば水分を多く使った加水率の高い生地で作られる「ロデヴ」というパンは、もともと外側はカリッ、中はもちっとした、ハード系の中でもやわらかさを持ったパンです。
 

enneでは、より食べやすい「ロデヴ」を目指して、使う粉の種類や割合、水の量を調整しているのだとか。「普通だったら、フランスパンに使われる“準強力粉”っていう強力粉よりタンパク質がちょっと低い粉を使って、フランスパンやバゲットに近づけるんですけど、うちは“強力粉”をメインに使っているんです。タンパク質が多い分、バリッとっていうよりは、ちょっとフワッとなりやすいんです」。

加水率の高い生地で作られる「ロデヴ」というパン

「ロデヴは、高加水と言って粉に対して大体95%とか100%くらいの水を加えるのが一般的なんですけど、お餅みたい食感を目指して作っているので110%まで入れています」。

気温や湿度の高い沖縄では、水分量の多い生地はダレやすく、扱いもむずかしくなるのだとか。それでも「ハード系が当たり前になってくれたらうれしい」という思いで、試行錯誤を続けてきたのだそう。
 

ショーケースのパン

実際にenneのロデヴを手にすると、ずしりとした重さがあって、ちぎると大きな気泡としっとりとした薄い膜がのぞきます。もちもちとした食感と滑らかなくちどけは、今までのハード系のパンのイメージを覆すはず。もともとハード系が好きな人はもちろん、ちょっと苦手かもという人にもぜひ食べてみてもらいたい一品です。
 



さて、金子さんがこだわり選び抜いている小麦ですが、聞けば毎年11月にワイン「ボジョレー・ヌーヴォー」の解禁日があるように、国産の麦にもその年の新麦の味わいを楽しむイベントがあるのだそう。沖縄ではまだ認知度が低く広まっていませんが、「新麦コレクション(参考:http://mugikore.net/)」といって桜前線のように南から北へ、8月から新麦の解禁日が北上していくのだそう。

今年の解禁日、沖縄県内ではenneと那覇のBOULANGERIE Le Pret a Porter(ブーランジェリー プレタポルテ)、読谷村のcommons(コモンズ)の3店舗で新麦を使った取り組みを企画しているそうですよ。「またこの季節が来たね」と、新麦を味わい季節を知ることができたら、毎年の楽しみが増えますよね。
 

オーナーで職人の金子久志さんとスッタフ

パンの製造・販売だけではない、お客さんや農家や製粉所、関わる人たちとのすてきな縁が広まっていく、そんなお店になりそうなBoulangerie enne。ぜひ、沖縄南部ドライブの際に足を運んでみてくださいね。

Boulangerie enne(ブーランジェリー エンネ)

住所 /
沖縄県島尻郡八重瀬町富盛337
定休日 /
木曜・金曜・不定休
駐車場 /
1台
Webサイト /
https://www.instagram.com/boulangerie.enne/

上村 明菜

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