飲み干すように沖縄を楽しんでみる。沖縄で最初のブルーイングパブ、コザ麦酒工房

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初回投稿日:2018.03.01
 最終更新日:2024.08.29

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「街のビールを作りたい」。『コザ麦酒工房』の大浜安彦さんが生まれ育った自分の街の地ビールを作りたいと思うようになったのは不思議なことではないかもしれません。

幼稚園から高校までコザの学校で過ごし、進学のために一度は県外に出たものの、卒業後にはコザに再びUターン。しかも、コザの中心地で酒屋を営む「とおやま酒店」の三代目。さらに、とおやま酒店の前身はハブ酒を製造する造り酒屋。お父さんもおじいさんもお酒の作り手だったのです。

ちなみにコザとは、1974年3月31日まで存在した日本でただ一つのカタカナ表記の市町村。コザ市と美郷村が合併して4月1日に沖縄市になってからも、「コザ」は愛称として親しまれ続けています。


定番ビール

現在、こちらで味わえる定番ビールは、「BIG BEACH」、「黒帯スタウト」、「三線ペールエール」、「アコークロー夕方エール」、「シーサーブラウンエール」、「台風IPA」など。いずれも沖縄にちなんだ名前が付けられています。

大浜さんが作ったビールということで「BIG BEACH」と名付けられたクリームエールは、夏をイメージしたフレッシュでフルーティな味わい。「黒帯スタウト」はローストした麦芽と大麦を使った黒ビール。「三線ペールエール」は甘みと苦みのバランスが心地良いハーモニーを奏でるスタンダードタイプ。

「アコークロー夕方エール」は沖縄で夕暮れ時というアコークローの時間帯らしく、丸くて柔らかい口当たり。「シーサーブラウンエール」は麦芽のコクと穏やかなホップの余韻が心地良いのが持ち味。「台風IPA」は、チヌーク、ナゲット、アマリロの3種ホップの苦みをモルトの旨味で包み込んだ、濃くて旨苦い球体が台風のように攻めてくるビール。530円(税込)から680円(税込)とこなれた価格でフレッシュなクラフトビールを楽しめます。


コザ麦酒工房の店内

さて、コザ麦酒工房がオープンしたのは2014年7月のこと。クラフトビールがすっかり日本中に定着していたころで、沖縄には名護市、南城市、石垣市、宮古島市に地ビール醸造所があったそうですが、本島中部にはまだありませんでした。その頃のとおやま酒店は、店内の一角で立飲み屋を始めたり、地下にワインセラーを設けて500種類以上のワインを計3000本ほどストックするなど、普通の酒屋さんプラスアルファの個性的な存在として親しまれていました。

その延長で大浜さんが出会ったベルギービールが、ビールの作りの道に入るきっかけの一つになったようです。「ベルギービールの多様性に驚きましたね。醸造所が地域ごとにいくつもあって、それぞれが個性的なビールを作っているんです。まるでワインと同じ世界だなあって」。多様性豊かなビールの世界を知った大浜さん。

「その後、ビールの本を読んでいたときに、高円寺麦酒工房の記事が目に入ったんですね。衝撃を受けました。『街なかでもビールが作れるんだ』って。ビールといえば、大きな工場で製造されているイメージを浮かべがちじゃないですか。でも、高円寺麦酒工房は、そこで作ってそこで売る、街のパン屋さんのような存在だったんです。『自分にもできそうだ!、いや、街のビール屋をコザでぜひやりたい!』と思ったんです。それで、早速その店を訪ねてみたんです。思いが確信に変わりました」と当時のことを熱く語ってくれました。


コザ麦酒工房の店内
高円寺の運命の店で、師匠が岡山にいることを教えられた大浜さんは、岡山に出かけ、吉備土手下麦酒醸造所の門を叩いたのでした。そして、ビール作りへの思いを話し、師匠にやる気をわかってもらえるまでに1年半。「本気なら教えてやる」と、ついに認めてくれ、岡山と沖縄を行ったり来たりしての修行が始まりました。


醸造スペース

そのようにしてビール作りの道に入った大浜さんは、「コザの街で自分が作るクラフトビールをきっかけに、たくさんの人がこの街を訪れてくれたら言うことはない」と、酒屋の2階に醸造に必要な設備を運び込んで、ビール作りを始めました。1回の製造量はわずか200リットル。小さな小さなマイクロブルワリーのスタートです。

ほどなくして、醸造したビールをもっとも新鮮な状態で味わえるブルーイングパブというスタイルで営業を開始。ビールはご存知のように衝撃や温度変化にとても敏感。コザ麦酒工房の場合は醸造スペースから客席までは歩いて数歩の距離。ブルーイングパブは最良の状態で味わえるスタイルだったのです。
ビールの注ぎ口

さてさて、この4月には新しい銘柄が加わります。日本では「ビールといえばこれだ」という、ラガービールです。今まで手がけてきた高温発酵のエール系と違って、ラガーは低温発酵のビール。チラーという冷却装置が必要なので、小規模なブルワリーでは醸造することが難しいビールだといわれています。

実は大浜さんは、コザ高校時代ラグビー部に所属し、全国大会で花園ラグビー場にも出場したことがある、ラガーメン。「ラグビーはボールをパスして行くスポーツじゃないですか。パスがきれいにつながると、それだけで歓声が上がりますよね。このビールを通じて、コザの街で人と人が繋がってくれたらいいですね」と大浜さん。何が何でも実現したかったラガービールが、いよいよ今回形になるのです。

大浜安彦さんとお客様

手作りしたビールが、人の手からまた別の人の手へ。現在はお店でのグラス売りのみですが、4月には瓶ビールの販売もスタート。「『コザは面白い街だね』と言う名刺がわりに使ってもらえらと言う気持ちもあって瓶ビールを商品化することにしました。販売はここと、ミュージックタウン音市場にある沖縄市観光協会になるはずです」。大浜さんの顔がみるみるほころんできました。

コザに来てもらわないと手に入らないという点では今までと変わりませんが、どこにいても飲むことができるようになりますから、コザの観光大使として活躍することになるでしょう。第一弾は、新しく製造を始めるラガービールの「コザラガー」と人気銘柄の「BIG BEACH」。苦みと甘みの組み合わせです。第二弾は、オリンピックの正式種目になった沖縄発祥の空手を盛り立てようと「黒帯スタウト」が予定されています。

地ビール

この夏、オープン4年目を迎えるコザ麦酒工房。今後は、ワインやブランデー、テキーラやウイスキーを熟成させた木樽を使って熟成させたビールや、沖縄市内の自家焙煎のコーヒー屋ポレポレのコーヒーを使ったビールなど、新しいビールづくりを引き続き行っていくそうです。沖縄旅行に来たらぜひ、沖縄の地ビールを。そして、ぜひコザの地ビールを楽しんでみてください。

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コザ麦酒工房

住所 /
沖縄県沖縄市中央1-24-13 とおやま酒店2F
電話 /
098-975-6119
営業時間 /
17:00~24:00
17:00〜23:30(火・水・木)
定休日 /
日曜日、月曜日
Facebook /
https://www.facebook.com/kozabrewingokinawa
Instagram /
https://www.instagram.com/kozabrewingokinawa/

沖縄CLIP編集部

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