奇跡的に美しい伊良部島の海で前例のないマングローブ蟹の養殖を成功させた人

奇跡的に美しい伊良部島の海で前例のないマングローブ蟹の養殖を成功させた人

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歴史文化

初回投稿日:2017.03.12
 最終更新日:2024.05.17

最終更新日:2024.05.17

奇跡的に美しい伊良部島の海で前例のないマングローブ蟹の養殖を成功させた人 クリップする

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伊良部島(いらぶじま)からの眺め
 
マングローブのある風景
 
世界的に知られるスキューバダイビングのポイントが点在しているの伊良部島(いらぶじま)。宮古島(みやこじま)と伊良部大橋でつながったこの島で、世界的にも前例がないガザミ(マングローブに生息する蟹)の養殖を10年以上続けているユニークな男性がいる。
 
吉浜崇浩(よしはま・たかひろ)さん
 
カヌーを漕ぐ吉浜崇浩さん
 
「生物博士」と言われるほど、生きものが大好きだったという吉浜崇浩(よしはま・たかひろ)さん。少年時代の専門は蟹ではなく、もっぱら昆虫。珍しい蝶や甲虫を探しに野山を駆け巡り、汗を掻いたら海で泳ぐ。都会育ちの人間には羨ましてくしょうがない夢のような時間を過ごしてきたらしい。
 
ガザミ
 
そんな吉浜さんが生まれ故郷の伊良部の海にあらためて惚れなおしたのは、高校卒業と同時に島を出てかしばらくたってからのこと。「この島の蟹は世界一おいしい!」。16年ほど前に里帰りしたときに食べたガザミがきっかけだった。その時に同じく再認識したのは、伊良部の海の奇跡的な美しさだったという。
 
ボート
 
あたり前だと思っていた環境が当たり前ではないことに気づいた吉浜さんはUターンすることを決意。それから間もなくして自宅のベランダでガザミの養殖に取り組みはじめたのだ。
 
鳥
 
“世界一”おいしいカニを通じて伊良部の豊かな海を知ってもらいたい。子どもの頃、人生を心の底から楽しませてくれた島の自然をそのまま未来の世代に引き渡したい。そういう気持ちが原動力にり、支えになり、10年も続いた試行錯誤の連続を乗り切ることができたという。
 
養殖場の目の前に広がる青い海
 
「すぐ隣の下地島に空港ができる前はこの佐和田の海は今の10倍はきれいだったんですよ」。養殖場の目の前に広がる青い海を眺めながら吉浜さんがつぶやいた。その横顔は眩しい海とは反対に、沈んで見えた。宮古島の与那覇前浜と並ぶ沖縄でもトップクラスの極上ビーチ「渡口の浜」も入江付近で土木工事が始まってからは自慢だった白い砂浜がかなり減少していると不安感を募らせている。
 
「入江で生活している人が実際にいるわけで、その人たちが生活を続けるためにも入江の環境を守る必要があるんです」。海で生計を立てている吉浜さんの言葉は重い。
 
入江
 
入江の環境の変化は、地形の変化や白い砂浜の減少だけに限った話ではない。水質悪化も最近目立ってきているそうだ。原因として考えられるのは家庭からの排水や、大雨や台風の時に畑から流出する赤土など。
 
船
 
壁に島の写真
 
できることから始めたいと考えて、まずは島の住民に現状を知ってもらうために、10年ほど前からガザミ(マンブローブに生息する蟹)の放流体験を行っている。ガザミの放流はガザミの個体数を維持して生態系のバランスを維持するためのもの。亀や魚と同じように蟹も生まれてからしばらくは鳥などの天敵にとっては格好の獲物。野生では生き残って子孫を残せるのは生まれてきた蟹のうちごくごくわずか。そこで、稚蟹(蟹の赤ちゃん)をいったん保護してから、成長させてマンローブに還すのだ。
 
愛犬のターボーを連れて、いそいそと入江の奥へカヌーに乗って出かけて行った
 
本業の蟹の養殖も軌道に乗りはじめ、以前よりは余裕が少し出てきたという吉浜さん。将来は入江の環境を昔のような状態に復元したいと、あれこれアイデアを膨らませているという。インタビューが終わると愛犬のターボーを連れて、いそいそと入江の奥へカヌーに乗って出かけて行った。
 

蟹蔵

住所 /
沖縄県宮古島市伊良部佐和田1181−6
HP /
https://kani-zo.com/

沖縄CLIP編集部

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