ソリッドな素材から温もりのある世界を生み出す『LITTAI METAL WORKS』【後編】
ソリッドな素材から温もりのある世界を生み出す『LITTAI METAL WORKS』【後編】
Reading Material
歴史文化
初回投稿日:2016.11.01
最終更新日:2024.09.02
最終更新日:2024.09.02
『ソリッドな素材から温もりのある世界を生み出す『LITTAI METAL WORKS』【前編】』で紹介させていただいたLITTAI METAL WORKSの代表的なプロダクトがこちらのブックシェルフ。
鉄やステンレス、アルミニウムといった無機質な金属素材をインダストリアルでぬくもりが感じられるものに仕上げるLITTAI METAL WORKSの仲地研二(なかち・けんじ)さん。アートの世界で身につけてきた感性とアルティザン(職人)としての技術が合わさることでなんとも言えない世界観が形になっている。
「素材感がきわだっていて、デザインでごまかしてない」。ある写真家がそのように評するブックッシェルフは、装飾性をぎりぎりまで排除した、ミニマリズムの極み。デザイン性の高いプロダクトが世界中から集められているMOMA(ニューヨーク近代美術館)に展示されてもおかしくない完成度だ。
ブックシェルフを使ってインスタレーションを即興で制作中の仲地さん
宇宙から来た生物の骨格標本のようにも見える作品が数分で完成
フレームは直径13mmの鉄の棒、本が倒れないように支えるウエイトの丸鋼も一般的に使用されている規格鋼材だという。「鋼材を組み合わせて形にしていくのも楽しい」と笑顔で語る仲地さん。その仕事ぶりは、いま、ここで手に入る素材で最高のものをつくり出すスローフードの料理人のようだ。
「この製品のいちばんの味わいは質感なんです」と仲地さん。「シンプルだからこそ、『これだ!』と言える形にたどり着くまでに、試行錯誤を繰り返しましたよ。簡易金型も何個か作り、用意しました」。そして、底辺の部分の角度やアールの大きさを何度も変えて試してみたという。
それだけでなく、艶の残しかたなど、素地に近づくようにこだわったのだそうだ。はじめは既製品のようにきれいに仕上げていたという接合部分も、よく見ると手仕事の痕跡が感じられるように、意図的にラフに仕上げてある。カーブしている角っこは黒皮が剥離して、味わい深い。加工に使っているのは1980年代に製造された油圧式のプレス機。角度の大きさは圧力のかけかたで変えることができる。
当初はインスタレーションとしてつくったというこのブックスタンドも、商品化されて6年ほどが経つ。ごくたまに、遊び心が甦ったりすると、積み重ねて造形作品づくりに興じたりもするらしい。本を収めるという本来の使い道以外にも、アイデアしだいで意外な用途が見つかるかもしれない。
「たとえば、手すりやドアノブもたくさんの人の手に触れることによって磨き込まれていくじゃないですか。時間の経過で変化してく表情もたまらないんですよ」と目を細めて語る仲地さん。
仕事に使っている旋盤やボール盤といった加工機械も昭和30年代に製造された年代もの。機械には違いないがどことなく人の体温が感じられる。それは仲地さんがつくりだすプロダクトにも同じように感じられるあたたかみのようなものだ。鉄は、鉄らしく。本来持っている魅力やあるべき姿を模索し続ける仲地さん。ブックスタンド以外にもコートハンバーやフック、棚受けなど、実用的でありながらも、時間の経過で表情を変える不思議な魅力を持った製品をつくり続けている。
LITTAI METAL WORKS
- 住所 /
- 沖縄県宜野湾市赤道1-5-26
- 電話 /
- 098-893-8218
- Instagram /
- https://www.instagram.com/littai.acamichi/
同じカテゴリーの記事
よみもの検索