「おいしい!」ものにはわけがある。昔ながらの市場で味わうスペシャルティコーヒー。【COFFEE potohoto】
「おいしい!」ものにはわけがある。昔ながらの市場で味わうスペシャルティコーヒー。【COFFEE potohoto】
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初回投稿日:2016.09.26
最終更新日:2024.04.12
最終更新日:2024.04.12
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「ぽとっ」、「ほと」、「ぽとっ」、「ほと」・・・。朝起きて、目が覚めぬうちにコーヒーをドリップで淹れるときに、聞こえてくる心地よい音。最初はゆったり、やがて少しずつ早くなる軽やかなリズム。まどろみの世界から現実の世界へとゆるやかに引き戻してくれる魔法の音楽。その音をそのままお店の名前にしたという『COFFEE potohoto』は、那覇市のディープスポット、栄町市場にあり、沖縄でトップクラスのコーヒーを楽しめる店として親しまれている。
より良いものをつくり出そうと技を極め続ける職人とか、いくつかの条件の組み合わせから最適解を導き出そうとする研究者とか、真理を解き明かそうとする敬虔な求道者。そういった肩書きがしっくりきそうなのが、マスターの山田哲史(やまだてつじ)さん。パートナーの山田紗衣(さえ)さんや遠く離れた読谷(よみたん)村から通勤してくる安里成太(あさと・しげた)さんと一緒に、小さいけれど、沖縄のスペシャルティコーヒーの世界になくてはならないないこのお店を2006年から営んでいる。
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今日、最初にいただいたのは「スペイン風アイスエスプレッソ」。和歌山のこだわりの農家が農薬を使わずに育てたレモンをスプーンで押しつぶすように果汁を絞り出し、コーヒーと合わせて飲むのだという。いままでにない初めての体験は、想像していた以上のものだった。
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スペインのバレンシア地方の飲み方だというが、沖縄の長い夏にもぴったり。すっきりとした爽やかなレモンの風味が、エスプレッソで抽出したコーヒーと絡み合ってなんとも言えない味覚の世界を醸し出していた。
この店はアイスコーヒーを美味しく飲める店として、観光客にも人気があると聞いたことがあるが、コーヒーの芯にあるおいしさをアイスでいかに味わえるか、試行錯誤を続けている様子があらためてうかがえた気がする。
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「酸の質」「アフターテイスト」「バランス」がコーヒーのおいしさを決める要素だという山田さん。はじめはドリップで淹れていたというが、その後フレンチプレスの魅力を知り、最近ではエスプレッソにはまっているそうだ。一般的なカフェではオートマチック設定のエスプレッソが主流だが、potohotoでは、チンバリのマシーンを使ってマニュアルで淹れている。
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スペシャルティコーヒーだからこその華やかさ、ほのかな甘み、なめらかでクリーミーな口当たり、そしてフルーツや草花、ハーブやカカオを思わせる香りなど、産地や生産者によってひとつずつ違う豆の個性。そういったコーヒーが持つ価値をわずか20秒程度の一瞬で引き出すには相当な技術が必要とされる。
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「オートマチックは豆の持ち味を100点とすると60~70点くらいを引き出せるように設定してあるんですよ。でも、コーヒーは栽培方法、輸送方法、保存状態、天候、焙煎の仕方などいろんな条件が影響する繊細な飲み物。だから、最適な条件を見つけてそれをクリアできるかどうかで味わいが変わってくるんです。針の穴を通すように難しい作業ですけど、狙った穴にピタリとはまったときの感動はただものではない。『おいしさの芯』を上手に引き出せるのがエスプレッソなんです」と語る山田さん。
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実際に味わってみると、今までの経験でできあがっていた「エスプレッソはどこで飲んでも変わらない」という固定観念が、一瞬にして崩れ去っていった。この驚きはpotohotoで初めてフレンチプレスで淹れたコーヒーを飲んだ時に覚えた感動を凌ぐもの。けれども味覚は人によって異なるわけだし、どんなコーヒーを飲んだらいいかは人ぞれぞれ。といことで、オススメのコーヒーを幾つか聞いてみることにした。
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コーヒーがどちらかといえば苦手で普段は飲まないという人には、浅煎りのスペシャルティコーヒーの華やいだ魅力をゆっくりじっくり引き出してくれるフレンチプレス。コーヒーをほぼ毎日飲んでいるという人には、口当たりの良いクリーミーさが普段飲んでいるコーヒーとは明らかに違う印象を与えてくれるカプチーノ。そして、自称、コーヒー通の方には、豆の状態と焙煎と抽出方法がぴったり重なった時に出会う感動がプロにも「コーヒーをやっていてよかった」と思わせるほどの強烈なパンチ力を持つエスプレッソ。山田さんがぜひ飲んでみてほしいと推薦してくれたのは3つのコーヒーたちだった。
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そうそう、こだわりのコーヒーと一緒に味わってほしいのが、こちらのクリームサンドクロワッサン。和歌山のレモンを砂糖漬けにしたレモンピールと、クロワッサンの切れ目に塗ったレモンシロップがホイップクリームのほんのりした甘さを引き立てている。デザート的なパンは季節に応じて入れ替わるので、その時々のおいしさを楽んでみるのもいいかもしれない。
「いいものはそれにふさわしい価値が見出されるべきだし、相応の対価が支払われるべきだ」が持論の山田さんは、いいものをみんなで支えていける社会にゆっくりでもいいから近づけたいと願っているそうだ。
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「コーヒーをカルチャーに」をキーフレーズに、コーヒーを楽しむことをライフスタイルの一つのあり方として考えてもらえたらと、いくつかの取り組みを始めてもいる。その一つが この秋開催される『okinawa COFFEE festival』。県内のコーヒーロースターやこだわりの食の店が集まるほか、『A FILM ABOUT COFFEE』の上映、ワークショップやセミナーなど、いろいろな角度からコーヒーや食を味わい、ライフスタイルを考えるユニークなイベントに積極的に関わっている。沖縄にお立ち寄りの際はぜひ、訪ねてみてはいかがだろうか。
COFFEE potohoto
- 住所 /
- 沖縄県那覇市安里388-1 栄町市場内
- 電話 /
- 098-886-3095
- 営業時間 /
- 10:00~18:00
- 定休日 /
- 日曜日
- サイト /
- http://www.potohoto.jp
- Instagram /
- https://www.instagram.com/coffeepotohoto/
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