くつろぎの空間で滋味に満たされる「海産物料理と沖縄そばの店 楚辺」
くつろぎの空間で滋味に満たされる「海産物料理と沖縄そばの店 楚辺」
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初回投稿日:2022.02.21
最終更新日:2024.08.29
最終更新日:2024.08.29
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店主の地元「楚辺」の地名を店名に
那覇空港から車で約10分、那覇市楚辺(そべ)に、「楚辺そば」の愛称で親しまれるお店があります。
正式名称は、「海産物料理と沖縄そばの店 楚辺」。オープンして以来、その名のとおり、海産物料理と沖縄そばを提供してきましたが、沖縄そばが看板メニューとして話題になるにつれ、いつしかお店の名前も「楚辺そば」と呼ばれることが多くなったそうです。
「自分の出身は那覇市楚辺。まさに、この店がある地域で生まれ育ちました。沖縄で楚辺というと、読谷村の楚辺を思い浮かべる人が多い。まだまだ那覇市の楚辺は知られていないように感じて、自分の地元をもっと有名にしたいという思いから、店の名前を楚辺と名付けました。店を始めて今年で13年。少しはこっちの楚辺も有名になってきたかな(笑)」
そう語るのは、店主の國吉(くによし)真さん。看板は、「自分の店の名前は自分で書くのが一番だ」と信頼を寄せる人に教えられ、自身で筆をとったものだそうです。もともとは、洋食屋の店長だったという國吉さん。あるとき、土地の事情で閉店を余儀なくされ、働く場のなくなった従業員と一緒に「沖縄そば屋をやろう」と、一念発起。当時は、ほとんど倉庫として使っていた古民家をきれいに大改装して、この店を始めることにしたそうです。
「洋食屋で長年一緒に働いていた仲間の中には、新しい職場を見つけるには難しいだろうなっていう高齢の方もいて。どうにかその人たちが困らないように、これからも一緒に働いていきたいと思って、自分と一緒に挑戦してみないかと誘いました。それまでずっとやってきた飲食業の経験を活かして、みんなで沖縄の味を提供するお店をやろうと。『うまくいかなかったらそのときは解散ね』って笑いながら、料理長含め3名を連れて、新しい店作りをスタートしました」
料理長が独学で研究し、作り上げたスープ
メニューは、沖縄そばをメインに提供する。それ以外に、「ほかのそば屋がやっていないことをやりたい」という思いから、海鮮料理との2本柱でいくことに決定。とはいえ、料理長は、洋食、中華の飲食店経験はあるものの、沖縄そばを作るのは初めて。さまざまなそば屋を食べ歩きつつ、これまで培ってきた調理のアイデアを活かして、独学でスープの研究を重ねたそうです。
「とにかく独学なので、はたしてこの作り方が沖縄そばの基本かどうかもわからない。そんな中、自分も一緒に試食しながら、何度も意見を交換しあって進めていきました。これならいける!っていう味に仕上がったのが、店をやると決めてから2か月後。ちょうど自分が中心になって動いていた内装工事も終わったころ。そこから一気に準備を進めて、2009年3月、開店することになりました」
オープン当時のそばメニューは、沖縄そば、三枚肉そば、本ソーキそば、テビチそばの4種。海鮮料理は、てんぷらや魚汁、バター焼、フライやあんかけなど、さまざまな調理法で海の幸を楽しめるメニューを用意しました。ところが、なかなかお客さんが訪れず、お店は毎日ガラガラ状態。
「最初から『石の上にも3年』という言葉どおり頑張ろうと思っていたけれど、本当にオープンして3年くらいは、ほとんどお客さんが来ませんでした。だけど3年が過ぎたころ、少しずつ観光客の方も来てくれるようになって。その後、口コミで広まってくれたのか、前から応援してくれていた地元の方たちが入れないくらい満席続きになってしまったので、増築して今の広さにしました」
くつろぎの空間でベーシックな沖縄そばの味を
座敷80席、テーブル10席を設ける広々とした店内は、木造ならではのほっとする居心地のよさが魅力。照明には、かつて國吉さんが務めていた洋食店のシャンデリアをそのまま使ったり、今は亡きおばあちゃんが使っていたミシンを飾ったり、知り合いから譲り受けた古いタンスをメニュー入れに活用したり。BGMにも、洋食店でずっと流していたオールディーズを選ぶなど、さまざまな思い出が大切に息づく空間です。
「なんだか親戚の家に来たような懐かしい気分です」と伝えると、「そんなふうに思っていただけたら嬉しいです。ある高校生は、『ただいまー!』と言ってお店に入ってきたことがありますよ(笑)」なんて、微笑ましいエピソードも。
そんなあたたかみのある空間作りと共に、國吉さんが大事にしているのは、「ベーシックな沖縄そばの味」。あっさりしているけれど、しっかりコクがあるスープ。それに合うツルツルとした食感のストレートの細麺。脂身が多すぎないようにと、仕入れた肉の使う部分を厳選して、ていねいに煮込んだという三枚肉。シンプルながら、それぞれの存在がお互いを引き立て、絶妙な味のバランスを作り上げた沖縄そばです。
本ソーキそばのソーキは、2本骨が付いた長いサイズで。「ほかの店にはないおもしろいことを」という遊び心から、豪快に別皿で提供しています。
従業員のまかないから誕生した一番人気のそば
コロナの影響があってからは、海鮮料理の提供を一旦停止し、現在(2022年2月時点)は、そばのみの提供に。その分、バリエーションを増やしてお客さんに楽しんでもらおうと、新しいそばメニューも続々登場しています。
「まず、『軟骨ソーキそば』を加えました。3段階で手間暇かけて仕上げるトロトロの軟骨ソーキ。この軟骨ソーキができたことで、従業員のまかないそばに、三枚肉と軟骨ソーキ、両方を入れるようになったんですが、ある日それを見たお客さんが『僕にも食べさせて』と。試しに食べて頂いたら、『すごくおいしいから、ぜひメニューに入れてよ』ってことで、『楚辺のまかないそば』が誕生しました。2年前くらいにメニューに加えたんですが、お肉を2種類食べられるのが好評で、今ではうちの一番人気です」
ジューシー(炊き込みごはん)は、「ジューシーがおいしい沖縄そば屋」として、5年前にテレビ「秘密のケンミンSHOW」で紹介されたほど。具材は、小さく刻まれた三枚肉、かまぼこ、にんじん、こんぶ。やさしい出汁の味に、ほんのり甘い脂身の風味が引き立ち、後を引くおいしさです。常連のお子さんの中には、「ここのジューシーじゃないと食べたくない」という根強いファンもいるとか。
おいしい記憶と共に、楽しい思い出を
お客さんに楽しい思い出を作ってほしいと、直径32センチの大きなお椀で食べる4人前そばも、隠れメニューとして用意。女性同士のグループはシェアして、男性ではひとりで完食に挑戦という方も多いそう。1人前のお椀と比べると、こんなにサイズの差が。どちらも「楚辺」と名前の入ったオリジナルのやちむんで提供しています。
「お客さんにすごく喜んで頂いていたんですけど、コロナ後、食事をシェアすることが難しくなってしまって。実は、誕生日や長寿の祝いのときに、家族や友達同士、みんなで分け合って食べられるようにと、30食分入れられるお皿も特注で作っていたんです。近い未来に実現できる日が来たら、ぜひお祝いの記念としてたくさんの人に利用していただきたいですね」
「うちの店に来て食べて、おいしかっただけじゃなくて、どこかで『楽しかった』っていう思いが残ってほしい」と語る國吉さん。
「居心地がよかったな、またあの場所に行きたいなって思い出が刻まれるようなお店になりたいなと思うんです。僕らも『また遊びに来てね!』って感覚でいつでもお待ちしているので、ふらっと知り合いの家を訪ねるように立ち寄って頂けたら嬉しいですね」
海産物料理と沖縄そばの店 楚辺
- 住所 /
- 沖縄県那覇市楚辺2丁目37-40
- 電話 /
- 098-853-7224
- 営業時間 /
- 11:30~21:00
- 定休日 /
- 無(但し正月、旧盆除く)
- Webサイト /
- http://sobe.main.jp/index.html
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