沖縄の原風景が残る竹富島(たけとみじま)
沖縄の原風景が残る竹富島(たけとみじま)
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歴史文化
初回投稿日:2016.07.27
最終更新日:2024.05.27
最終更新日:2024.05.27
沖縄にある39の有人離島の中でリピート率がもっとも高い島の一つ、竹富島。昔の沖縄みたいだと沖縄の人でさえ溜息をつくくらい沖縄の原風景が島全体に残る島。石垣島から10分もあれば渡ることができるというアクセスのよさも手伝って、竜宮城を訪れた浦島太郎のように、ちょっとした冒険気分を味わえそうだ。
原風景を支えているのは他でもなく島の人。開発ブームに沸くバブル時代にもあっても、乱開発に走らなかった先見性が、突き抜けたの人気を支える価値を守ってきたのだ。「祖先から受け継いできた島のよさを子孫にも残していこう」。1986年に島民みずから制定した「竹富島憲章」には島の伝統文化と美しい自然環境を守り続けるための41もの島の決まりが書かれている。
実際、港で船を降りて集落に近づくにつれ、島を満たしている空気が他とは違うことが皮膚を通じて伝わってきた。島を一周する周回道路こそ舗装されているものの、集落内の通りはほぼ、昔ながらの道幅で、しかも、珊瑚のかけらが敷き詰められている。ゴミ一つ落ちていない美しい小道。聞けば、集落の人が自分の家の前の通りを毎日掃き清めているという。
道端の牧場でのんびり草を食む黒牛たちを眺めながら、ゆったり歩みを進めて中心部に近づくと、雅な人のように竹富名物の水牛車がのそりのそりと道を歩いていたりする。
民家の数は166戸。島民は360人あまり。島に住む水牛は35頭、飼われているヤギは19匹、犬は23匹、猫は59匹で鶏の数は21羽。この数を聞いただけでも、いかにこの島が失われた楽園のように穏やかで、流れる時間がせせらぎのように清らかであるかがわかるだろう。
朝が来れば鶏が鳴き、夜が来れば名も知らぬ南島の鳥が低い声で子守唄を囁く。晴れて穏やかな日には、島の西側にあるカイジ浜で星砂を探し、体を動かしたくなったら白い砂浜が眩しく広がるコンドイビーチで泳いでみる。
陽が落ち始めたら西桟橋まで歩いて、太陽が西の空を赤く染めるのをビールでも飲みながらただぼんやりと眺めやる。そのようにして一日をただただ静かに過ごしていく。何もしないことの贅沢が、ゆっくりと身体中を満たしていく。
この島に流れる時間を特別たらしめているのは、間違いなく竹富憲章とそれを制定した島民一人ひとりの思いだろう。そして、それを受け止めたのが、“黒船”の「星のや」だった。日本のリゾート業界に新風を吹き込んだ星野リゾートが運営する星のやは進出先の地元と人との絆を何よりも大切にし、その地域に潜んでいる価値を探りあて、ゲストに提供する地域主義で知られている。
「星のや竹富島」はそんな星のやにあっても、より一層島に溶け込む努力を惜しまない。島の文化と自然についてスタッフが学ぶために月に一度島の人を講師に招いて勉強会を開催しているし、島で頻繁に開かれる伝統行事や、運動会などの地域行事にも積極的に参加している。そのような地域に学ぼう、リスペクトしようという姿勢は、もてなしを通してゲストにそのまま伝わるのだ。
琉球料理や竹富の伝統料理をフレンチの技法で新な価値に高めた「琉球ヌーヴェル」を始め、集落に暮らすように滞在できるよう、心憎い仕掛けが随所に忍ばせてある。そうそうチャレンジできるグレードではないことは確かだが、グレードに見合った極上時間を過ごせるはずだ。
沖縄がかつて岡本太郎に言わしめた「何もないことの眩暈(めまい)」。竹富島の魅力は、それを誰もが享受できる環境を、人・文化・自然が三位一体で維持しているところにあるだろう。沖縄の原風景を堪能するなら竹富へ。できれば何も持たず、身軽な旅装で訪れてみてほしい。
竹富島
- 住所 /
- 沖縄県八重山郡竹富町竹富
- 参考サイト /
- https://painusima.com/(竹富町観光協会)
- 参考サイト /
- https://www.hoshinoresorts.com/resortsandhotels/hoshinoya/taketomijima.html(星のや竹富島)
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