「ちゃんと作られたものって、それだけで美味しいんです」。沖縄のフードカルチャーに新しい風を吹き込む「味噌めしや まるたま」
「ちゃんと作られたものって、それだけで美味しいんです」。沖縄のフードカルチャーに新しい風を吹き込む「味噌めしや まるたま」
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食べる
初回投稿日:2016.05.20
最終更新日:2024.08.29
最終更新日:2024.08.29
ずっしりとしたガラスの引き戸をズズズーッと右に引いて店内を覗いたら、年季の入った味噌樽がデーン! とただならぬ存在感を放っていた。樽の真ん中には「丸玉」のロゴ。その下に明朝体で書かれた「玉那覇味噌」(たまなはみそ)というほっそりとした文字が添えてある。
玉那覇味噌は4歳で即位した琉球王国最後の国王、尚泰王(しょうたいおう)の時代に創業して以来、昔ながらの天然醸造法で160年に渡って味噌を作り続けてきた老舗だ。
オーナーの中西武久(なかにし・たけひさ)さんは東京生まれの東京育ち。お母さんのご実家が玉那覇味噌ということもあり、子供の頃から、玉那覇味噌を食べてきたという。また、父方の祖父母の家では晩御飯に食する豆腐を毎日家で手作りしていたということからもうかがえるほど、丁寧な食生活と豊かな食文化を大切にしてきた家庭に育ってきた。
小学生の頃、キュウリに玉那覇味噌を付けて食べてから、スーパーで売っている速醸味噌(早く発酵が進むようにコントロールして作る味噌)との違いを体で感じて以来、ここの味噌のファンになったという中西さん。
2005年に沖縄に移住して、地元でも玉那覇味噌の認知度が予想以上に低いことに衝撃を受け、「玉那覇味噌販売」を起業。県内の飲食店や保育園などに営業を行うかたわら、「いいものなのに陽の当たらない商品」を集めたネットショップを開店。「何気なく使っている食材の本来の姿を知ってもらえたら」と、生産量が少なかったり、アイテム数も少なかったりで、一般的な流通に乗りにくい小規模生産者の販売サポートにも携わってきた。
2013年に実の祖母、玉那覇久子さん(玉那覇味噌の3代目)が 103歳の天寿を全うした時、玉那覇味噌の販売拡大に全力を尽くそうと中西さんは決意。味噌の魅力を知ってもらうには実際に味わってもらえるレストランをつくるのが一番だと考え、2016年の3月に「味噌めしや まるたま」をオープンさせたという。
「味噌めしや まるたま」はあらゆる料理に味噌を使ったスペシャルティレストラン。「朝ごはんといえばお味噌汁」ということで、朝7時半には開店し、作りたての丁寧な朝ごはんを10時まで提供してくれている。特製味噌ソースが食欲をそそるノルウェー産サーモン定食、沖縄名物肉味噌と納豆の組み合わせの意外性を楽しめる納豆味噌定食などのほか、テイクアウト可能な味噌汁とおにぎりの単品もあるので、忙しい朝にぴったり。
ランチタイムには看板メニューの「味噌汁定食」のほか、和食ランチの定番の「味噌屋のさばの味噌煮」、「紅豚ロース生姜焼き定食」、そして、沖縄の伝統料理「いなむどぅち定食」などを楽しめる。ご飯は女性でも食べきれるように少なめの盛り付けだが、味噌汁とともにお代わり自由。なので、育ち盛りの男性諸君にも十分満足してもらえるはず。
夜は味噌フォンデュやピザなど、「味噌にこんな使い方があるとは!」と目からウロコの新しい世界を堪能できる。その他、トマトソースと味噌のマリアージュを楽しめる「地鶏のトマトチーズ焼き」や、味噌で味付けをしたグレービーソースが自慢の「自家製ローストポーク」など、味噌に関する固定観念を心地よく覆してくれるメニューが揃っている。新たなメニューもこれから随時登場するとのことなのでそちらも楽しみだ。
「開店以来、お客さんの反応は想定以上」と語る中西さん。なかには週に3〜4回通ってくれる常連さんもいるという。「難しいことをしてるわけではないんですよ。きっと、お味噌が料理の味を作ってくれてるんでしょうね」。飲食店で「おいしかったです」とお店の人に声をかけるのは多く人に経験があることだろうが、「ほんとにおいしかったです」という言葉を何人もの人からもらったことが何より嬉しいそうだ。
できたてのお味噌汁で心が和む一日を始め、首里の泡盛や循環型農法で知られる九州の焼酎と一緒に楽しむ優しい料理で一日を閉めくくる。沖縄のフードカルチャーに新しい風を吹き込んだ「味噌めしや まるたま」。訪ねる度に味噌の魅力を再発見できそうだ。
味噌めしやまるたま
- 住所 /
- 沖縄県那覇市泉崎2-4-3-1F
- 電話 /
- 098-831-7656
- HP /
- http://marutama-miso.com
- Instagram /
- https://www.instagram.com/marutamamiso/
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