陶房 火風水

陶房 火風水

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歴史文化

初回投稿日:2015.06.20
 最終更新日:2024.07.19

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世界遺産の中城城(なかぐすくじょう)で知られる、本島中部の中城村。そののどかな住宅街に、奥平清正(おくひらきよまさ)さん、真穂(まほ)さんの「陶房 火風水(ひふみ)」はあります。
 
「火風水」という屋号は、器を作るうえで忘れずにいたい自然への感謝をあらわしたもの。自然界で重要な要素の「火・風・水」を組み合わせているのだそう。

火風水
 
外壁にかけられた看板の後ろから、階段をトントンと上がると玄関に到着。靴を脱いだ先には、窓辺にも壁にもテーブルにも、器がずらりと並んでいました。そして奥にはキッチン。食器棚にはふだん使いの器が重ねられています。
 
というのも、ここは工房でありギャラリーであり、ご家族の住まい。温かな暮らしの気配を感じながら器を手にとれるのです。

工房でありギャラリー
 
読谷の工房で修業時代に出会い、結婚した清正さんと真穂さん。8年前に独立して以来、この場所でお客さんを迎えています。そんなふたりからうまれる器は、食卓も気持ちも晴れやかにする美しい絵付けが特徴。

美しい絵付け
 
澄んだ青は沖縄の海をイメージし、赤で描かれたのはやちむんの伝統柄、菊や唐草をアレンジしたもの。色鮮やかな絵付けには、ひと目で引き込まれていきます。

色鮮やかな絵付け
 
けれど、器のさらなる魅力を知るのは、料理をのせたときかもしれません。
 
「料理を盛って完成する器作りを心がけています」と清正さん。
 
存在感がありながら料理を引き立てる器は、いつものおかずを盛ると、ちょっとしたごちそうのように、おもてなしメニューなら食卓をいっそう華やかにしてくれる。何をのせても、はっとするほどおいしそうに見えるのです。

おうちへ帰ろう」シリーズ
 
こちらは「おうちへ帰ろう」シリーズの器です。全体が家の形をした入れものになっていて、屋根のふたをつまんで開けると、絵柄の違う小皿が5枚しまえます。器を並べてみるとにぎやかなこと、楽しいこと。
 
セット皿というと全て同じ柄と思いがちですが……
 
「使ってくださる方に、より喜んでもらえたらと思って、それぞれ違う絵付けにしています」と清正さん。

それぞれ違う絵付け
 
こちらは裏側にも絵付けがほどこされた別の一枚。洗ったり拭いたりして裏返したときにも楽しめるように描かれたもので、食後の後片づけでも心躍る器です。
 
『作る人も、食べる人も。食事の時間が少しでも温かいものになりますように』
 
全ての器に流れる、ふたりの思いに触れた気がしました。

真穂さん
 
キッチンの食器棚はオープン棚です。修業時代に親方たちの器づかいをのぞいてみたかったという真穂さん。
 
「さぞかし、いろんな作品を並べた食卓だろうと思いながら、見る機会がなくて。だから独立したら、うちの台所を見て、雰囲気を感じてもらえたらと思っていました」
 
実際に食器棚をぐるりと回りながら器を見る方も多いそう。家に持ち帰り、キッチンに置いたなら……。そんな楽しい想像をめぐらせて器選びができるのも、この空間ならではです。

器選び
 
ゆったりとした空気が流れているせいでしょうか、家族連れの方も多いといいます。なかには3世代で来られる方も!
 
「お子さんと一緒に器を選ぶ姿を目にすると、いいなあって思うんです。家での食事風景を想像しながら、家族で器を見てくださる様子がすごく嬉しくて」と真穂さん。
 
最初こそ、子連れでは……と一人で来た方も、再訪時は家族で来ることが多いそう。お子さんには絵本コーナーで楽しんでもらったり、一緒にコマを回して遊ぶことも、と笑うふたり。

火風水 商品
 
一人で立ち寄った方なら、のんびりと心ゆくまで。ご夫婦なら、料理が得意なご主人が熱心に器を選ぶことも。それぞれが思い思いの時間を過ごしていきます。
 
「お客様には、沖縄でものづくりをする私たちの暮らしを感じていただきながら、できるだけゆっくり過ごしてほしいと思っています」

火風水 制作風景
写真提供/陶房 火風水
 
一度訪ねると、また足を運びたくなる。火風水には、そんな空気が流れていました。それはきっと、美しい絵つけの奥に、器を手にした人を思う温かさと誠実さを感じたから。
 
火風水のお二人
 
「私たちは沖縄の力を借りて、器作りをさせてもらっています。ここに暮らしているからうまれる器があり、その中に、お客様それぞれの沖縄を重ねて見てくださっていると感じています。それは海の青さだったり、人々の素朴さや文化だったり。この島でものづくりをするから喜んでいただいている部分が大きくて。沖縄の地に深く感謝しています」
 
沖縄を思い、手にする人を思いながら作られた器たち。日々、「食べること」を支える器が、ふたりからうまれたものだったら。
 
その温かさは、器を包む手のひらにも、食卓にも自然に伝わって、生きる根っこを静かに力強く支えてくれるように思いました。
 

陶房 火風水(ひふみ)

住所 /
沖縄県中頭郡中城村新垣126
TEL /
098‐995‐7331
定休日 /
※不定休のため、訪れる際には連絡を
Webサイト /
http://tobohifumi.exblog.jp/

沖縄CLIP編集部

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