最期の泡盛からはじまる泡盛「31/32」。幻になった泡盛、限定復活です!
最期の泡盛からはじまる泡盛「31/32」。幻になった泡盛、限定復活です!
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食べる
初回投稿日:2019.11.05
最終更新日:2024.03.27
最終更新日:2024.03.27
酔うためではなく、じっくりと向き合って味わいたいお酒があります。そのお酒は、宮古島で最も歴史の深い集落・狩俣(かりまた)地区にあった「千代泉酒造所」の蔵で眠っていた泡盛で、2019年に「31/32(サンイチサンニ)」と名前を変え、復活しました。
千代泉酒造所は2013年に経営者が亡くなって以降後継者が見つからず、2018年に幕を閉じました。地元で親しまれ、飲み継がれていた千代泉酒造所の泡盛ですが、管理できる人がおらず、タンクに残っていた泡盛は間もなく捨てられる運命に…。そんな矢先、泡盛文化を見つめ直す泡盛文化継承事業「誇酒(こしゅ)プロジェクト」が始動しました。
代表の比嘉康二(ひがこうじ)さんは、那覇市久米(くめ)にある泡盛専門バー「泡盛倉庫」の店長で、寝ても覚めても泡盛のことを考えているような方。彼は泡盛についてこう語ります。
「“600年の歴史がある泡盛”には先人たちの夢や希望が込められています。彼らが積み上げてきた価値や背景を、次の世代にも伝えていくのが私の役目だと思っています。最近お酒は“酔うため”や“コミュニケーションツール”として活用する風潮が生じています。それは悪いことではありませんが、泡盛は戦前ストレートで楽しむという豊かな文化がありました。琉球王朝時代にはおもてなしのお酒として振る舞われていました。代々受け繋いでいき、どんどん磨かれていったお酒です。泡盛は沖縄の誇りです。泡盛文化を見つめ直して、価値を取り戻していけたら…と思っています。」
そんな比嘉さんは「千代泉酒造所のタンクに残っている泡盛をどうにか守りたい」と、酒造所で眠っていた原酒約2万リットルを復活させることに。
誇酒プロジェクトから生まれた泡盛は4種類。「いつか終わりが来てしまう千代泉を、どうすれば未来に繋げることができるのか」と考えた比嘉さんは、まず3つの蔵元に声をかけました。崎山酒造廠、伊平屋酒造所、神谷酒造所、それぞれの泡盛と千代泉をブレンドすることにしたのです。「頑張っている蔵元さんと一緒に発信することで、千代泉は復活します。そしてそれだけでなく、大勢の方にブレンドしたその蔵元さんのことも知ってもらえます。千代泉はもうないけれど、一緒にブレンドした酒造所の未来にはつながります」と比嘉さん。
“追悼”の意を込めてブレンドした3シリーズを発信した後、第4弾となる泡盛「31/32」の限定販売を開始しました。テーマは“命”です。
「31/32」という名前には2つの意味が込められており、ひとつはお酒が貯蔵されていたタンク番号(31番と32番)です。もうひとつは、廃業後に千代泉酒造所に足を踏み入れた比嘉さんが目にしたカレンダーの数字です。
「酒造所にかけられていたカレンダーは12月31日で止まっていました。普通だったらそこでは終わりません。次の日が来ます。でも千代泉は残念ながら未来へは進めませんでした。ですから、私たちが来るはずのない32日目という特別な1日を作りました。32。この特別な1日を通して蔵のこと、宮古島のこと、千代泉酒造のことはもちろん、泡盛の飲み方や歴史、背景を楽しんでほしいです。」
無垢な命や減っていく命の重みを感じてほしいと思った比嘉さんは、31/32を透明の瓶にボトリングしました。透明にすることで、減っていく命が見えるからです。千代泉の原酒には限りがあるので、永遠には続きません。だからこそ、命の最期を見届けられる透明にこだわったのです。
「最期の泡盛をそのまま届けたい」という想いから、原酒をほとんどろ過することなくボトリングしたという31/32。約10年の古酒であるため、骨太でまろやかな甘みが感じられます。おすすめの飲み方はストレート。おちょこで少しずつ、香りや味わいを楽しんでみてください。
黒糖やドライフルーツ、琉球王朝伝統の銘菓である冬瓜漬けと合わせることで高い度数の刺激が和らぎ、お酒の持つ甘みや柔らかな香りを感じることができます。
1万円台の泡盛なので気軽に飲むお酒ではないかもしれませんが、31/32を通して、泡盛の価値や魅力に気付いてもらえることでしょう。限りある希少価値のある泡盛31/32を、一度あなたも味わってみませんか?
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