こんなパン屋を待ってました!心と体にやさしい宮古島のモジャのパン屋

こんなパン屋を待ってました!心と体にやさしい宮古島のモジャのパン屋

Reading Material

食べる

初回投稿日:2015.07.02
 最終更新日:2024.03.27

最終更新日:2024.03.27

こんなパン屋を待ってました!心と体にやさしい宮古島のモジャのパン屋 クリップする

琉球歴文化体験モニタープログラム

もじゃのパン
 
11時になると小さなガラス扉が開き、そこから店主の室上智宏さんが顔をのぞかせると、幅3m、奥行きは2mもないくらいの小さなお店から焼きたてのパンのふんわり芳ばしい香りが漂ってくる。

 
どこにでもあるごく普通の路地に、お客さんがどこからともなく集まってくる。大人も子どもも老人も、そして、ときどき犬までも。つい最近2周年を迎えたばかりのモジャのパン屋の開店風景はいつもこんな感じ。

シンプルな甘みの「まるぱん」(110円)、クーベルチュールの「ちょこぱん」(160円)、こだわりあんこの「あんぱん」(200円)など、定番は全部で6種類。
 
コッペパンをまん丸にしたような、どこか懐かしい味がするモジャのパン。表面は歯ごたえがあって、なかはしっとり。ほんのり甘みが感じられるシンプルでやさしい味。使っているのは北海道産小麦、種子島の砂糖、フランスのゲランドの塩、牛乳、バター、イースト菌。
 
店主の室上智宏さんのこだわりの材料たち。おいしくて、安心して食べてもらえて、なおかつひとりで切り盛りできるパンづくり。それをイメージして、行き着いたのがこの材料なのだそう。

 
開店前に焼いたパンは開店して一時間もしないうちに売り切れる。だから、売りながら、小麦をサラサラとふるいにかけて、こねはじめる。

 
「あたらしい小麦って、触ると気持ちがいいですよ」。
パンづくりを眺めながらいろいろ話をしていると、お客さんが次々に現れる。

「ランブルポットってあるでしょ、コーヒーを淹れるときに、お湯をほそーく落とせるやつ。これはね、カフェドランブルのオリジナルのポットなんですよ。で、こっちはね、フランスの鋳物の自慢のポットなんです」手に入りにくい値打ちものカードを自慢する子どものように目を輝かせて「自慢」の逸品を見せてくれました。
 
「チョコパン三つに、アンパン三つ、くるみとぶどうを二個ずつください」。
赤ちゃんを抱いた若い女性。
 
「まだ首はすわってないですよね?」。
パンを袋に詰めながら、会話を続ける室上さん。
 
「もう3ヶ月ですよー」
「もうそんなになるんでしたっけ?」
「小さいのにしっかりしてますね」
 
こねて、寝かせて、焼いて、売る。そんなふうに、会話とともに手渡される丸いパン。

「今年は妊婦さんとか、小さな子どもを連れたお母さんが多いんですよ」。
営業時間は11時から3時くらいまで。だから、お店に来れる人は主婦、おばあちゃん、おじいちゃん、外回りの営業の人。そして時々、近所の小学生。若いお母さんにとりわけ人気が高いのは、モジャのパンがやさしい味で、安心して食べられるという以外にも、きっと理由があるのでしょう。

 
「焼きあがったパンを見て、かわいいなぁって思う時があるんです。でも、小麦にも機嫌が悪い時もあるんですよ。お客さんの応対に夢中になって、こねてる途中のパンをほったらかしにするじゃないですか、パンはそういう時にすねるんです」。
 
パンへの愛情も人への愛情も半端ではない。だから、小さな島のこのパン屋にはお客さんが絶えることなくやってくるのでしょう。

 
「これ、ちょっと触ってみてくださいよ」。
差し出さたパン生地を触ってみたら、赤ちゃんのふくらはぎのような弾力感が。命がいっぱい詰まってる、そんな感じ。
「発酵がじゅうぶんに進んだパンはこうなんですよ」。
なるほどパン職人は、パンのご機嫌を手で見ることができるらしい。

開店前にまとめて焼いてしまえば営業中、もっとゆっくりできるし、パンもたくさん売れるのに、そうしないのには訳があるのだそう。「冷めたパンとあったかいパンが一緒にある状態が嫌なんですよ。お客さんには出来たてを食べてもらいたいでしょ。だから、あったかいのから出さなきゃいけなくなって、冷めたパンが残ってしまうでしょ」。なんとなく気持ちはわかるのですが・・・。
 
そんな人柄だから、お客さんからラブレターをもらうことが少なくないのだとか。例えば東京に住む外国人女性は「ここのパンは日本に来て食べた中でいちばんうまい。そして少しクレージー」という嬉しい手紙を書いてくれたのだそう。
 
 
取材の翌日、パンを買いにモジャさんを訪ねると、好きな女の子に告白してきたばかりの小学生のような顔で室上さんが出迎えてくれた。どうしたのか尋ねると、「ねえ見てくださいよ、昨日来てくれた女の子からラブレターもらったんですよ」とイラスト入りの小さな手紙をこっそり見せてくれた。
 
 
見た目も味わいも、とってもシンプル。けれどもいたるところに気配りが隠されている。なんとなく宮古っぽい感じのするモジャのパン。宮古島にお出かけの際はぜひ一度おためしあれ。
 

モジャのパン屋

住所 /
沖縄県宮古島市平良東仲宗根20
営業時間 /
10時00分~15時00分(土曜日は12時30分まで)売り切れ次第終了
定休日 /
日曜・月曜

沖縄CLIP編集部

同じカテゴリーの記事

琉球歴文化体験モニタープログラム