“いい正月で〜びる”。旧正月を迎えるための伝統行事『フトゥチ御願(ウガン)』(南城市知念)
“いい正月で〜びる”。旧正月を迎えるための伝統行事『フトゥチ御願(ウガン)』(南城市知念)
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歴史文化
初回投稿日:2016.02.08
最終更新日:2024.03.27
最終更新日:2024.03.27
旧正月(新暦の2月8日)を一週間後に控えた冬空のある日、本島南部の南城市知念では恒例の伝統行事『フトゥチヌ御願(ウガン)』がとり行われました。地域によっては、ウガンブトゥチ(御願解き)とも言われます。
旧暦12月24日、各家庭では屋敷を清め台所にあるヒヌカン(火の神)にお供えをするのが習わしとして知られていますが、地方の一部では、集落全体の行事としてとり行うところも残っており、一年間を無事平穏に過ごしたことについて地域内のウガンジュ(拝所)を廻り、祖霊神らに感謝を捧げます。
神様に祈りを捧げるウガンジュ(拝所)は神聖な場所で、高い樹木の下にあったり、サンゴなどの石が置かれている場合や、コンクリートなどで造った祠(ほこら)になっていたりさまざまです。
こちらの集落では、区長さんと副区長さんでなんと13カ所のウガンジュ(拝所)を廻ります。沖縄の祈願行事には欠かせない『瓶子(ビンシー)箱』には、花米(ハナグミ)と呼ばれるお米、ウンシャク(御神酒)の泡盛、それから沖縄独特のお線香“ヒラウコー(平御香)”がワンセットになっています。そして、詳しい理由はさだかではありませんが、この行事の時は、白いお餅ではなくコンペン(薫餅)というごまピーナッツ風味の焼き菓子を10個お供えします。
集落内の道路に佇む、この大きな琉球石灰岩の岩の下にも、ちょこんと祠が鎮座。こちらも立派なウガンジュ(拝所)です。
苔が生えた祠の石は、長い時間の経過を思わせ、まわりの自然に溶け込み堂々たる風格です。
ウガン(御願)=祈願では、『フトゥチ御願チャービタンドー(フトゥチ御願に参りました)』や『ウサギーガチャービタンドー(お供えを持って祈願に参りましたよ)』と挨拶をしながら手を合わせます。少し間をおいて『ウサンディーサビラ(お供え物を引き揚げさせていただきます)』と再び挨拶し、盃の泡盛をヒラウコーにかけます。
中には、足場のあまり良くない茂みの中にあるウガンジュ(拝所)も。お供えの場所や廻る順序は、ムラ(集落)の長老から次の世代へと口承文化で受け継がれてきたものです。
さらに、個人宅の敷地内にあるウガンジュ(拝所)も数カ所ありました。こちらは、お庭の片隅にあり、先ほどの茂みのウガンジュ(拝所)からひょいと塀越しに乗り越え、ひょいと登っていきました(笑)。
こちらも、蔓草に覆われ、やがて緑の草芝生と同化しそうなウガンジュ(拝所)。
祠は、戦前からの古いものや昭和に入ってからのものなど造られた時代もさまざま。屋根のカタチなどもそれぞれ違っていて個性的(!?)です。
このモダンなコンクリート製のウガンジュ(拝所)も、個人宅の敷地内にあるもの。普段は、家の方がしっかり手入れをしてまもっていてくださいます。
たっぷり1時間半ほどかけて集落内の13カ所のウガンジュ(拝所)を廻りました。お供えものを広げ、手を合わせ感謝と祈りを捧げる。単純なこの作業を丁寧に繰り返す。多勢でのにぎやかなお祭りとは対照的な地味の行事ですが、人々の日々への営みの豊かさを感じずにはいられませんでした。
“うんじゅが あちゃがふー うがなびら”
(あなたの明日の果報(幸せ)を祈っています)
昔、別れ際の挨拶には、方言でこの言葉が日常的に交わされていたそうです。
新年も、みなさまにとってよい年でありますように。
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