能登のブランド米「神子原米」を使用。「忠孝酒造」が独自の技術をすべて注ぎこみ贈り出す新次元の泡盛「CKR1」

能登のブランド米「神子原米」を使用。「忠孝酒造」が独自の技術をすべて注ぎこみ贈り出す新次元の泡盛「CKR1」

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初回投稿日:2020.02.26
 最終更新日:2024.07.30

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能登のブランド米「神子原米」を使用。「忠孝酒造」が独自の技術をすべて注ぎこみ贈り出す新次元の泡盛「CKR1」 クリップする

琉球歴文化体験モニタープログラム

「泡盛文化の継承・創造」をテーマに、創業70年を迎える「忠孝酒造(ちゅうこうしゅぞう)」。「泡盛はもっとおいしくなる」という思いのもと、さまざまな研究と挑戦を重ね、新たな泡盛の可能性を切り拓いてきた酒造会社です。

甕(かめ)

特筆すべき点は、「忠孝酒造」は蔵元でありながら、窯元でもあること。なんと、泡盛をよい古酒(くーす)に熟成するための甕(かめ)を自ら製造しているのです。これは、県内の泡盛メーカーで初のこと。そこにあるのは、「甕にこだわり、味を極める」という思い。平成元年から「忠孝窯(ちゅうこうがま)」を構え、古酒熟成甕の研究を開始。さまざまな試行錯誤を経て、沖縄の土を使い、1つひとつ手作業で作られるオリジナルの甕「琉球城焼(りゅうきゅうぐすくやき)」を生み出しました。

甕の研究に携わった大城繁会長
自らロクロを回し、甕の研究に携わった大城繁会長

写真提供/忠孝酒造


そんな「忠孝酒造」から、“新次元の泡盛”なる自信作「CKR1(シーケーアールワン)」が完成したというニュースが! いったいどんな泡盛なのかを体感すべく、さっそく「くぅーすの杜 忠孝蔵(ちゅうこうぐら)」を訪ねてみました。那覇空港から車で約10分、豊見城市(とみぐすくし)にある「くぅーすの杜 忠孝蔵」は、昔ながらの手造り泡盛工場や、古酒が眠る県内最大級の木造貯蔵庫、職人が甕を作る「忠孝窯」などを見学できる施設。「忠孝酒造」で生まれた数々の泡盛が試飲できるのも嬉しいポイント。泡盛マイスターを含む専門のスタッフによる詳しい説明を聞きながら飲み比べでき、お気に入りの味をゆっくり探すことができます。


忠孝酒造


「ようこそ! 新しい泡盛の世界へ!」

そう迎えてくださったのは、社長の大城勤(つとむ)さん。今回は、特別に奥の試飲カウンターで一緒に飲み比べしながら、「忠孝酒造」の泡盛の魅力、そして新商品の「CKR1」について自ら案内してくださるとのこと。


忠孝酒造


「ふだんから泡盛はよく飲みますか?」と聞かれ、「実はそれほど飲まないんです」と答えると、「では、説明するより先に飲んでいただきましょう」と、大城社長。目の前に置かれた3つグラスをよく見ると、それぞれの下に「青りんごの香り、洋ナシの香り、バニラの香り」と書いてある。ん、どういうこと? 「うちの酒造には、独自に開発した製法技術があります。その製法の違いによって、風味は多彩に変化する。この3つの香りを体感していただきながら、それぞれの製法について説明していきます」


社長の大城勤(つとむ)さん


まずは、青りんご。グラスに注がれると、立ちのぼる爽やかな香り。泡盛にこんな香りがあったなんて!と驚き。キリッとしつつもアルコールがきつい感じはなく、後味がやわらかです。

シー汁浸漬法で作られたもの

「これは、『シー汁浸漬法』という古式製法で作られたもの。現在の泡盛は、原料の米を洗って水に漬けるのが主流ですが、昔は米を洗わずにシー汁(米のとぎ汁)に漬けるという方法が用いられていました。しかしなぜシー汁を使っていたのか?という謎は明らかにされていなかった。これには、必ず何か理由があるはず。そこで忠孝酒造では40年ほど前に途絶えてしまったこの製法を現代に復活させ、醸造技術を解明したいと研究を進めました。私の母校である東京農業大学との共同研究です。結果、『シー汁浸漬』とは、乳酸菌や微生物による発酵技術であることが解明しました。その発酵にこそ酒質を変える作用があり、やわらかな味わいとコクのある甘みを作り出す効果があることも明らかになった。つまり青りんごの香りは、乳酸菌や微生物の働きによって生み出されたものなんです」

試飲


平成18年には、この研究が認められ、醸造技術の発展に寄与した人に贈られる「日本醸造協会技術賞」を受賞。沖縄県では初の受賞となる快挙でした。

お次は、洋なし。グラスに顔を近づけると、鼻をくすぐるフルーティーで華やかな香り。ほんのり甘く、まろやかなのど越しで、ついつい飲みすぎてしまいそう。

「通常の泡盛は2日間かけて麹(こうじ)を作りますが、これは倍の4日間かける『四日麹(よっかこうじ)製法』で作っています。徹底した温度管理を行い、黒麹菌の胞子を抑えることで、お米の内部まで菌糸がしっかりと食い込んでいく。それによって黒麹菌の酵素力がアップして、味や香りのもとになる成分を多く作り出すことができる。豊かな香味成分あってこそのラ・フランスを思わせる泡盛です」

麹(こうじ)

黒麹菌で“ 白い麹”を醸し出す四日麹製法
写真提供/忠孝酒造

さて、3つ目はバニラ。「泡盛でバニラの香り?」と半信半疑で飲んでみたら、なんてスイート! これはバニラです(笑) 甘ったるくはないけれど、口どけがしっかり甘い。「泡盛とは思えない」と感動していると、大城社長は「うちの古酒を飲むと、すっかり泡盛の概念が変わりますよ」とにっこり。

「年数物のウイスキーの甘い香りを思い起こすでしょう? この際立つ甘さの秘密は、沖縄県産のマンゴー果実から取り出した酵母。2007年に、トロピカルテクノセンターと沖縄工業高等専門学校との共同研究によって見つけ出した新しい酵母です。バニラの香りは、『4-VG』という物質が熟成することで生成されるんですが、この酵母は『4-VG』を通常の10倍以上(蒸留時「忠孝酒造」比)生産することがわかりました。寝かせれば寝かせるほどバニラ香が強くなる。この酵母で仕込んだ泡盛は、年数を重ねた古酒ほど芳醇な甘い香りが楽しめます」

飲み比べ

グラスで3つの香りを体感したあとは、新酒、ステンレスタンク貯蔵の古酒、甕貯蔵の古酒の飲み比べ。伝統的な酒器「カラカラ」から「盃(ちぶぐゎー)」へ注ぎ、味わいます。まずはステンレスタンク貯蔵の古酒を飲む。その後に甕貯蔵の古酒を飲む。すると、明らかに風味の違いが。甕貯蔵は、驚くほど奥行きがあって、ふくよかなんです。これは、甕に使用している沖縄の土に含まれたミネラルやマグネシウムが熟成を促すからだそう。そして新酒はというと、「若い!」と叫んでしまうフレッシュ感。古酒は3年以上寝かせたものという定義がありますが、熟成年数や容器によって、こんなにも個性が現れるものなんですね。

飲み比べ

ここで、お待ちかね、いよいよ新商品「CKR1」の登場です。

「どうして今、3つの香りの魅力と、甕貯蔵の素晴らしさを体感してもらったのかというと、『CKR1』は、そのすべての技術を集結させた泡盛だからです。シー汁浸漬法と四日麹製法を用いて、沖縄県産マンゴー果実酵母で仕込み、オリジナルのビンテージ甕でじっくりと熟成させる。忠孝酒造がこれまで長い時間と労力を費やし、習得してきた独自の技術を余すことなく注ぎ込んだ集大成といえる泡盛。それが、Chuko Reiwa 1=忠孝令和元年『CKR1』なんです」

泡盛、Chuko Reiwa 1=忠孝令和元年『CKR1』
写真提供/忠孝酒造

「さあ、どうぞ!」とグラスに注いでいただき、いざ試飲。出てきた第一声は「甘い!」。香りも飲み口も、とっても甘いんです。そして、やわらかい。新次元の泡盛と掲げるのが納得できる、新鮮な驚きが詰まった味です。

「泡盛カクテル競技会のアイスランド大会で優勝した方が、『まるでケーキのようだ』と評してくれましたが、素晴らしい表現で嬉しくなりました。芳醇な香りを醸し出しながらも、キレがあり、くどくない。きれいな味の泡盛が完成したと感じています」

泡盛

自慢の独自技術がぎっしり詰まった『CKR1』ですが、実はほかに注目すべき大きなポイントがあります。それは、原料米に石川県能登半島のブランド米「神子原米(みこはらまい)」を使用していること。泡盛の原料といえばタイ米ですが、それに代えて日本産のお米を使用しているのです。

神子原の棚田

黄金色に染め上がった神子原の棚田
写真提供/忠孝酒造


「なぜ『CKR1』が生まれたのか。そもそもの始まりは、神子原米との出会いでした。神子原米は、世界遺産である能登の美しい棚田で育まれたコシヒカリ。公務員の高野誠鮮さんが、神子原地区の地域活性化のために尽力されて、ブランド米として全国に売り出した最高品質のお米です。ローマ法王に献上されたことを機に有名になり、高野さんの奮闘はテレビドラマ化されたほど。その高野さんが沖縄県で講和した際、知人の仲介でお話をする機会がありました。その知人いわく、神子原米を使った高級日本酒がある。同じように、最高級の泡盛を作ってみたらおもしろいんじゃないか、と。それから今回の挑戦が始まったんです」

神子原米

神子原米は、収穫量が年間わずか30トンという希少なお米。そのうち1トンを分けてもらい開発を始めたのが2016年のこと。

「日本のお米を使って泡盛を作る技術はすでに持ち合わせていました。それにしても、やってみないとわからない。だったら『忠孝酒造』が持つすべての技術をぶっこんでしまえ!と(笑)。それから3年熟成させて2019年。飲んでみたらとんでもない泡盛に化けていた! 新しい時代の泡盛だと確信しました」


その味を確かめてから、2019年、販売用に限定1000本で仕込みをスタート。完全予約限定生産の「CKR1」は、3年間の甕熟成を経て、2023年1月に購入者の皆さんのもとへ届けられます。そう、今まさに「CKR1」は、おいしくなるべく貯蔵庫のビンテージ甕の中で眠っているのです。

甕貯蔵

待っている3年の間にも、嬉しい楽しみが。2020年11月には、バニラ、青りんご、洋ナシ香の泡盛3本セット、2021年11月には、新酒、ステンレスタンク貯蔵の15年古酒、甕貯蔵の15年古酒のセットが届きます。今回私が試飲した泡盛のセットが、ご自宅でも楽しめるというわけです。


大城社長が、「これ以上の泡盛はできない!」と自信を持って贈り出す最高傑作「CKR1」。「くぅーすの杜 忠孝蔵」では試飲ができるので、その究極の味を確かめてくださいね。そして、沖縄から届く“三年後の感動”をぜひ味わってみませんか? 

くぅーすの杜 忠孝蔵(ちゅうこうぐら)

住所 /
沖縄県豊見城市字伊良波556-2
電話 /
098-851-8813
営業時間 /
9:00~17:30
定休日 /
木曜日・元旦
Webサイト /
http://www.chukogura.com/
※「CKR1」予約は、「くぅーすの杜 忠孝蔵」および公式サイトにて受付中。
https://chuko-awamori.com/ckr1/index.html

※見学案内時間:①10時 ②14時 1日2回
1団体8名様以上の場合はご相談ください。


※こちらの情報は、取材当時の情報です。最新の情報はHP、または直接お問い合わせください。

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