指司笠樋川で古代からの風にふかれる
指司笠樋川で古代からの風にふかれる
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あそぶ
初回投稿日:2014.08.25
最終更新日:2024.03.27
最終更新日:2024.03.27
首里桃原町(しゅりとうばるちょう)界隈は、古都ならではの静謐な時間が流れるエリア。
網の目のようにつながったいくつもの小道が道往く人の足をゆるりとさせ、
心に静けさをもたらしてくれます。
そこかしこに琉球王朝時代を偲ばせる歴史の足跡が点在していますが、
中でもすばらしいのが「指司笠樋川(サシカサヒージャー)」です。
樋川とは、人びとの暮らしとともにあったわき水のことで、
水の神様の恵みに感謝を捧げる拝所でもあります。
指司笠樋川は琉球王朝に王族として君臨した尚家の敷地内にあり、
第二尚氏王統三代国王 尚真王の長女、指司笠按司加那志(サシカサアジガナシー)が
フクギの大木にいつも鷺がとまるのを見て掘り当てたとの由来があるのだとか。
住宅街の壁につつましやかにかけられた看板を目印に
筋道へ折れると、奥のほうに緑が見えてきます。
「拝みをなさる方へ ここからご自由にお入り下さい 尚」と書かれたゲートは、
過ぎ去りし世への入り口のようです。
開きにくいゲートを少しだけ開いて体を滑り込ませ、
先へ進むと・・・
そこにあるのは、渾々と湧き続ける水とまわりを取り囲む石積み。
そして、石たちに天からそっと緑のレースをかぶせたような
苔や小植物たちだけです。
水と水がぶつかる音や葉叢がつくる影が風を呼び込むのか、
真夏でも涼感あふれるみずみずしい空間がひろがっています。
向かいにある石段を下りていくと、小さなトンネルの先に
「世果報御井小(ユガフウウカグワー)」もあります。
こちらも、井戸として使われていたようです。
木のようにやわらかな質感を持った琉球石灰岩と、
それらを覆う苔や小植物の緑がお互いを引き立て合って美しいのは、
ただ長いときを経たからでしょうか。
それとも、琉球王朝時代の建築家の長いときを飛び越え得た
想像力の賜物なのでしょうか。
正解はわかりませんが、見事に自然と調和した人工物は、
先人の叡智をものも云わずに今に伝えています。
「指司笠樋川」は、ほんのひととき足を止めるだけで、
沖縄が海に浮かぶ島の王国だったころの面影を、
呼吸をするように感じることができる神秘的な場所。
足で歩くスピードだからこそ出会える古都 首里の生きた遺跡を、
ぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。
なお、今でも井戸拝み(カーおがみ)に訪れる人がたえない場所です。
参拝者に配慮した見学を心がけてくださいね。
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