琉球和紙の伝統を。(桑村ヒロシの島フォトコラム[第14回目])

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歴史文化

初回投稿日:2016.04.22
 最終更新日:2024.03.27

琉球和紙の伝統を。(桑村ヒロシの島フォトコラム[第14回目])


沖縄には、やちむんや紅型(びんがた)などと同様に、琉球王府時代から受け継がれている伝統工芸があります。琉球紙(琉球和紙)もそのひとつです。琉球紙の代表的な紙には、芭蕉紙(ばしょうし)などがあり、お土産屋さんで見かけるかたもいらっしゃるかと思います。琉球伝統の手漉き紙は、芭蕉紙のほかにも、青雁皮紙(あおがんぴし)、楮紙(こうぞし)、楮雲龍紙(こうぞうんりゅうし)、三椏紙(みつまたし)があるほか、この写真のように天然の植物染料で様々な色合いの紙を作り出すことができます。
 
儀保の宝口(たからぐち)
 
琉球の紙漉きの歴史は1686年に遡り、薩摩から造紙法を習得。その技術を琉球に持ち帰ったあと、首里の金城から紙漉きがはじまり、山川、そして儀保の宝口(たからぐち)が、紙漉所となっていました。その伝統の宝口に、伝統を守り継いでいる紙漉き職人さんが、唯一ひとり残っているのです。
 
手漉き紙の道具の板
 
今も自然豊かな宝口に、手漉き紙の工房「蕉紙菴(しょうしあん)」を営む安慶名清(あげなきよし)さん。じつは、琉球の紙漉きの歴史は一度途絶えたのですが、人間国宝の安部榮四郎が復興させ、その愛弟子の勝公彦の流れを受け継ぐのが、安慶名さんなのです。
 
手漉き紙の工房「蕉紙菴(しょうしあん)」を営む安慶名清(あげなきよし)さん
 
ところが近年では、手漉き紙の需要が少なくなり、継承者不足も問題となっています。その理由のひとつには、同じ伝統工芸のように手間ひまがかかっているにもかかわらず、販売される価格がケタが1つほど安いこともあげられます。このまま需要が増えなければ、琉球紙の伝統が途絶えてしまうかもしれません…。そんな危機が迫っているのです。
 
手漉き紙の道具の板
 
沖縄県内外で活躍される版画家や書道家のみなさん、そしてクラフト作家さんたちにもっと活用してもらえたなら、と思うばかりです。沖縄の伝統を絶やさないためにも…。
 
手漉き紙を体験の準備
 
安慶名さんも、次世代を担う子供たちに手漉き紙を体験してもらう機会を積極的に作っています。学校や幼稚園の卒業証書や修了書を生徒自らが手作りして、伝統工芸を学び、手仕事を実体験していくワークショップを開催しています。
 
手漉き紙を体験

先日も、大宜味村(おおぎみそん)の喜如嘉(きじょか)小学校で芭蕉紙作りのワークショップが行われ、6年生は卒業証書、5年生以下は終了証書を手漉きしました。喜如嘉といえば、糸芭蕉を原料にした芭蕉布(ばしょうふ)が有名です。芭蕉布作りでは使わずに捨てられる糸芭蕉の内側の皮を使って作られるのが芭蕉紙です。じつは、今年3月で喜如嘉小学校は廃校となってしまいましたが、地元を象徴する芭蕉を使い、自分たちの手で漉いた卒業証書は一生の宝物となるに違いありません。伝統工芸もまた宝物。宝物が埋もれていかないように、大事なものに光が注がれますように、と願うばかりです。

手漉琉球紙工房「蕉紙菴(しょうしあん)」

住所 /
沖縄県那覇市首里儀保町4-89
電話 /
098-885-0404
備考 /
※様々な琉球紙を購入することができます。お気軽にお問い合わせください。

桑村 ヒロシ(KUWA)

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