緑に癒される自然庭園と、懐かしい沖縄に出会える小さな美術館《シャングリラ/森の小さな美術館》

緑に癒される自然庭園と、懐かしい沖縄に出会える小さな美術館《シャングリラ/森の小さな美術館》

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歴史文化

放送日:2024.08.19 ~2024.08.23

初回投稿日:2024.08.26
 最終更新日:2024.08.26

最終更新日:2024.08.26

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楽園と名付けられた自然庭園

南城市知念にある「シャングリラ」は、もともと山林だった約3500坪の土地に少しずつ手を入れて、20年以上の時間をかけて造り上げた安和朝忠(あわちょうちゅう)さんの庭園です。

「シャングリラというのは、“楽園”という意味です。自宅を兼ねた庭園の中にカフェがあったり、小さな美術館があったりします。自然の風景を皆さんにゆっくり見ていただいて、心癒されてほしいという想いで無料開放しています」と、安和さん。

広大な園内には散策路が敷かれていて、大きな樹木や石灰岩といった沖縄ならではの自然の造形美をそのまま生かした部分と、安和さんが手を入れて造り上げた部分とが調和した風景を楽しむことができます。

森の小さな美術館のあるご自宅(右側)と、cafe森のテラス(左側)があるシャングリラ
森の小さな美術館のあるご自宅(右側)と、cafe森のテラス(左側)があるシャングリラ

安和さん
庭園の手入れをすることは、安和さん日課であり楽しみの一つ

久高島を一望
テラスからは久高島を一望。水平線から昇る朝日も望めるそうです

サガリバナの蕾
四季折々の花々が彩る庭園。7月初旬にはサガリバナの蕾が膨らんでいました
 

懐かしい沖縄に出会える美術館

ご自宅の一角にある「森の小さな美術館」は、安和さんが30年に渡って収集してきた陶器や絵画など約100点のコレクションを公開している私設の美術館です。

陶器は、安和さんが沖縄県の台湾事務所に勤務していた頃に魅せられた中国陶器を、骨董市などでコツコツと買い集めたもの。文様がユニークな約3000年前のアンダーソン土器や、唐三彩(とうさんさい)という副葬用につくられた陶製の人形など、珍しい逸品が並んでいます。

絵画は、沖縄の作家の作品や、沖縄に関係するものを中心に県外から買い集めたもので、中には県外にあったことで戦災を免れたものもあるそうです。安和さんのお気に入りは、風景画で有名な画家の吉田博さんが明治45年頃の沖縄の青空市場を描いた油絵や、同じく市場を描いた版画作品。

「こうした作品は、沖縄の風俗の証言画でもあるんですね。こんなふうに郷土の歴史や文化を彷彿させるものがあれば購入しています。芸術に触れることは心の栄養になりますから、独り占めしないで皆さんに観ていただきたい」という安和さん。

絵画を通して、失われてしまった祭祀や、昔懐かしい暮らしの風景に出会えることも、森の小さな美術館の魅力です。

小さな美術館
ご自宅の一角を無料で開放している小さな美術館

安和さんご本人から解説を聞くこともできます
タイミングが合えば、安和さんご本人から解説を聞くこともできます

唐三彩
唐三彩など、沖縄ではなかなか見ることができない珍しい陶器も

スケッチ画
熊本の漫画家、那須良輔さんが沖縄を訪れた際に描いたスケッチ画

吉田博さんの作品、「鶏頭」
吉田博さんの作品、「鶏頭」。鶏が売り買いされている約110年前の沖縄の市場の様子が伺えます

精力的な活動を支える信念

今年80歳を迎える安和さんの朝は、訪ねてくるお客様をお迎えするための庭掃除から始まります。その後も、接客やボランティアのお仕事など、日々精力的に活動されている安和さんに元気の秘訣をお聞きすると…

「一つの信念というか、生き方を持っています。芸術家の岡本太郎さんの言葉に〝芸術は爆発だ〟というものがありますが、あれは個性の発動を指しているんですよね。僕も人生は爆発だと思っていて、今も爆発中ですよ。私の爆発の玉は、この庭や美術館になるんですね。訪れる皆さんにとってもぞれぞれの個性を発動できる、自由度の高い場所でありたいと思っています」という言葉の通り、シャングリラでは、お庭だけを何時間もかけて散歩する人、カフェで本を読む人、友人とのおしゃべりを楽しむ人など、それぞれが自由な時間を過ごしています。

ご友人たちとのおしゃべり
cafe森のテラスで、ご友人たちとのおしゃべりを楽しむ安和さん

自分にやれることをやりきる

安和さんが長年続けている活動の一つに、「悠遊会(ゆうゆうかい)」というグループがあります。現在のメンバーは、安和さんを含めた南城市在住の有志6人。月に1度、市内にあるビーチの東屋に集まることが定例です。

「15年前に10名でスタートして、今日までずっと飽きることなく続いているんですよ。メンバーの皆さんはすでに仕事の第一線を退いてるメンバーですが、まだまだ威力も能力もありますから、地域を活性化するために知恵を出し合って、自分たちにできることはないかと話しているんです」(安和さん)

この会でのおしゃべりから、かつて南城市で行われていた「半島芸術祭」などの企画が立ち上がったこともありません。昨年はメンバーで島根県の足立美術館を訪ねるツアーをも催すなど、その活動はまだまだ衰える兆しがありません。

「体の衰えは、そのまま精神の衰えではない」という安和さん。「サムエル・ウルマンの詩(青年の詩)をもじってね、興味や好奇心がなければ若い人でも老人ですよ、と。年齢的には老人であっても、絶えず明日を語ったり、将来の夢を追い求める人たちは万年青年だということです」 と言います。

「夢は100歳に向かって生きること。そのために、自分にやれることをやりきる」という安和さんの生き方が、シャングリラという楽園で静かに、そして力強く伝搬しています。

「悠遊会」の定例会
15年間続いている「悠遊会」の定例会。よもやま話から企画が生まれることも

「悠遊会」のメンバー
自らを〝万年青年〟と呼び、いきいきと夢を語る「悠遊会」のメンバー

シャングリラ/森の小さな美術館/cafe森のテラス

住所 /
沖縄県南城市知念字知念143-3
TEL /
098-949-1666
営業時間 /
11時〜17時(カフェのL.O)

沖縄CLIP編集部

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放送日:2024.08.19 ~ 2024.08.23

  • 放送日:2024.08.19

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  • 放送日:2024.08.23

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