琉球舞踊と咲かせる花《平敷屋門勇也》

琉球舞踊と咲かせる花《平敷屋門勇也》

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歴史文化

放送日:2024.06.03 ~2024.06.07

初回投稿日:2024.06.11
 最終更新日:2024.06.11

最終更新日:2024.06.11

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つながれてきたものに感謝して

ある日の午後、うるま市勝連平敷屋の集落に、琉球舞踊家 平敷屋門勇也さんの姿がありました。聞けば、数日後に控えた舞台公演に向けて平敷屋門(方言で、ひっちゃじょう)門中にご挨拶に来たとのこと。

「舞台に立つことをウヤファーフジ(ご先祖様)にご報告しにきました」と、神屋で手を合わせる勇也さん。たくさんのつながりの中で、今、舞踊ができることへの感謝を捧げているそうです。

勇也さんが琉球舞踊をはじめたのは4歳の時。「物心ついたころから“沖縄の芸能をやりたい”と自分から言い出して。“じゃあ4歳になったら稽古場に連れて行くよ”と言われて、本当に4歳の誕生日の次の週くらいに道場に連れて行ってもらって」という勇也さん。そこからスタートした舞踊家人生ですが、ずっと順風満帆だったわけではありません。

「小学校、中学校ではサッカーをやっていて、“こんな女みたいな格好は嫌だ”とか、親戚から“勇也、踊って〜”なんて言われると、生意気にも、本当に嫌で仕方がなかった時期もありました」。高校卒業後は上京して働き、芸事と離れていた時期もあったそうですが、21歳の時に沖縄に戻り、再び琉球舞踊と向き合うことになりました。

その時に気がついたのは、自分が変わると世界が変わるということ。
「もう1回、琉球舞踊を学びたい、という気持ちで習ってみると、見えてくる世界が全く違うというか。“こんなにも奥深い世界だったのか”と。そこからはもう、とにかく必死で」琉球舞踊の世界に邁進していったそうです。

平敷屋門勇也さん
勝連平敷屋出身の平敷屋門勇也さん。舞台公演の前に平敷屋門門中を訪ねます

ご先祖様に手を合わせます
ご先祖様に手を合わせて、たくさんの人に支えされていることに感謝します

琉球舞踊
琉球舞踊をはじめた頃、まだあどけない表情の勇也さん
 

自分の中心に「琉球舞踊」がある

沖縄市泡瀬にある平敷屋門勇也さんの道場では、「国立劇場おきなわ」での公演に向けて、稽古が行われていました。舞踊のお師匠である赤嶺啓子さん(玉城流光乃会 赤嶺啓子琉舞道場、沖縄県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者)に舞踊家としての勇也さんについて尋ねると、「何事にも一生懸命で、特に舞台にかける情熱は、私でも圧倒されるくらいすごいものがありますね」とのお言葉。

今では、琉球舞踊家としてだけでなく、創作舞踊集団を主宰したり、沖縄芝居の世界でも活躍する勇也さんですが、「琉球舞踊は今のあなたにとってどのようなものですか?」と問いかけてみると、「僕のすべての中心にあるものが、琉球舞踊。自分の中心にあって、いつも自分をコントロールしているもの。その中心があるからこそ、いろいろなことに携わってチャレンジしています」と答えてくれました。

勇也さんが考える琉球舞踊の魅力は、その世界観。「たとえば古典女踊りだったら、内に秘めたものをゆっくりとした所作で表現します。踊っている人の空間、世界観に、一瞬で惹きつけられることが琉球舞踊の魅力だと思っていますので、そこに少しでも近づいていけたらと思っています」

赤嶺啓子師匠
自らの道場で赤嶺啓子師匠に稽古をつけてもらう勇也さん

女踊りの舞台化粧
女踊りの舞台化粧。眉と、紅を引く時に、女性の気持ちがスッと入るそう

勇也さん
勝連平敷屋の浜辺で舞う勇也さん

子どもたちに伝えたいこと

勇也さんは今、3歳から高校2年生まで、16名の子どもたちに琉球舞踊を教えています。ある日のお稽古を見学させてもらうと、とっても元気でにぎやか!小さな子どもたちは道場を駆け回って、少しもじっとしていません。

「きっと、僕もこうだったんだろうなって(笑)。元気な子もいれば、生意気な子もいて、“絶対に行きたいくない!っていいながら来る子とか(笑)、めちゃくちゃかわいいんですよ」と、勇也さん。舞踊については教える立場だけれど、実際には子どもたちの方から教えられることもあるそうです。「先生、練習の時にはなんで着物を着なくちゃいけないの?とか、ここの所作はどういう意味ですか?とか、僕が気づいていないことに、子どもたちが気づかせてくれることがあります」

琉球舞踊を教えながら、勇也さんが子どもたちに伝えたいと思っているのは、沖縄の芸能にふれる楽しさ。「せっかく沖縄に生まれんだから、沖縄の舞踊、芸能にたくさんふれてほしい。彼らが大人になって、僕みたいに20代、30代になった時に舞踊の奥深さを知って、もっと深く本格的に学びたいという域に辿り着くと思うんですけれど、それまでは、とにかく純粋に楽しんでほしいと思います」

勇也さん
元気いっぱいの子どもたちに負けじと、エネルギーいっぱいで応える勇也さん

高校生の生徒さん
高校生の生徒さんたちは、舞踊コンクール入賞を目指して切磋琢磨しています

着物をきれいに畳みます
お稽古着を大切に、着物をきれいに畳んでからお稽古が終わります

未来の伝統を、今つくる

「チャンプ流ぅ芸能団」は、勇也さんをはじめとする、それぞれにジャンルの異なる3名の若手芸能家によるユニットです。
「唄三線、古典琉球音楽、そして琉球舞踊。ひとつにくくると、“ウチナーの芸能”です。それを一つの舞台で見せる。もちろん、それぞれの得意分野も見せるけれど、今の時代に合った、子どもからお年寄りまで楽しめる舞台作りをしたいねということで、チャレンジしています」と、勇也さん。
「いつもは伝統芸能に携わっているメンバーなので、“しっかり伝統を継承していく”という点では、みんな気を張りつめて舞台に立っていると思うんですけれど、チャンプ流ぅ芸能団では自分たちなりの発信の仕方だったり、表現を追い求めています」(メンバーの民謡歌手、仲宗根創さん)
「それぞれがやっている芸能の分野で携わって、新しいものを生み出して、どう楽しく伝えていけるか。そして僕たち自身がどう楽しめるか、ということを考えながらやっています。常に挑戦ですね」(メンバーの古典音楽家、知念勝三さん)

実際の公演は、即興コントあり、歌あり、踊りありで、舞台からも客席からも笑いが絶えない唯一無二の舞台。熱烈なファンがいるというのもうなづけます。
「ものを作るということに関しては、先人の先輩方もきっとそうだったんだろうなと。その時代に求められている、自分たちなりの舞台を作り上げたいという強い想いがあって、それを詰め込んだ舞台です」(勇也さん)

チャンプ流ぅ芸能団
平敷屋門勇也、仲宗根創、知念勝三の3名の芸能家による「チャンプ流ぅ芸能団」

舞台リハーサルの様子
舞台リハーサルの様子。勇也さんいわく「え、こんな感じで舞台やるの?っていうくらい、どんちゃん騒ぎな楽しい舞台です」

舞台の上で花開く
勇也さんのwell-beingは、これからも舞台の上で花開いていきます

平敷屋門勇也

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沖縄CLIP編集部

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