ゆーふるやーに恋して《中乃湯》
ゆーふるやーに恋して《中乃湯》
Reading Material
歴史文化
放送日:2024.03.25 ~2024.03.29
初回投稿日:2024.04.19
最終更新日:2024.08.23
最終更新日:2024.08.23
沖縄市のコザ十字路、銀天街からほど近い安慶田の住宅街に、1960年ごろに創業した源泉掛け流しの銭湯「中乃湯」があります。90歳になる店主の仲村シゲさんが、創業者で夫の次郎さん亡き後、約60年にわたって一人で切り盛りててきた、 沖縄に現存する最後のゆーふるやー(沖縄式銭湯)です。
1日の始まり
中乃湯は、次郎さんが約60年ごろ前に、地下350mで水脈を掘り当てたことから始まりました。シゲさんは毎日、中乃湯の敷地内にある井戸まで行き、コンプレッサーで鉱泉を汲み上げて、屋上の大きな貯水槽にため、ボイラーで沸かして浴槽に注ぎます。
夕方になると、また敷地を移動してコンプレッサーのスイッチを切り、圧を抜きます。雨の日も風の日も、水を汲み上げるために15分、圧を抜くにも20分以上もの時間がかかりますが、シゲさんはそばでじっとそのようすを見守っています。
コンプレッサーの前で、じっと待つシゲさん
汲み上げた鉱泉をためる屋上の貯水槽
毎日、杖をつきながら敷地内を歩き、お風呂の準備をする
夕方になると、また敷地を移動してコンプレッサーのスイッチを切り、圧を抜きます。雨の日も風の日も、水を汲み上げるために15分、圧を抜くにも20分以上もの時間がかかりますが、シゲさんはそばでじっとそのようすを見守っています。
コンプレッサーの前で、じっと待つシゲさん
汲み上げた鉱泉をためる屋上の貯水槽
毎日、杖をつきながら敷地内を歩き、お風呂の準備をする
昭和を感じるレトロな銭湯
中乃湯は14時オープン。脱衣所と浴室に仕切りがない開放的な作りは、ゆーふるやーの大きな特徴です。入浴料は、大人370円(2024年4月現在)。毎日のように多くの地元客で賑わったアメリカ統治下の1970年ごろは15セントだったそうです。
「沖縄市にも20、那覇にも30ぐらいの銭湯があったけど、燃料も高くなって、みーんなやめてしまったさ。でも私はやめないよ〜。だって夫が井戸を掘ったから、水はたくさんあるのに」とシゲさん。
ボイラー室への行き来やお客さんとのやりとりの利便性から、番台は 使っていません。お客さんとおしゃべりが弾む入り口のべンチがシゲさんの定位置
脱衣所と浴室がひと続きになっている。蛇口は混合栓ではなく、湯と水の単水栓をゴムホースとY字形の三方継手でつないでいる
正面壁の裏がボイラー室。湯加減を調整してくれる中乃湯応援団(SNS内で立ち上がった、中乃湯を応援するグループ)のメンバーもいる
「沖縄市にも20、那覇にも30ぐらいの銭湯があったけど、燃料も高くなって、みーんなやめてしまったさ。でも私はやめないよ〜。だって夫が井戸を掘ったから、水はたくさんあるのに」とシゲさん。
ボイラー室への行き来やお客さんとのやりとりの利便性から、番台は 使っていません。お客さんとおしゃべりが弾む入り口のべンチがシゲさんの定位置
脱衣所と浴室がひと続きになっている。蛇口は混合栓ではなく、湯と水の単水栓をゴムホースとY字形の三方継手でつないでいる
正面壁の裏がボイラー室。湯加減を調整してくれる中乃湯応援団(SNS内で立ち上がった、中乃湯を応援するグループ)のメンバーもいる
愛される中乃湯 応援団によるサポート
シゲさんが一人で営んでいた中乃湯ですが、高齢による体力の衰えもあり、営業時間を徐々に短縮、この15年ほどは14時〜18時ごろまでの営業でした。
2022年、沖縄に移住して以来中乃湯のファンだったという鈴木花奈さんが、「沖縄でお風呂屋さんがしたい、中乃湯のサポートをしたい」と話してみましたが、「風呂屋は難儀なだけで儲からないからやめなさい」と受け入れてもらえませんでした。それでも諦めきれなかった鈴木さんは、奈良の銭湯へ修業に出ます。
ある時、シゲさんの一人息子の一郎さんや中乃湯ファンたちが立ち上げたSNS上のグルー プ「中乃湯応援団」を知った鈴木さんは、中乃湯存続のために役に立ちたいこと、 そのために奈良の銭湯に修業に来ていることを投稿し、その熱い思いが伝わって、 中乃湯でお手伝いをすることになりました。鈴木さんの参加をきっかけに、15年に夜営業も再開。当初は14時〜16時はシゲさん、18時〜22時は鈴木さんがサポートする予でした。しかし、18時を過ぎてもシゲさんはいつものべンチに座り、最後の片付けまで終えてから帰宅します。 「公衆浴場はみんなのもの。特に中乃湯はお客さんに支えられている面がある。みんなで、地域で、守っていくのが一番だと思います」と鈴木さん。
「修業先で、掃除のコツは掴んできました」と鈴木さん
2022年、沖縄に移住して以来中乃湯のファンだったという鈴木花奈さんが、「沖縄でお風呂屋さんがしたい、中乃湯のサポートをしたい」と話してみましたが、「風呂屋は難儀なだけで儲からないからやめなさい」と受け入れてもらえませんでした。それでも諦めきれなかった鈴木さんは、奈良の銭湯へ修業に出ます。
ある時、シゲさんの一人息子の一郎さんや中乃湯ファンたちが立ち上げたSNS上のグルー プ「中乃湯応援団」を知った鈴木さんは、中乃湯存続のために役に立ちたいこと、 そのために奈良の銭湯に修業に来ていることを投稿し、その熱い思いが伝わって、 中乃湯でお手伝いをすることになりました。鈴木さんの参加をきっかけに、15年に夜営業も再開。当初は14時〜16時はシゲさん、18時〜22時は鈴木さんがサポートする予でした。しかし、18時を過ぎてもシゲさんはいつものべンチに座り、最後の片付けまで終えてから帰宅します。 「公衆浴場はみんなのもの。特に中乃湯はお客さんに支えられている面がある。みんなで、地域で、守っていくのが一番だと思います」と鈴木さん。
「修業先で、掃除のコツは掴んできました」と鈴木さん
中乃湯の明かりを灯し続ける
シゲさんの息子の一郎さんは、週末になると中乃湯に行き、掃除を担当します。
「中乃湯はお客さんたちの温かい気持ちで成り立っています。それが本当に伝わってくるので、ありがたく、簡単にやめられないなという気持ちです。たったひとりで銭湯を切り盛りし、洋裁と掛け持ちしながら、がんばって育ててくれた母に、少しでも恩返しをしたいと思っています」
沖縄のゆーふるやー中乃湯で、今日もシゲさんはお客さんを待っています。
「中乃湯はお客さんたちの温かい気持ちで成り立っています。それが本当に伝わってくるので、ありがたく、簡単にやめられないなという気持ちです。たったひとりで銭湯を切り盛りし、洋裁と掛け持ちしながら、がんばって育ててくれた母に、少しでも恩返しをしたいと思っています」
沖縄のゆーふるやー中乃湯で、今日もシゲさんはお客さんを待っています。
中乃湯
- 住所 /
- 沖縄県沖縄市安慶田1-5-2
- 営業時間 /
- 14時〜21時
- 定休日 /
- 木・日曜日
- 料金 /
- 大人(12歳以上)370円、中人(6歳以上)170円、小人(6歳未満)100円
- 備考 /
- ※2024年4月現在の情報です
TVアーカイブ配信中
放送日:2024.03.25 ~ 2024.03.29
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放送日:2024.03.25
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放送日:2024.03.26
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放送日:2024.03.27
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放送日:2024.03.28
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放送日:2024.03.29
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