沖縄のKOKUTOを世界共通ワードに《タイムレスチョコレート》

沖縄のKOKUTOを世界共通ワードに《タイムレスチョコレート》

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歴史文化

放送日:2024.04.08 ~2024.04.12

初回投稿日:2024.05.04
 最終更新日:2024.08.23

最終更新日:2024.08.23

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産地に思いを馳せるもの作り

北谷町砂辺にある「タイムレスチョコレート」は、沖縄初の「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」専門店。「Bean to Bar」とは、Bean(カカオ豆)からBar(板チョコレート)になるまでの工程を、一貫製造するスタイルのこと。タイムレスチョコレートでは、厳選したカカオ豆とサトウキビでチョコレートを作っています。

オーナーの林正幸さんは、オーストラリアのメルボルンでエスプレッソの奥深さに惹かれました。

「コーヒーを通して、まるで世界のどこかを旅をしているような気持ちになりました。濃縮したエスプレッソに砂糖を合わせて、自分の味を作り上げるおもしろさ。しかし現地の人は、コーヒー豆のテロワールにはこだわるのに、砂糖にはそれほど注目していなかったんですね。私も産地に思いを馳せるようなもの作りがしたいと思った時、砂糖に魅力を感じました。沖縄には黒糖文化があることを思い出し、砂糖の可能性を探りたいと、沖縄への移住を決めました」と、林さん。

タイムレスチョコレート外観
北谷町砂辺、馬場公園の近くにあるタイムレスチョコレートの玄関で、カカオ豆の仕分けをするスタッフ

豆
割れている豆や虫食いなどで傷んだ豆をより分けていきます

商品管理
厳重な商品管理のもと、店舗奥の工房でチョコレートを作っています

林さん
厳重な商品管理のもと、店舗奥の工房でチョコレートを作っています

カカオと黒糖が生み出すチョコレート

タイムレスチョコレートでは、自然の味をどう活かすかを大切にし、手間暇はかかりますが、原料はカカオ豆とサトウキビのみというシンプルなチョコレート作りをしています。

カカオもサトウキビも、産地によっても、取れる年度や時期によっても味は異なります。それらを合わせていくところにチョコレート作りの奥深さがあるようです。

林さんが続けます。「お店で、できたばかりの黒糖をお客さんに食べてもらった時に、”やーがなんでこの味を知ってるばー。私にとって黒糖はこの味が本物だよ。ヤマトンチュ(大和人)がなぜこの味を知っているのかびっくりしている。このおいしさをもっと広めてちょうだいね“と涙しながら話してくださったんです。その黒糖は、宜野座のサトウキビ農家で黒糖職人の渡久地克さんが作られた、昔ながらの黒糖。農薬を使わず、健康なサトウキビだけを手刈りして、薪とシンメーナービ(沖縄の伝統的な調理器具)で炊いた黒糖でした。この味を後世に伝えていくことは沖縄にとってのヌチグスイ(命の薬)を繋いでいくことではないかと思います。

海外の友人に黒糖を食べてもらった時にも、”これはなんのスイーツだ?“と驚かれました。そもそもお砂糖を食べる文化が少ない外国では、黒糖はまだ未知の存在。沖縄に黒糖の製法が伝わって400年ですが、島によって技術や黒糖への思いが長い歳月をかけて成熟している。こんな島は世界中にどこにもないと確信しています」

チョコレート種類
サトウキビの島と知られる沖縄ですが、本島では、ほとんどが上白糖などを製造していて、黒糖になるのは本当にわずか。現在、サトウキビから黒糖を製造し、出荷しているのは、伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島の八つの離島のみ。それぞれのテロワールによって色や味わい、風味は異なります。

チョコレートのバー作り
チョコレートのバー作り

サトウキビの魅力を掘り下げたくて

タイムレスチョコレートに長く勤めた宮崎雄志さんは、チョコレートとサトウキビから生まれる黒糖や砂糖を追求するうちに、自分でもサトウキビを育ててみたい、世界に通用する黒糖を作りたいと、2023年に独立。現在は畑を借りて、サトウキビ農家に転身しました。同時に、黒糖の商品開発にも携わっています。

「どんなに強い台風が来て、なぎ倒されても、サトウキビは重力に逆らって必ず天を向いて伸びますよね。その底力みたいなところが好きなんです。ほおっておいても勝手に育つイメージがありますが、手をかけるとやっぱり違う。畑がうっそうとしていると、ネズミが増え、サトウキビが齧られて生育が悪くなるので、できるだけ根元まで太陽と風が通るように手入れをします」

サトウキビにはもっと発信できる魅力があるのでは? と考えている宮崎さんは、近年品種改良などによって見られることが少なくなったサトウキビの花にも注目しています。

「僕はサトウキビにいろんな価値をつけたいと思います。例えば12月から4月ごろまで咲く花もかわいい。その花を東京の作家に送り、フラワーアレンジメントの作品に仕上げてもらったら、とても好評で。長持ちするので、需要はあるんじゃないかと思います。農家さんの収入になったらいいな」

宮崎雄志さん
「サトウキビの花言葉は“平和”。素敵な言葉ですよね」

シンメーナービと薪で炊く黒糖作り
 宜野座村在住のサトウキビ農家で黒糖職人、渡久地克さんのシンメーナービと薪で炊く黒糖作り    

素材をもっと大切にするプロセスが大事

現在のサトウキビ業界は、ハーベスターで大量に収穫したサトウキビの糖度と重量で価格が決まります。しかし、どういうサトウキビの品種を、どんな環境で育て、どんな風に収穫し、何時間後に圧搾して、どんな道具とエネルギーを用いて黒糖に仕上げていくのか。

チョコレート同様、黒糖作りもシンプルだからこそ、そのプロセスにこだわっていきたいと二人は言います。

「何が正しいとかはありませんが、僕たちは薪で炊き、薪の香りがのった味わい深い黒糖が好きなんです」と宮崎さん。昔ながらの黒糖職人たちは、黒糖が出来上がる時、人間の赤子が誕生するように「うまりん(生まれるの沖縄方言)」と言うそうです。

サトウキビ
宮崎さんはタイムレスチョコレートのカカオハスクをサトウキビ畑に巻いて、カカオの香りのするサトウキビを研究中

収穫したてのサトウキビを絞ってジュースに
収穫したてのサトウキビを絞ってジュースに。雨が続いたサトウキビの搾汁は味わいもジューシー、日照りが続いたサトウキビからは生まれる黒糖は密度が高いとか

刈りとってすぐに絞るジュース
刈りとってすぐに絞るジュースは、梨やリンゴのように爽やかなおいしさ

サトウキビにタイムレスな価値をつけ、次の世代に繋いでいく

サトウキビ農家も高齢化が進む今、沖縄の産業として続いていくためにはどうしたらいいか。サトウキビにきちんとした価値をつけたいという思いで、林さんはチョコレートを、宮崎さんはサトウキビを育てます。

「私たちは、カカオとサトウキビがあれば、100年後でもその時代に合わせた一番のレシピでチョコレートを生み出すことができます。沖縄という土地で、サトウキビの発展にどう帰依できるか、見守りながら共に成長していきたい。最終的にはサトウキビ畑の目の前にタイムレスチョコレートがあったら、こんなに説得力のあることはない。私の夢です」と林さん。

「世界の辞書に、KOKUTOという言葉があったらかっこいいじゃないですか!」

林さんと宮崎さんの熱い想いはタイムレスです。

タイムレスチョコレート

住所 /
沖縄県北谷町宮城3−223
TEL /
098-923-2880
営業時間 /
9時〜18時
公式サイト /
https://timelesschocolate.com/
公式サイト /
https://minamino.supersale.jp/(Grrrounds.)

沖縄CLIP編集部

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放送日:2024.04.08 ~ 2024.04.12

  • 放送日:2024.04.08

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