並木道が地域をつなぐ《壺屋並木道》
並木道が地域をつなぐ《壺屋並木道》
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放送日:2024.05.06 ~2024.05.10
初回投稿日:2024.05.19
最終更新日:2024.08.29
最終更新日:2024.08.29
目次
観光客が行き交う国際通りから浮島通りに入り、徒歩5、6分。サンライズ通りの向こう側には、ホルトノキの並木道が続いています。
幅数メートルの道を挟むだけで、市場周辺の喧騒と切り離された静かな並木の通りには、名前がありません。
このエリアは昔、昼は繊維の問屋街として賑わい、夜は国際通りや桜坂社交街で飲んだ大人たちが、神里原社交街へ向かう道でした。
この地に洋装店を開いて30年、「ヨコイ商事」のみっちゃんが毎朝落ち葉を掃く姿は、今では風景の一部です。
「1日でも放っておいたらもう大変よ。落ち葉は手間のかかる我が子のようね」
自身の店舗前だけでなく、通りをいつもきれいに掃除してくれるみっちゃんです
この建物は昔、男子学生憧れのファッションビルだったそう。流行に敏感な若者が遠方からも訪れて、洋服を仕立てていました
幅数メートルの道を挟むだけで、市場周辺の喧騒と切り離された静かな並木の通りには、名前がありません。
このエリアは昔、昼は繊維の問屋街として賑わい、夜は国際通りや桜坂社交街で飲んだ大人たちが、神里原社交街へ向かう道でした。
この地に洋装店を開いて30年、「ヨコイ商事」のみっちゃんが毎朝落ち葉を掃く姿は、今では風景の一部です。
「1日でも放っておいたらもう大変よ。落ち葉は手間のかかる我が子のようね」
自身の店舗前だけでなく、通りをいつもきれいに掃除してくれるみっちゃんです
この建物は昔、男子学生憧れのファッションビルだったそう。流行に敏感な若者が遠方からも訪れて、洋服を仕立てていました
出会いの交差点「ガーブドミンゴ」
もともと東京でデザインや建築の仕事に携わり、町づくりや旅に興味があったガーブドミンゴの藤田俊次さんと奥様の日菜子さんは、日菜子さんの故郷、沖縄へ移住する際、「過去と今をつなぐ、出会いの交差点のようなお店」を作りたいと思っていました。
理想は、国際通りからだいたい半径400m以内。地図を片手に歩く裏道を感じられるような場所を探し、行き着いたのがアジアの雰囲気漂うこのエリアでした。
そして、実は、日菜子さんが生まれ育った地元でもあったのです。
風情ある佇まいに惹かれ、契約を即決したという建物
「広くない店内は、お客さんがひと組入ると、もういっぱい(笑)。だからお話も弾みます。国際通りではきっとそうはいかないですよね」
ガーブドミンゴは、県内外の器を扱うセレクトショップとして2009年に創業、この間、通りには新しいお店が入り、地域が緩やかに活気づいてきました。
観光で訪れる人に、那覇での滞在時間を増やしてほしいという思いのもと、アートを軸に町歩きを楽しめる「NAHA ARTMAP」の制作や「ART WALKイベント」の開催、「協力店で使える共通お買い物券」の発行など、観光客と地域の点(お店)を線(歩く)でつなぎ、面(町を楽しむ)にするさまざまな取り組みを行ってきました。
地域の仲間たちと、名前のないこの通りを「UKUMO(浮雲)」と名付け、制作した近隣のお散歩マップでは、路地裏の楽しみ方を提案しています。
UKUMO界隈には、一点物を扱う個性的なお店が点在。旅先の一期一会にワクワクします
「子どものころはあって当たり前の景色でしたが、並木がなかったらこの地にガーブドミンゴはありませんでした。木はゆっくりと成長していきますよね。建物も時を重ねていく。その対比で時代と空気感とか、風景が記憶されていくというのがとてもいいなと思っています」
ガーブドミンゴは、日菜子さんの子どもの頃の思い出にちょっとお邪魔したような気持ちになれる、そんな存在なのかもしれません。
理想は、国際通りからだいたい半径400m以内。地図を片手に歩く裏道を感じられるような場所を探し、行き着いたのがアジアの雰囲気漂うこのエリアでした。
そして、実は、日菜子さんが生まれ育った地元でもあったのです。
風情ある佇まいに惹かれ、契約を即決したという建物
「広くない店内は、お客さんがひと組入ると、もういっぱい(笑)。だからお話も弾みます。国際通りではきっとそうはいかないですよね」
ガーブドミンゴは、県内外の器を扱うセレクトショップとして2009年に創業、この間、通りには新しいお店が入り、地域が緩やかに活気づいてきました。
観光で訪れる人に、那覇での滞在時間を増やしてほしいという思いのもと、アートを軸に町歩きを楽しめる「NAHA ARTMAP」の制作や「ART WALKイベント」の開催、「協力店で使える共通お買い物券」の発行など、観光客と地域の点(お店)を線(歩く)でつなぎ、面(町を楽しむ)にするさまざまな取り組みを行ってきました。
地域の仲間たちと、名前のないこの通りを「UKUMO(浮雲)」と名付け、制作した近隣のお散歩マップでは、路地裏の楽しみ方を提案しています。
UKUMO界隈には、一点物を扱う個性的なお店が点在。旅先の一期一会にワクワクします
「子どものころはあって当たり前の景色でしたが、並木がなかったらこの地にガーブドミンゴはありませんでした。木はゆっくりと成長していきますよね。建物も時を重ねていく。その対比で時代と空気感とか、風景が記憶されていくというのがとてもいいなと思っています」
ガーブドミンゴは、日菜子さんの子どもの頃の思い出にちょっとお邪魔したような気持ちになれる、そんな存在なのかもしれません。
アンティークという記憶で未来とつなぐ「20世紀ハイツ」
国際通りからほど近いとは思えない静かなエリア
毎年、12月の第2土・日曜日に開催する、沖縄最大級の「南の島の蚤の市 オキナワ マルクト」を主催する20世紀ハイツには、沖縄の家庭に残る器や骨董から、全国の蔵に眠る、歴史を物語るお宝までが並んでいます。
本店を宜野湾市に持つオーナー須藤ケンタさんのもとに、ある時、ガーブドミンゴの藤田さんから電話が入ります。
「角の薬屋さんが空くそうです。そろそろ那覇でどうですか?」
誘われて、改めて並木道を見たケンタさんの奥様の香代子さんは
「古い物を大事に次の世代につないでいきたいというのがお店のコンセプトだったので、並木道が生み出す空気がとても合っているなと思いました。お店を構えているみなさんが、通りのレトロな雰囲気を生かそうとしているところも好き」
さまざまな品が持つ時代背景や持ち主の思いを受けとめ、20世紀ハイツが次の時代へリレーする姿を、並木道は今日も見守っています。
ここだけ時間が止まっているような不思議な魅力に溢れた店内。観光客のリピーターさんも多いそうです
「通りの人たちがゆる〜く同じ方向を向いているのが心地いいです」と香代子さん
店主の好きが詰まった「カフェ プラヌラ」
木漏れ日が優しい通りに面したカフェ
カフェプラヌラは、アンティークな器でいただく紅茶やおいしいロールケーキに昭和なプリン、書棚にずらりと並ぶ本や古着、雑貨など、オーナー戌亥近江さんの好きが溢れたカフェ。
もともとはパラダイス通りで営んでいたお店ですが、ガーブドミンゴの藤田さんから「並木道いいよ!」と誘われて移転し、今年で16年目を迎えます。
「町の人たちが並木と共存することを大切にしている感じが好きです。この場所で根を張らせていただいただき、とてもありがたいと思います」
戌亥さんは、2017年に仲間達と世界的なアーティスト「テオヤンセン」と、彼が作った人工生命体「ストランドビースト」を沖縄に招き、沖縄の人たちに夢や想像力、感動を与えてくれました。昔からテオヤンセンの世界観が大好きだった戌亥さんが、プロジェクトに熱烈なメッセージを送って実現した夢のような企画。「テオヤンセン展」を個人で主催した例は、世界的にも類を見ないそうです。
戌亥さんの「好きだから」という原動力、その無限の可能性に大きな力をもらいました。
沖縄でおいしい紅茶のお店が少なかった時代から、一貫して紅茶にこだわっています
プラヌラと、創業120年の老舗「謝花きっぱん店」とのコラボレーションで生まれたタンカンティー(写真奥)。ルイボスティーをベースに、きっぱんづくりで使用するタンカンの皮をピールにし、柑橘の香りと爽やかさをブレンドしました
築55年のビルがニュースポットに。「沖縄不動産文庫の壺屋ビル」
2022年、もともと刺繍屋だった建物を壺屋ビルとして生まれ変わらせた沖縄不動産文庫は、不動産のユニークなストーリーを魅せる「ディ・スペック」も運営しています。
オーナーの古謝淳也さんは、個性的なお店が集まる並木道で、存在感のあるこのビルをどのようにリノベーションするか悩みました。
過去にディ・スペックが入っていたビルは、テナント同士がいい距離感を保ち、連携していたことを思い出し、地域との関係性を大切にしたいと、55年の景観をそのままに、入居するお店とともに、幅広い層の人々が集う場所へと発展させました。
国際通りから浮島通りを進み、サンライズ通りを抜けた右手に佇む壺屋ビル
「こんなに企画力のある素敵なお店が集中するエリアもなかなかないのでは?」と古謝さん
オーナーの古謝淳也さんは、個性的なお店が集まる並木道で、存在感のあるこのビルをどのようにリノベーションするか悩みました。
過去にディ・スペックが入っていたビルは、テナント同士がいい距離感を保ち、連携していたことを思い出し、地域との関係性を大切にしたいと、55年の景観をそのままに、入居するお店とともに、幅広い層の人々が集う場所へと発展させました。
国際通りから浮島通りを進み、サンライズ通りを抜けた右手に佇む壺屋ビル
「こんなに企画力のある素敵なお店が集中するエリアもなかなかないのでは?」と古謝さん
沖縄のよいものを 新しいデザインで、世界に発信 「シーエムワイケー」
シーエムワイケーの店内には、老舗の企業とのコラボ商品や、地域の素材をもとに開発したオリジナルグッズが並びます
2023年、アメリカのボストンから沖縄に移住し、デザイン会社シーエムワイケーを立ち上げた松丸三枝子さん。
気候が暖かく、ものづくりが盛んな沖縄で、ローカルビジネスとコラボレーションした商品づくりをしたいと思い、那覇で事務所兼の店舗を探していたところ、壺屋ビルと出合いました。
「並木道と風情ある古い町並みがボストンと似ていて。ガラス張りの素敵な壺屋ビルの1Fにひと目惚れし、すぐにディ・スペックさんを訪れて、即決しました。この物件、このコミュニティに出合えて本当にラッキーでした」
沖縄の土地勘も歴史の知識もなかった松丸さんですが、沖縄のものづくりを深く知るために、歴史の教科書やローカル雑誌などで学び、小さな企業にアプローチを続けました。
ただデザインを一新するのではなく、ものづくりの背景を掘り下げて、商品の良さを引き出すよう注力しているそうで、時には松丸さんがマサチューセッツ工科大学で学んだテクノロジーやノウハウも活かします。
例えば、AR(スマートフォンやスマートグラスを通し、目で見ている光景にCG映像などが合成され、実存するように見える技術)をプラスしたパッケージなども。
沖縄の商品を多くの人に手に取ってもらえるようにデザインし、販売までも行う地域ビジネスモデルはグッドデザイン賞を受賞しました。
昨年は近隣のお店たちと連携して、二度の壺屋ナイトマーケットを開催しました。アートイベントと融合した前回は、「沖縄アールデコ(ここでは、さまざまな時代や文化が融合したチャンプルーと定義)」をコンセプトに、アートや音楽で夜に光のなかった通りに明かりを灯し、新しい人の流れを生み出しました。
シーエムワイケーと「第37代泡盛の女王」たちとのコラボレーション商品「AR泡盛ボトル」。QRコードを読み取ると泡盛の女王が奏でる三線の音色を楽しめるほか、クイズ形式で泡盛の知識を深めることができます
通りを歩く人に優しい日陰を作るホルトノキ
ホルトノキの並木道は、時の移ろいを人々の心に記憶する道しるべなのかもしれませんね。
壺屋の通りとお店たち
- ガーブドミンゴ /
- https://www.garbdomingo.com/
- 20世紀ハイツ /
- https://www.20century-heights.com/
- カフェプラヌラ /
- https://cafeplanula.stores.jp
- 沖縄不動産文庫 /
- https://www.dspec.jp/
- シーエムワイケー /
- https://seeemwhyk.com/
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