生きがいのある働く場を支援する《トゥムヌイ福祉会》

「道の駅いとまん」には、完全予約制の焼肉店があります。名前は「ばんない」。沖縄式島豚焼肉をキャッチフレーズに、沖縄ならではの食材を看板に据えてお客様をもてなしています。調理や接客を担当するのはトゥムヌイが運営する就労継続支援事業所の利用者さんたち。一人ひとりの個性に合わせて仕事が分担されているので、自分らしく仕事に取り組めています。「ばんない」の接客が温もりで溢れているのはそのためでしょう。

プロ顔負けの真剣な眼差し

「ばんない」で働く人たちは誰もが個性的。いろんな特性を持つ人が集まることは楽しいことですが、一つのことを一緒に達成する上ではマイナスに働くこともあるでしょう。いつも変わらぬ環境や慣れ親しんだ繰り返しに安心する人もいれば、変化に柔軟に対応できる人もいます。テキパキ効率よく動くのが得意な人もいれば、ゆっくりていねいに集中して取り組むのが好きな人もいます。だからこそ、職員の支援観や関わり方が大切になってきます。

「みんな違っていい」、「ここでは比べることをしない」。職員の間でこうした原則が共有されています。利用者さんから、「ここでは共同作業ができて楽しい」という言葉が語られるのはそのためです。

食欲をそそる香りで満ちた店内

個人個人のその日の体調や気分でチーム編成を変えるなど、職員は一人ひとりの様子を観察し、利用者が気持ちよく働けるように心を配っています。職員の一人、照屋有紗さんは次のように語ってくれました。

支援する人される人の垣根を超えて

「ばんない」では、利用者それぞれの個性に合わせて就労支援を行なっています。「個性に応じた支援」というワードは福祉の世界でしばしば耳にしますが、ここでは、利用者の感情の動きや、パターン化された行動に職員がチューニングして、自然な形で波長を合わせています。それが個性に応じた支援のベースになるのです。

言葉以外の方法で心と心を通わせ、つながりを生み出すコミュニケーションがまず最初にあるのです。その上で、利用者のその時々の心的状態や得手不得手に応じて職員は日々対応しています。
 

「ばんない」で働く利用者さんは、糸満市内の畑や養鶏場に出かけるのを心待ちにしています。眩しい太陽を浴びて育った野菜や、健康な鶏が産んだ卵。利用者が収穫した食材は、「ばんない」で提供されています。

農業と福祉の掛け合わせは最近各地に広まっています。それは、大地や自然や生きものとのふれあいが、人の五感を刺激して、幸福度を高めるからだと言われています。畑に出かけ、ゆんたくしながら身体を動かすことで、利用者の内面のエネルギーがどんどんみなぎっていくのです。

トゥムヌイ福祉会で日々行われている福祉の実践は、利用者の個性をさらに輝かせる支援です。それはすなわち、一人ひとりの幸福を最大化する営みです。
 

太陽のもとでおしゃべりしながら農作業