みんなが幸せになる紅茶づくり《金川製茶》

みんなが幸せになる紅茶づくり《金川製茶》

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歴史文化

放送日:2025.04.14 ~2025.04.18

初回投稿日:2025.04.23
 最終更新日:2025.04.23

最終更新日:2025.04.23

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本島北部、名護市の旧羽地村の山中に、新緑が美しい「金川製茶」の茶畑が広がっています。

金川製茶は1956年頃に創業。初代が台湾からチャノキの種を持ち込み、緑茶を中心に、野菜や果樹の栽培を始めました。

三代目の比嘉猛さんは、緑茶を専門に栽培していましたが、お茶の需要が減少していることを背景に、紅茶品種「べにふうき」の研究栽培を依頼されたことをきっかけに、紅茶作りをスタートさせました。

2017年に、四代目の竜一さんが金川製茶を継ぎます。竜一さんが紅茶を好きだったこともあり、紅茶専門の農家に転向し、沖縄の風土を生かした独自の紅茶を目指します。

収穫前の美しい茶畑
収穫前の美しい茶畑

四代目の比嘉竜一さん
四代目の比嘉竜一さん

三代目の比嘉猛さん
三代目の比嘉猛さん

沖縄生まれのおいしい紅茶を作りたい

紅茶や緑茶、ウーロン茶など、お茶はすべてチャノキから作られますが、製造工程と発酵の度合いによって違う製品になります。

金川製茶の紅茶は「KANIGAWA」の1種類。使用しているチャノキの品種は4種類で、紅茶専用品種(べにふうき、べにほまれ)と、緑茶用品種(やぶきた、ゆたかみどり)です。

現在、畑の6割以上を占めるべにふうきは、紅茶用品種と緑茶用品種を掛け合わせたハイブリッドで、紅茶専用として優れた特性を持ち、香りや色の変化が顕著。メチル化カテキンを含み、花粉症対策も期待されています。

また、やぶきたとゆたかみどりは、紅茶用品種にはない独特の味の良さがあり、ブレンド時に紅茶用品種の香りと組み合わせることで、バランスの良い紅茶を生み出します。

竜一さんは、よりおいしい紅茶を目指し、品種改良にも取り組んでいます。

「チャノキは通常、挿木で増やしますが、種ができたら新しい品種になるんです。べにふうきが自然に受粉して、落ちた種から芽生えた実生を毎年集め、3年ぐらい経ってようやく味見ができるようになり、良さそうなものだけを残して5年目。いつか正真正銘の沖縄産のチャノキを作りたいんです」

まだ時間はかかりますが、竜一さんの夢は広がります。

芽吹いた実生は、沖縄生まれのべにふうき実生です
芽吹いた実生は、沖縄生まれのべにふうき実生です

収穫は一芯二葉の新芽だけ

収穫は主に春と夏、手摘み、機械摘みの両方で行います。

手摘みは、一芯二葉(まだ葉が開いていない芽”芯”から下2枚目までの葉)を丁寧に摘みます。香りがよく、より品質の高い紅茶を作ることができます。

収穫した15gの新芽は、乾燥後には約3gの茶葉になり、紅茶1杯分に相当します。

茶畑は2年に一度、木の高さを50~60cmに剪定し、葉をなくしますが、2ヶ月後には新芽が芽吹きます。

きちんと管理すれば1000年以上生きるチャノキもあるそうです。

手摘みするのは一芯二葉の部分
手摘みするのは一芯二葉の部分

紅茶のおいしさを引き出すためには

「収穫した新芽は工場に持ち帰り、ひと晩から20時間前後萎れさせて、水分を抜き、紅茶特有の香りを引き出します。

その後、手または機械で葉を揉み、細胞を壊して酸化発酵を促します。発酵の過程で、葉の色が黄色、オレンジ、赤へと変化します。

色が違うということは、味も風味も異なるので、自分が作りたい、飲みたい、飲ませたいところで発酵を止め、乾燥させて保存性を高めて完成です。

紅茶作りはとてもシンプルです」と竜一さん。

 

金川製茶のKANIGAWAは、その年に収穫した新芽や茶葉の状態によって、製造工程やブレンドの研究を重ね、毎年味を変えています。

KANIGAWAは、日本一の紅茶の祭典「国産紅茶グランプリ」で2017年から2019年まで3年連続でグランプリに輝きました。

手摘みした一芯二葉の新芽たち
手摘みした一芯二葉の新芽たち

新芽を萎れさせた後、優しく手揉みします
新芽を萎れさせた後、優しく手揉みします

手揉みが終わった新芽。これから発酵させます
手揉みが終わった新芽。これから発酵させます

発酵器の中で2〜3時間ほど発酵させます
発酵器の中で2〜3時間ほど発酵させます

発酵と乾燥を終えたら紅茶の出来上がり
発酵と乾燥を終えたら紅茶の出来上がり

ティーポットと茶葉
紅茶をおいしく淹れるポイントは、茶葉と水の量、抽出時間を測ること

紅茶の種類ごとの違い
右から左へ発酵が進むと色が濃くなります。シンプルな製造工程ながら、味わいや香りなど、紅茶の表現は豊か

料理人たちと作り上げていくこれからの金川製茶

現在、竜一さんは「食に合う紅茶」を目指したいと話します。

そのきっかけは、「生産者と料理人ともに、おいしい幸せを作り上げよう」という趣旨のプロジェクトに参加したことでした。

今の時代に求められている飲み物を紅茶で作れないか? 紅茶はもっと自由な飲み物であってもいいのではないか? など、料理人たちの声が刺激となりました。

毎年のKANIGAWAの味を決めるにあたっては、飲食店の料理に合うことを念頭におきながら、味と香りのバランスを追求します。

また、お付き合いのある飲食店では、自らも料理を味わい、店の好みや客層を把握しながらKANIGAWAの淹れ方を提案します。

例えば、日本料理には繊細な味、洋食にはパンチのある味というように、抽出時間や量を調整することで、和食、洋食、チャイ、フレーバーティーなど、多様なシーンに対応できるのがKANIGAWAです。

生姜とKANIGAWAでチャイ作り
今帰仁村のブラジル料理店「リマ タピオカサンド」のリマさんが育てる生姜とKANIGAWAでチャイを作りました

料理人との対話
料理人との対話は、竜一さんにとって楽しい時間

KANIGAWAのパッケージ
KANIGAWAのパッケージには、食事やお菓子に合う淹れ方を記載しています
 

竜一さんは言います。

「紅茶っておいしいですね、と言ってもらえたらうれしいし、おいしい紅茶が飲んだ人の幸せにつながるなら、これからもそんな紅茶を作り続けたいです」
 

金川製茶

https://www.instagram.com/kanigawa_seicha_1956/

沖縄CLIP編集部

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