琉球王国時代に没入体験―本格“琉装”でめぐる首里城公園のおすすめスポット5選
琉球王国時代に没入体験―本格“琉装”でめぐる首里城公園のおすすめスポット5選
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歴史文化
初回投稿日:2024.12.20
最終更新日:2024.12.19
最終更新日:2024.12.19
琉球王国は、1429年から1879年までの450年間にわたり琉球諸島を中心に存在した王国です。中でも首里城はその政治・外交・文化の中心を司どっていた場所。“琉装”を身にまとい首里城散策をしてみませんか? 琉球王国時代にタイムスリップしたような気分を味わえるはずです。
目次
琉装を着て特別なひと時を
“琉装”とは琉球の装いを意味し、琉球王国時代に王族から庶民までさまざまな身分や階級の人たちが身につけていた伝統的な衣装のこと。那覇市内にある「沖縄琉装苑」では、当時の装いを再現した琉装をレンタルしており、気軽に体験したり街歩きを楽しむことができます。
琉装で身につけるのは、王族・士族が礼服としていた胴衣(どぅじん)と裙子(かかん)、上から重ねる表着(おもてぎ)の田無(たなし)。もし衣装選びに悩んだら、沖縄琉装苑オーナーの石川真理さんに相談を。自他ともに認める琉装オタクの石川さんが、衣装に込められた意味や背景を丁寧に説明してくれるので、琉球の文化を学びながら衣装を決めることができます。
衣装が決まったら、没入体験のスタート。石川さんの案内で首里城公園のおすすめスポット巡りに出発です。
1. 園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)
まず、首里城に入るには、首里城の西側に位置する中山門(ちゅうざんもん)の跡地から守礼門(しゅれいもん)を通っていくのが石川さんのおすすめ。これは、中国からの視察団や薩摩の人たちが琉球王国を訪れた時に通る正式なルート。首里城の中で生活をしている王族や士族になりきって、世界遺産にも登録されている園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)へ向かいましょう。
1つ目のスポット園比屋武御嶽石門は、1519年に築かれた石の門。形は門ですが、人が通るためのものではなく、琉球国王が各地に巡礼に行く際に道中の安全祈願をした拝所です。他にも最高神女(のろ)・聞得大君(きこえおおきみ)の即位式をおこなう際も最初にここを参拝したと伝えられており、門の奥には琉球の信仰における聖域「御嶽(うたき)」と呼ばれる森が広がっています。
他にも、平成12年に世界遺産へ登録された際の門修復のエピソードや、琉球王国に存在した最高神女(のろ)をはじめとした3つの組織など、琉球王国時代への入口にぴったりな説明を聞くことができます。
園比屋武御嶽石門は、観光客もサラッと通り過ぎてしまうことが多い場所。だけど「相当な霊域のひとつなんですよ」と、石川さんのおすすめスポットです。
2. 瑞泉門(ずいせんもん)と龍樋(りゅうひ)
2つ目のスポット、1470年頃に築かれた瑞泉門は、門の手前にある「龍樋」と呼ばれる豊富な湧水にちなんで「立派な、めでたい泉」という意味を持つ“瑞泉”の名が付けられました。当時、首里から湧き出る水は泡盛製造の原料や、来客時には接待用の水として使うほど大事にされ、重宝されていたのだそう。
湧き出た水は、今でも首里城の北西にある外苑の池「龍潭(りゅうたん)」を通って沖縄の各地に流れています。2019年10月31日の首里城火災の際には、首里城から少し離れた場所にある湧水からも、水に染み込んだ灰の匂いが感じられたというほど町を巡っているのだとか。
瑞泉門とその手前にある龍樋は、首里の人々の生活を潤し繁栄させた、大事なポイントのひとつです。ぜひ足を止めて、その水に触れてみてくださいね。
3. 首里森御嶽(すいむいうたき)
瑞泉門をくぐったあとは、水時計を意味する「漏刻門(ろうこくもん)」と日時計、万国の架け橋を意味する「万国津梁(ばんこくしんりょう)の鐘」を通って「首里森御嶽(すいむいうたき)」へ。首里森御嶽は、園比屋武御嶽と同様に首里城にある10ヶ所の拝所「十嶽(とたけ)」のひとつ。首里森とは首里城の別称で、十嶽の中で格式の高い拝所と言われています。
さて、琉球王国時代、全ての沖縄の女性には“セジ”という霊力を扱う力が備わっていると考えられていました。それは祈りの文化。例えば、沖縄の言葉で「手ぬぐい」という意味の「ティーサージ」は、航海に出る男性の旅の安全を祈って、その妻や姉妹から贈るという風習のひとつ。女性がティーサージにセジを付与し、それを男性が持つことでお守りになるとされていたのです。
今よりも霊力が身近な存在だった琉球王国時代。そして首里城の中にある拝所は、現在進行形で祈りの場です。そのため、タイミングによっては実際に女性が拝みを捧げていることもあります。首里森御嶽は厳かな雰囲気の漂う場所であり、首里城での女性の暮らしが垣間見れる場所でもあるのです。
4. 京の内(きょうのうち)
首里城の南西部には青々とした森が広がり、石垣から一歩中に足を踏み入れると凛とした空気が漂います。ここが4つ目のスポット「京の内」。「京」の字には、セジと同様に霊力の意味があり、京の内は「霊力のある聖域」という意味になります。
特に京の内は十嶽のうちの4つがあるため、古くから祭祀が執り行われてきた首里城内最大の祈りの場。また、琉球王国が誕生する前の遺構も見つかっているため、首里城発祥の地とも言われているのだそう。
さぁ、入ってすぐの御嶽でご挨拶を済ませたら、森の奥へ。京の内は、石川さんにとっても思い入れの強い場所。詳細はぜひ直接聞いてほしいのですが、首里城火災の後に京の内を訪れた際に「祈りの文化」をより強く感じるとある体験をしたそうです。ぜひ草木の揺れる音を聞きながら当時の人たちの暮らしを想像してみてください。
5. 首里城茶屋
さて、石川さんおすすめの4つのスポットを周ったら、最後は首里城茶室で伝統的な琉球菓子とさんぴん茶を味わえる「呈茶セット」をいただきましょう。
この日の琉球菓子は、花ぼうる、くんぺん、ちんすこう、冬瓜漬(とうがんづけ)の4品。季節によって変わるお菓子を、香り高いさんぴん茶と一緒にいただくことができます。
ここまで来れば、琉装姿にも慣れてきたのではないでしょうか。ゆっくりとお茶をいただきながら、今日1日のふり返りや、聞き足りなかったこと、琉球舞踊の歴史、琉装オタク石川さんの琉装についての積もる話についても聞いてみましょう。
今ではすっかり見かけることのなくなってしまった琉装ですが、石川さんが子供の頃は、近所に琉装姿のおばあさんがいたのだそう。現在の状況に危機感を感じ、琉装の魅力を伝える活動をしています。「琉球王国独自の琉装の文化を次世代へ残したい」そんな石川さんの強い想いも聞くことができます。
琉装をまとい、特別な思い出を
現在は観光地として有名な首里城ですが、数百年前まで王族や士族の人たちが実際に暮らしていたと考えると、なかなか感慨深いもの。旅の特別な思い出のひとつとして、琉装を身にまとい、琉球王国時代の人々の暮らしへの没入体験をお楽しみください。
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